サルヴァドール・ダリ著 私の50の秘伝

ブログを始めて未だたかだか一週間なのであるが、ひとつ困ったことがある。それは、夜、本を読む時間が減ってしまったことだ。私が手に取る、まさに玉石混淆の書物 --- 比較的新しいミステリーから、音楽家の伝記、古本屋で100円で買った旧かな使いの色あせた文学書、ちょっと難しい思想書から、はたまた古代史や陰謀論を扱った奇天烈なトンデモ本、犯罪の実録本など、頭の中どうなっているのと言われそうな書物のオンパレードである。せっかくブログをやるなら、こういったものも紹介しておきたい。ということで、これが書物の第一弾。
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2冊並べましたが、シュールな感じが出ましたか? 深い意味はなくて、たまたま 2回クリックしてしまったからです (笑)。でも、それこそがまさにシュール。この本からヒントを得て、勝手に手が動いて 2回クリックしてしまったのだろう。じろじろ見比べて間違い探しをせずともよろしい。全く同じ画像である。

その奇行で知られるシュールレアリスムの画家サルヴァドール・ダリは、恐らくはピカソ以降最も一般的にも名の知れた画家であろう。誰もが見たことのある夢のようなイメージ。解釈できそうでできない、群がる蟻や溶ける時計や燃えるキリン。はたまた、風景に見せかけた顔というトロンプルイユ。時に宗教的なイメージを使い、夫人であるガラの肖像を繰り返し描く。過剰な自信家で皮肉屋で、商売上手でへそ曲がり。そんなダリが、1947年、43歳のときに執筆したのがこの本だ。祖国の内乱、世界大戦を経たこの時期、ダリは米国に住んでいて、もともとフランス語で書かれたこの本は、米国で英語で出版されることになる。

内容は、ある意味で大変ダリらしい。すなわち、若い画家に向けていかに絵画修業すべきかということを説いているのだが、あちらこちらに誇張や断定や逆説が見られ、誠にデタラメな内容かと思いきや、実はかなりプラクティカルな修練法や、色彩の使用法についての詳細な記述も含まれている。もちろん、私は画家ではないから、その内容の技術的評価はしかねる。ただ、それらの記述を通して、実はダリは極めて真摯な人なのであるということが見えてくるのだ。あちこちに手書きメモから起こした挿し絵が入っている。このようなイメージを辿って行くのも楽しい。見ているうちに、何やらダリの不思議な世界に引き込まれて行ってしまう。
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ん? 気のせいか。先に進もう。

ダリの「意外な真面目さ」を思い知るのは、本書28ページに掲載されている 10人の画家と自分との比較である。それぞれの画家につき、技術、インスピレーション、色彩感、素描力、天才性、構成力、独創性、神秘性、真実性という 9項目について、20点満点で点数をつけている。これを見ると、ダ・ヴィンチ、ラファエロ、ヴェラスケスとフェルメールには相当心酔しており、自分の評価は概して彼らより下。一方、先輩ピカソに対しては、敬意を表すべき点と、自分の方が勝っている点を明確に意識していることが分かる。例えば、天才性はピカソが 20点満点に対して、自身は 19点。また、神秘性はピカソが 2点であるのに対し、自身はやはり 19点など。また、フェルメールはほとんどすべて 20点満点だが、唯一、独創性だけが 19と、よく考えられている。尚、マネは真実性だけは 14点、それ以外は 0点から 6点だ。モンドリアンに至っては、ほとんど 0点 (笑)、最高が独創性の 3.5点である。極端な評価ではあるものの、なんとなく分かる気がする。

この本は、美術を志す純朴な学生が読んで本当に有益か否かは保証の限りではないが (笑)、多少美術に関心があり、悔しいけれどダリのことが気になるという人には、読んでみて損はないものだと思う。

by yokohama7474 | 2015-06-11 00:09 | 書物 | Comments(0)