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御礼、お詫び、そして今回だけ感傷的なこと

しばらくブログの更新が止まっておりました。10/4 (日) からヨーロッパ出張に行っていたことも一因ですが、記事にするネタはいくつかあるにも関わらず、手つかずになっておりました。更新を楽しみにされている方には、大変申し訳ありませんでした。

その間、まさに私が出張に出たその日に、訪問者数が 3,000 を超えました。ブログ開設以来、最初の 1,000人まで 85日、次の 1,000人まで 24日、そしてさらに次の 1,000人までわずか 14日であったことになります。ご覧頂いて本当にありがとうございます。

さて、このブログは、私の趣味の事柄を徒然に書き綴っているので、あまり感傷的な話題にはそぐわないのですが、今日だけは感傷的に書いてしまいます。お気に召さない方もおられるでしょうから、その場合には飛ばして頂き、また次の記事にご期待下さい。

2015年10月 8日(木)は、わが家の愛犬、ルルの命日となりました。17歳と 8ヶ月の生涯でした。犬としては天寿をまっとうしたと思います。ルルはメスのビーグル。あのスヌーピーの犬種で、とにかくいたずら大好きで手のかかる猟犬です。垂れ耳で暴れん坊で、きかん気で、でも実は人間が大好きで。ビーグルの場合、飼った人でないと分からない愛着があると言います。手がかかるだけにいとおしい、そんな犬種です。

あれは 1998年。家人と二人で、犬でも飼おうということになり、犬を飼うならやんちゃなビーグルがいいよねと言ってペットショップに行ったのですが、売り物になっているビーグルは、どうもイメージにそぐわないおとなしい子ばかり。そんな中、まだ売り物になっていない後ろのガラスのショーケースから、ピョンピョン飛び跳ねる赤ん坊ビーグルが。その元気が気に入って、店の人の「まだ売り物になっていないんで」という言葉を無視して、試しにショーケースから出してもらうと、私の腕にすがりついて、セーターについていたボタンをガリガリかじり始めました。店の人も驚いて、「こんなことを誰にでもするわけじゃないので、相性がいいということですね」とのコメント。これがルルとの出会いでした。

本当は、犬を飼ったらカエサルという名前にしたかった。でもこれはオスの名前だからメスには使えない。幼くして家族になったこの犬の名前をどうしようと考えて、ルルにしたのですが、決して風邪薬の名前ではありません。これは、ベルクのオペラ「ルル」にもなっている、ヴェデキントの小説「地霊」「パンドラの箱」を原作とする無声映画、ゲオルク・ウィルヘルム・パプスト (私も以前ウィーンで墓参りしたことがある) の 1929年の作品、「パンドラの箱」の主演女優、ルイーズ・ブルックスに因むものなのです。
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このボブカットがビーグルの耳そっくり。それから、ウチの姫は、この戯曲や映画やオペラのルルのようなワルい女かも、という意味でした。加えて、唄うように陽気な性格にもぴったりで、いい名前をつけることができたと自画自賛しております。

