由良三郎著 葬送行進曲殺人事件

古本屋で購入した、1985年 (昭和 60年) 発表のミステリーの文庫版。
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ちょうど、「イニシエーションラブ」がノスタルジーを持って 80年代を舞台にしていたところ、こちらは正真正銘、その 80年代の作品である。登場人物はもちろん秘密の電話をかけに公衆電話に走るし、撮影した写真は現像している。もちろん私自身、その頃はまだ洟を垂らしたガキだったとしらばくれる意図はなく、この作品の作者が文壇に登場した際、東大医学部教授がミステリー作家に華麗なる転身、と話題になっていたのをよく覚えている。処女作の「運命交響曲殺人事件」が、文字通りベートーヴェンのシンフォニーを題材にしていたはずで、当時少し興味を持ったものだ。調べてみるとこの作者はその後 15年の間に 30編近いミステリーを執筆したらしいが、これまでに読む機会がなく、今回たまたまこの作品に巡り合ったというわけだ。

これを読む現在の人々が気になるのは恐らく、公衆電話やフィルム式のカメラという今はない小道具ではなく、登場する人物たちの描き方そのものではないだろうか。いやなんとも会話の雰囲気が古臭く、昭和のテレビドラマを見ているような気がする。探偵役の小野田亮平のキャラクターにはそれなりのとぼけた味わいがあり、ストーリーも最後に向けたドンデン返しがあって、それなりに楽しめるとも言えるが、いかんせん、終始ドキドキハラハラとはいかないし、特にヒロインの性格づけには、オヤジから見た「いいお嬢さん」という色合いが濃厚で、読んでいて時折天を見上げたくなるような瞬間が多く訪れる (笑)。また、タイトルの葬送行進曲は内容に関係なく、ハテナマークを禁じ得ない。

ともあれ、80年代を追憶する機会にはなりました。


by yokohama7474 | 2015-06-21 14:37 | 書物 | Comments(0)
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