2015年 07月 19日
ヴァレリー・ポリャンスキー指揮 ロシア国立響 2015年 7月18日 東京芸術劇場
交響曲第 4番ヘ短調作品36
交響曲第 5番ホ短調作品64
交響曲第 6番ロ短調作品74「悲愴」
である。いずれも演奏時間 45分から 50分に至る大交響曲で、普通ならコンサートのメインに置かれる大人気曲だ。なので、今回のコンサートは、いわばメインコースを 3皿並べてタップリ楽しもうというものだ。演奏する側も聴く方も、要求される技術も体力も精神力も、尋常なものではない。しかも、指揮者もオーケストラも、本場ロシアから招聘。一体誰のアイデアだか知らないが、メチャクチャというか大サービスというか、とにかく、日本初の試みである。今回、池袋での演奏に出掛けてみたのだが、そのときに目にしたポスターが以下の通りだ。
事前に、「あれってゲテモノでしょう」という指摘があり、それはそれで一理ある考えながら、私には期待があった。なぜなら、ロシア国立交響楽団である。あの爆演巨匠、エフゲニ・スヴェトラーノフが鍛え上げたオケだ。このポリャンスキーなる指揮者は知らないが、チラシには、「ムラヴィンスキー、スヴェトラーノフ以来の爆演型指揮者、ヴァレリー・ポリャンスキー初登場!」とある。うーん、超絶の天才ムラヴィンスキーを爆演型と定義してしまうのには抵抗あるが、なにせ、上記のポスターのような風貌である。いかにもロシア的パワーに満ちた力演が期待できそうだ。
実際に会場でプログラムを読んで知ったことには、このオケは、スヴェトラーノフが音楽監督を務めていたオケとは別物で、どういう配慮のなさか、同じ日本語名がつけられた別物と分かった。その正体は、ソヴィエト国立文化省交響楽団だ。あの名匠ゲンナジ・ロジェストヴェンスキーのために結成された、ソ連末期には最高水準と謳われた、あのオケであった。日本にもショスタコーヴィチやブルックナーの録音が紹介されていた。ということは、誤解はあったというものの、やはり一流である。ソ連崩壊後の 25年、ロシアの音楽界の状況を外部から知るのは困難で、実際に来日での実演や録音で接することがないと、そのレヴェルは分からない。以前このブログでも、この 1ヶ月半ほどの間に主要なロシアの演奏家がことごとく来日しているとご紹介したが (ご紹介が漏れているものもあって、例えばつい先日まで日本にいた、ミハイル・プレトニョフ率いるロシア・ナショナル・オーケストラも無視できない存在だ)、その中にこの一流 (であるべき) オケが、まさかゲテモノまがいの爆演を売り物に殴り込みをかけていようとは。全く東京という街は油断できないのだ。
このポリャンスキーという指揮者、今回が初来日のようだが、1949年生まれというから、今年 66歳。うーん、確かに見るからに爆演指揮者という感じですな。
そのように考えるには理由がある。今回の日本ツアー、7月 9日から 27日までの 19日間、全国で 14回のコンサートが組まれている。これだけでもハードであるのに、このチャイコスフキーの 3曲を演奏するのは、実に以下の 10回!!
7/12 横浜
7/13 武蔵野
7/15 盛岡
7/17 新潟
7/18 東京
7/19 名古屋
7/20 大阪
7/24 福岡
7/26 鳥取
7/27 金沢
うーん、大丈夫だろうか。今回の憔悴ぶりが少し気がかりだ。
会場では、HMV の出店がポリャンスキーの CD が販売していて、このチャイコフスキーの 3大交響曲の CD は会場限定とのことだったので、購入した。