兵士の物語 (ウィル・タケット振付、アダム・クーパー主演) 2015年 7月26日 東京芸術劇場プレイハウス

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「兵士の物語」は言うまでもなく、ストラヴィンスキー作曲による 1時間程度の曲。語り手がいて、小編成 (7名) のオーケストラがいて、登場人物たちは音楽に合わせて踊るのだ。「語られ、演じられ、踊られる」と作曲者は副題をつけた。このような曲であるがゆえに、通常のオーケストラコンサートで取り上げられるレパートリーではなく、小劇場での役者やダンサーによる公演が、日本でも様々に行われて来た。今回、スターダンサー、アダム・クーパー (奇抜な演出家マシュー・ボーンが「白鳥の湖」に起用して大人気となった) の主演で、以前英国ロイヤル・オペラで上演されたプロダクションの、日本独自の再演として今回上演された。主役たちは全員、ロイヤル・バレエ出身者だ。

私は古典的なバレエにはとんと興味がなく、多少なりともコンテンポラリーな要素があるパフォーマンスのみ興味の対象としているので、この公演に足を運んでみた。2階席のチケットを購入していたが、演出の都合とのことで 2階は閉鎖され、1階の席に振り分けられた。中には客席ではなくステージ上に設けられた席を振り当てられた観客たちもいた。薄暗い劇場風のセットをしつらえた舞台上にも狭めの丸テーブルがいくつか置かれていて、その雰囲気に、昔ニューヨークで見たミュージカル「キャバレー」を少し思い出した。

さて、内容であるが、さすがにそれぞれのダンサーが無駄のない動きで見事な流れを見せる。特にアダム・クーパー。舞台における存在感は抜群だ。
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宣伝文句には、衝撃のラストと謳っているが、まあ原作通り。ただ、確かにその表現は若干刺激的だ。ここに出てくる悪魔は、西洋においてはおなじみの、人の希望に付け込んで魂を奪って行く邪悪な存在であって、人のよい兵士ヨセフは、案の定というべきか、悪魔にとらえられるということだ。とはいえ、それほど後味が悪いということもない。そのひとつの理由は、オケがあまりに小さい編成で、かつ新古典主義に入りつつあった当時の作曲者の洒脱な、あるいはとぼけた雰囲気が横溢しているからだろう。

というわけで、会場はアダム・クーパー人気で大混雑かと思いきや、意外とそうでもなかった。率直なところ、1時間と少しで休憩もなく終わってしまう短い上演にしては、チケットのお値段がいささか高い。そんなわけだろう。会場では、リピータ―割引と称して、別の日の公演を半額で売っていたが、うーん、残念ながら、ストーリーが複雑であるわけでなし、もう 1回観ようという人は限られてしまうのではないか。

優れた舞台芸術といえども、本拠地を離れて大成功続きというわけにはなかなか行くまい。ただその中で、東京で見ることのできる舞台芸術の選択肢は膨大で、そのことにはともあれ深く感謝しよう。金と時間は、かかってしまいますがネ。

by yokohama7474 | 2015-07-28 00:21 | 演劇 | Comments(0)
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