延原 武春指揮 テレマン室内オーケストラ (フォルテピアノ : 高田 泰治) 2015年 7月21日 大阪市中央公会堂 中会議室

テレマン室内オーケストラは、指揮者 延原 武春 (のぶはら たけはる) によって、実に 1963年 (半世紀以上前だ!!) に大阪で設立された。今日では古楽器専門オケとして著名な存在だ。実際、一般に知られている日本の古楽オケは、バッハ・コレギウム・ジャパンと、このテレマン室内オーケストラくらいではないか。両方とも関西の組織であることには、何か意味があるのだろうか。

指揮者の延原 武春は、1943年大阪生まれの 72歳。以前大阪フィルを指揮した演奏会を聴いたことがあり、そのコテコテの難波のオッサンぶりと、演奏する音楽のペダンティシズムのギャップがすごかったので、いつか手兵であるテレマンとの演奏を聴きたいと思っていた。ましてや、その演奏を大阪倶楽部で行っているのを NHK BS で見て、思いは募るばかりであった。その間、武原とテレマンのベートーヴェン交響曲全曲の CD を購入したし、中野順哉著の「小説・延原武春」も読んだ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%98%AA%E5%80%B6%E6%A5%BD%E9%83%A8

延原のことをコテコテの難波のオッサンと書いたが、よく見ると財界人のようにも見える。伊藤忠商事の岡藤社長 (やはりコテコテの難波のオッサンらしい) と比べてみよう。上がマエストロ延原。下が岡藤社長。なんとそっくりではないか。
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さて、今回の演奏会は、大阪を代表するモダニズム建築として重要文化財に指定されている、中之島中央公会堂だ。株式仲買人であった岩本 栄之助の寄付をもとに、岡田 信一郎の案を、明治時代を代表する建築家、辰野金吾が実質的に率いて 1918年に完成した。その頃の大阪は、未だ東京を寄せ付けない日本最大の経済規模を誇る都市であったはずだ。
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1999年から 2002年の間に保存・再生工事がなされたとのことで、建物内部には資料館があるのみならず、各所に当時の建築技法を紹介する説明板が設置されている。最も興味深かったのは、土台となっている杭であった。ちゃんと詳しい説明もある。へー。まるでヴェネツィアかサンクトペテルブルクだ。大正モダニズムの技術恐るべし。
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さて、寄り道も楽しいものであるが、今回の演奏会について触れよう。曲目は以下の通り。

モーツァルト : 交響曲第 29番イ長調 K.201/186a
ハイドン : ピアノ協奏曲ニ長調
ベートーヴェン : 交響曲第 3番変ロ長調作品55 「英雄」

会場となった中会議室は、レトロ感覚満載だ。
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まるでヨーロッパの宮殿のような優雅な雰囲気。実際、音響効果も素晴らしく、なかなか味わうことのできない雰囲気だ。

初めて生で聴くテレマンは、コンサートミストレスの浅井 咲乃率いる弦楽器がニュアンス満点。管楽器は時々苦労が見られたが、元来が音程の取りにくい古楽器で、しかも湿気の多い時期ということで、むしろミスも微笑ましいと言ってもよいだろう。全体として、どの曲も大変勢いのある演奏であった。
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メインのエロイカは、ベートーヴェンのメトロノーム記号に忠実に則った演奏とのことで、モダンオケではなかなか難しい快速テンポであったが、なんとも胸のすく快演であった。第 1楽章コーダ手前の、例のトランペット行方不明の箇所 (オーケストラ全体が盛り上がって、本来ならトランペットが高々と英雄のテーマを奏でるはずのところ、後半突然トランペットが抜けてしまい、木管のリズムを刻む音が妙に耳につく箇所。昔の指揮者は構わず英雄のテーマを最後まで吹かせたが、原典ばやりの昨今、それをやれば指揮者のインテリジェンスが疑われるようなことになっている) は、当然オリジナル通り、行方不明の演奏であったが、近代オーケストラの、音量が大きく輝かしいトランペットではなく、このように当時を彷彿とさせる楽器での演奏だと、この「行方不明」はさほど目立つこともない。ベートーヴェンの真意が、当時の楽器の技術的限界による妥協か、それとも何かほかにあるのか分からぬが、当時の楽器であれば、それなりに音楽が流れて行く箇所であることを確認できた。

ところで、この指揮者とこのオケは、東京公演はあまりないものと思うが、関西では大変活発な活動を行っていることを知り、驚いた。会場で配布されていたチラシで分かる範囲での延原の今後の予定は以下の通り。

7/25 (土) 池田市 バッハ : コーヒー・カンタータ
8/7 (金) 大阪フェスティバルホール スメタナ : わが祖国
8/23 (日) ザ・シンフォニーホール メンデルスゾーン : オラトリオ「聖パウロ」
8/29 (土) 川西市 ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲「ムガール大帝」ほか
8/30 (日) 羽曳野市 音楽絵巻 羽曳野戦記中、バロック音楽の演奏
10/10 (土) いずみホール バッハ : マタイ受難曲
12/19 (土) ザ・シンフォニーホール 第九及びバロック名品集

実に多忙である。大阪の方は、このうちのどれかでもお聴きになってはいかがだろうか。よろしおまっせ。

by yokohama7474 | 2015-07-26 01:55 | 音楽 (Live) | Comments(0)