・・・その最初の出会いから、横浜 → ニューヨーク → ロンドン → 東京と、我々の転居に伴い、18年近い時間をともにすることになったわけです。思い出はそれこそ星の数こそあって、困ったことにその分の涙をそそるのですが、ウチに来てまもない頃 (生後 2ヶ月) の写真がこれ。既にして段ボールなどをバキバキに破壊しています。
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少し成長すると、そのいたずらは限界を知らずにヒートアップ。バキバキにしたソファーの上で、これまたビーチサンダルをバキバキに。この視線の底知れぬいたずらぶりをなんとしよう。
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これは、ニューヨークの家で笑っているルル。若いかといえばさにあらず、既に 8歳でした。でも、住居近くのハドソン川沿いやセントラルパークはもちろん、5番街も闊歩したし、メトロポリタン・オペラの開幕日 (ナタリー・デセイ主演の「ルチア」でした) に、並み居るセレブを尻目に我々の腕の中でライヴビューイングもしました。メッチャメチャ元気で、散歩の途中、いろんなニューヨーカーの人たちから声をかけられました。なので、いわば親善大使のように、国境を越えて実に多くの人に笑いを与えた犬でした。そう考えるとまあ、魔性の女ではなかったわけですかね (笑)。マンションのエレベーターの中で黒人の人と乗り合わせると、きっと物珍しかったのでしょう、好奇心満々で無遠慮にジロジロ見て、ひやひやしたことも。
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それから、まあそれはそれは大変だった検疫手続を経てロンドンへ。この犬種の発祥は英国なので、その肌寒い気候を喜んだことといったら。庭付きの家で充分運動できるようにと郊外の住居(キツツキが鳴き、キツネが走りまわるような) を選び、英国中を旅行しましたよ。北は湖水地方を経てスコットランドとの境のハドリアヌス帝の長城まで。西はコーンウォール半島の先端、その名も Land's End まで。南はブライトン、セヴンシスターズ。それから、エクスターとか、作家ブラム・ストーカーが「吸血鬼ドラキュラ」の構想を練ったウィットビーとか、人間様でもなかなか行けないところにあちこち出かけました。あ、それから、入国すぐにはバッキンガム宮殿近くのホテルに宿泊し、宮殿の真ん前で思いきりオシッコしたりもしました。この写真は、ブロンテ姉妹の故郷、ハワースにて。ヒースクリフを待つキャサリンか。まあでもコイツの激しい気性はそんなところがありました。一生ヒースクリフとは縁がなかったし、本当は甘えん坊だったけど。
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11歳で日本に帰国してからも、元気のなんのって。今住んでいる川沿いの住まいも、広い土手で思う存分散歩できるということが選択の大きな理由のひとつでしたし、実際、近年まで本当にこの環境をエンジョイして、川沿いを延々散歩したものでした。よく我々夫婦は、ルルのテーマとして、ストラヴィンスキーの組曲第 2番の第 4曲、「ギャロップ」がぴったりだと話していました。以下のリンクで聴ける曲の後半に当たります。
https://www.muzikair.com/jp/player/track/83j23p-Stravinsky-Igor-Suites-No2-for-chamber-orchestra-III-Polka-V-Galop

思い出はきりがないので、延々書き連ねる気はなく、自分たちの心にしまっておきます。18年近い生涯で、最後まで歩くこともでき、目も耳も問題なく、人の言葉 (英語だって!!) が分かる犬でいてくれたことに、本当に感謝したいと思います。ここ 2ヶ月くらいでも、こんなに元気でしたよ。まあもちろん、年が年だけに、体は既に限界に来ていたのでしょうが、そんな顔ひとつしないあたり、コイツらしかったと思います。
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この写真は、私がマグリット展に出品されていた作品のうち、画面奥に石が浮いているようにも、山に乗っているようにも見えるものがあったことを記事にした後でたまたま撮られたもの。後ろのバランスボール、浮いてる? 乗ってる?
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それからこれは、私がバイロイトから毎日記事を更新していた頃、その記事をパソコンで熱心に読んでいた様子 (笑)。ちょっと眠そうかな。
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親バカですが、やんちゃとはいえ、本当は実にデキた奴で、死ぬ前日まで散歩もしていたし、寝込むこともなく、ピンコロで逝ってしまいました。もちろん、最期には苦しむことにはなりましたが、私が10月8日(木)の朝に海外出張から帰るその瞬間までがんばって生きていて、昏睡状態に入る前に、一度しっかりと目を開けて私の顔を見ました。こちらはそれで死んでしまうとはその時点ではまだ思っていなかったけど、本人としてはサヨナラを言ったつもりだったのかもしれません。苦しいのに、よく頑張ったね。

ルルは今日、2015年10月10日朝、荼毘に付され、星になりました。今までありがとう。オマエと一緒にいられて、パパとママは本当に幸せだったし、オマエも幸せでいてくれたと思う。これから、当たり前にいるはずの存在がいなくなってしまったことの喪失感を免れることはできないけど、オマエが教えてくれた前向きな生き方を倣って、これからも生きて行くよ。さようなら。

10月 8日に本来なら行くはずだった、クリストフ・エッシェンバッハ指揮ウィーン・フィルの来日公演のチケットは、ルルの命日を刻んだ書類として、ずっと手元に取っておくことにします。
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by yokohama7474 | 2015-10-10 23:39 | その他