小林研一郎指揮 日本フィル (ピアノ : 田部京子) 2015年 6月28日 サントリーホール

コバケンが、桂冠名誉指揮者を務める日フィルを指揮した演奏会。コバケン・ワールドと名付けられたシリーズの 10回目だ。
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曲目は、上記にもある通り、

モーツァルト : ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488
マーラー : 交響曲第 5番嬰ハ短調

というもの。因みに上記のポスターは会場の外に飾られていたものを撮影したのだが、私の前にも後にも、やはりこのポスターを撮影している人がいた。そんなに皆ブログでこの演奏会を紹介しているのだろうか ?!

今日のコンサートもチケットは完売。満員御礼の大盛況だ。コバケン人気は大したもの。ここで思い出すのは、彼がもともと縁の深い日フィルの音楽監督に就任してたったの 3年後の 2007年、「自分が音楽監督になっても集客が充分でない」という理由で辞任したときのことだ。当時から彼の人気が高かったことは間違いないが、オーケストラの運営は、一人の音楽監督だけでなんとかなるものではないのだろう。このオケ自体は、その後名匠アレクサンドル・ラザレフを首席指揮者に迎えて、大変充実しているわけであるが、今日の演奏を聴いていると、この指揮者とオケのコンビは、堅い信頼で結ばれているように思う。

1曲目のモーツァルトは、ニュアンス抜群の演奏。田部京子のピアノは、若干繊細に過ぎるのではないかと思われたが、美しい響きを持った自在な演奏であった。私にとっては、吉松隆の「プレイアデス舞曲」の 2枚が一時期の愛聴盤であり、いつまで経ってもお嬢さんのような外見で損をしている、素晴らしいピアニストだ。この曲は、今年のゴールデン・ウィーク中にチョン・ミョンフムが東京フィルを弾き振りした演奏を軽井沢で聴いたが、第 1楽章の真ん中あたりでピアノが微妙にオケから遅れ、チョンが "That's no good. Sorry." と言って演奏を中断し、少し戻って再開したのを見て驚いた。もとより超絶技巧の曲ではないが、闊達な指の動きが必要とされる難曲なのであろう。名演に拍手。

メインのマーラー 5番は、コバケンにしては最も前衛的な作品か (笑)。いえいえ、もちろん彼が日本の現代音楽を数多く指揮していることも知っていれば、ハンガリーでも現代の作品を指揮していたことも知った上での悪ふざけです。今日の演奏は、一言でいえば大変な熱演であった。うーん、しかし、東京は多分世界でも最もマーラー演奏が盛んな街。改めて考えれば、CD になって大絶賛だったインバルと都響のマーラーシリーズを体験した身としては、その水準が耳にこびりついてしまっている。そこでの都響の演奏は、なんというか、底光りのする金属質な音が鳴っていて、マーラーの本質を仮借ないまでに抉り出していた。その演奏と比べると、今日の演奏は、大音響が渦巻くときの木管の響きだとか、ティンパニに轟き方に少し不満を覚えた。前半のモーツァルトでは各楽器が本当に美しく呼び交わしていたのに、マーラーの複雑なスコアの再現では、残念ながらそこまでは至らなかったように思う。

ただ、充実感は大変大きなものがあった。例によって指揮者が終演後に聴衆に語りかけたが、「今日は全力投球だったのでアンコールはなし」という意味の発言もあり、満場の聴衆のほとんどは大きな満足を得たコンサートであっただろう。

ま、アンコールがなくてもよいのである。なぜならば、会場で「コバケンのアンコール・ピース」なる CD を購入し、直筆サインをもらったからだ。これでお得意の「ダニー・ボーイ」でも聴いて、個人的にアンコールを楽しむとしようか。
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by yokohama7474 | 2015-06-28 23:10 | 音楽 (Live) | Comments(0)