ミッション:インポッシブル / ローグ・ネイション (クリストファー・マッカリー監督 / 原題 : Mission Impossible - Rogue Nation)

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「ミッション・インポッシブル」(今回気づいたのは、邦題では「インポシブル」ではなく、「インポッシブル」と、不可能さが強調されているのだ!!) シリーズの 5作目だが、このシリーズはこれまで欠かさず見ており、しかも、シリーズ物にしては珍しく、どれも大変面白い。主演のトム・クルーズ、前回はデュバイの超高層ビルに張り付くシーンをスタントを使わずに自ら演じたというが、今回はこのポスターの通り、張り付いたのは飛行機だ。おいおい、これ、CG じゃないの? 違うんです。本当に飛行機に張り付いて (多分、さすがに手でつかまっているだけではないだろうが)、5,000 フィートの高さ (というと、1,500m くらい) まで上昇したという。しかも、それを 8テイク取ったというから恐れ入る。ちょっと変な人だという説もあるが、こんなことをやってのけてしまう役者魂には、誰も文句がつけられまい。彼は 1962年生まれだから、既に 53歳。ここまで来たら、いつまで変わらずにいられるかという記録にチャレンジするくらい、この路線で突っ走って欲しい。

さて、この映画のすごい点は、既に予告編で公開されていたこのシーンを、大胆にも冒頭に持ってきたことだ。そうすると観客は、「あれ、もう出たよこれ。じゃあ、クライマックスは一体どうなるわけ???」と思うわけで、相当な自信がないとできないことだろう。いやはや、効果は絶大だ。

その後のシーンで、何やら IMF が要らないとか言っている。なに??? IMF、International Monetary Fund = 国際通貨基金か? それを滅ぼそうなんて、すわ、これは中国の陰謀か?? とあらぬことを考えてしまったが、この IMF は、Impossible Mission Force、主人公イーサン・ハントたちが属する秘密機関のことだ。ただ、このご時世、なんとなく米国の相対的地位の低下が皮肉っぽく描かれたいるのではと思うのは、考えすぎであろうか。この映画、パラマウントの製作だが、映画開始前の製作会社のロゴには、アリババを含む、明らかに中国 (または香港) 系の会社もあり、そのような妄想をかきたてるのである。あ、そういえば、映画の中で、架空の記事とはいえ、「世界銀行破綻の危機」というものもあった。うーむ。

それからの展開は、驚愕のドンデン返しがそれほど沢山用意されているわけでもなく、苛立ったり戸惑ったりせずに見ていられる。唯一、謎の女性、イルサ・ファウストだけが敵だか味方だか分からない。演じるのはレベッカ・ファーガソンという女優。こういうサービスショット (笑) もあるが、どちらかというと逞しいイメージであり、過度な色気を出すシーンはなく、ひたすら任務として肉弾戦を戦っている。魅力炸裂 (例えば昔、「エントラップメント」でキャサリン・ゼタ・ジョーンズが見せたような) というところまでには行かないが、まずまず好感が持てるといったところか。
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この映画、絶対絶命の危機が何度も訪れるが、その状況からの脱却は、意外と大したことはない。目を見合わせて敵を投げ倒し始めるとか (笑)。でも、それが嫌味にならないあたり、アクションの質やカット割りや装置、照明その他の要素の組み合わせがうまく行っているからではないか。私は大変楽しんだ。

このブログとしてどうしても取り上げなくてはならないのは、オペラのシーンだ。これは明らかに実際のウィーン国立歌劇場で撮影している。階段も、劇場の内部も、間違いなくこのオペラハウスのものだ。
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演じられているオペラは、このブログでも時々話題にしている、プッチーニの「トゥーランドット」だ。但し、開始早々、役人が「北京の民よ」と歌うところからしていきなりアレンジされていて、ちょっとずっこける (笑)。原曲の、短い和音が何度か鳴って、木琴がタッカッタ、タカタカタカタカと響くところ (本当はこれがいいんですけどね) に映像を合わせると間延びするという判断だろうか。その後かなり長く劇場内のシーンでずっと鳴っている音楽は、順番はバラバラだし、幕も自由に行き来し、同じシーンの繰り返しもあって、おいおいおいと思うことは事実で、例えば「ゴッドファーザー パート 3」のオペラハウスのシーンでの「カヴァレリア・ルスティカーナ」の使われ方とはちょっと違う。でも、まあそれもよいではないか。映画さえ面白ければ。

ほかのロケ地として、ラスト近くのオークション会場になっている、ブレナム宮殿を挙げておこう。ロンドンからさほど遠からぬ世界遺産で、宰相チャーチルが生まれた場所としても知られる。大詰めに向けた雰囲気作りには、なかなか適した場所を選んだと思う。こういうところでフォーマルな会が開かれ、主人公が変装して入り込むなんて、なんとオーソドックス!
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そもそも冷戦が終結して、スパイ物のリアリティがなくなって久しいわけであり、007 シリーズも昔のような単純さよりも、どこか救いがたい暗さをたたえているように思う。このミッション・インポッシブルも、2大勢力の対立という大きな枠がなくなったあとの、秩序なきテロリズムを扱ってはいるものの、基本的には米英が中心となり、その中での裏切りを描いているので、あまり絶望的な感じがしない。最初に書いた中国ネタが正しいかどうか分からないが、いずれにせよそのような新興勢力を克明に描いているわけでない。また、題名の Rouge とは、「ならず者」という意味のようだが、Nation を使うとはどういうことだろうか。調べてみると、米国で公式にも使われている言葉は、Rouge State であるようだ。State と Nation は、日本語にすると同じ「国」ということになるが、私の勝手な邪推では、映画の題名を Rougue State を使ってしまうと、公式声明に出て来る言葉でもあり、最近では Islamic State の連想もあって、シャレにならなくなるからではないか。もしそうなら、その姿勢は、この作品に関しては評価できると思う。これは娯楽映画なのであって、人々の不安を煽るのが目的ではないはずだ。

もうひとつトリビアネタ。このような大規模予算映画のエンドタイトルを追うのはなかなか骨が折れるのだが、今回、音楽は作曲者のジョー・クレーマーが自分で指揮しているようだが、「トゥーランドット」に関しては、なんと、フィリップ・オーギャンの名前があった。もう何年前になるか、東京オペラの森で小澤 征爾が振るはずだった「タンホイザー」を彼が代わりに振って、素晴らしい出来であった。せっかくなので (?)、彼の写真を掲載しておこう。
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このシリーズは、既に次回作製作も発表されているらしい。次はトム・クルーズがどんなインポッッッシブルに挑戦してくれるか、楽しみに待つとしよう。

by yokohama7474 | 2015-09-10 01:32 | 映画 | Comments(0)