プラハ散策

チェコ共和国の首都、プラハ。中世の街並みをそのままに残す、世界遺産の美しい街だ。私はもう 10年以上前に出張でここを訪れ、たまたま (いやホントウです!!) 週を越えてヨーロッパの別の都市に移動することとなったので、土曜日に街を歩き回ったものである。営業担当者における出張とは、自分を通常と違う環境に置いて、まさに相手方と相対して商談を行う勝負の場。心地よい緊張感をもって充実した仕事を達成するには、その街の空気を吸い、その街の歴史を知り、その街の文化に触れることだ。気楽な観光とは一線を画する、そのような異国の街との真剣勝負、それはよりよい仕事のために絶対に必要であると信じる (なんだかしつこいな 笑)。

今回、業界の国際会議 (Conference) に参加するためにこの街を久しぶりに訪れた。重要な打ち合わせがいくつも設定され、夜の会食もビジネスの機会。ホテルに帰ってからも、容赦なく入ってくるメールへの対応。年とともにひどくなる時差ボケに苦しみながらほぼ業務日程をこなし、最終日、余った 2時間ほどを利用して、同僚とともに街を散策した。プラハのランドスケープと言えば、まずこのカレル橋だろう。
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音楽好きの方は、チェコ音楽の父と言われるスメタナが作曲した交響詩「モルダウ」をご存じだろうが、このモルダウというのは川の名前で、現地ではヴルタヴァ川と呼ばれる。この川、ここプラハではかなりの川幅であり、水量も多い。このカレル橋は、そのヴルタヴァ川にかかるいちばん大きな橋で、実に 1402年の完成というから、既に 600年以上経っているわけだ。両側には 30体の聖者たちの彫刻があり、日本人にもおなじみのフランシスコ・ザヴィエルもある。ご覧の通り自動車は通行止めで、涼しくなってきた初秋の気持ちよい気候の中、ここを行き交う人たちは誰もが楽しそうだ。遠くの丘の上に見えるのがプラハ城。もし「モルダウ」をご存じない方は、このカラヤンの演奏で、水源の水の滴りが大河へとうねって行く情景を思い浮かべてみては如何。あるいは、この後の記事を、これを BGM として読んで頂くのも一興かと。
https://www.youtube.com/watch?v=k0DjWBmsYPs

さて今回、私にはどうしても見ておきたい場所があった。それは、旧ユダヤ人墓地。前回の滞在では、定休日 (= ユダヤ教の安息日) である土曜日に当たったために見ることができなかった。そして今回は・・・残念ながらやはり Closed。なんでも、ユダヤ教の祝日に当たっていたようだ。よくよくついていない。ただ、鉄の扉に開けられたガラス窓から、写真だけは撮ることができた。この墓地は 15世紀にできたらしく、現在ではさすがに使われていないが、ユダヤ教では墓地の移転が認められていないことから、狭い敷地内に折り重なるように墓石が建てられたという。なんともすさまじい雰囲気だ。
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私がこの墓地に興味を覚えたのは、子供の頃に読んだ妖怪図鑑に、ユダヤ教の伝説であるゴーレムという土人形が載っていたからである。ゴーレムと墓地を結び付ける要素が何であったか覚えていない。だが、鬼気迫る雰囲気に奇妙なノスタルジアが漂う独特の空間であり、折り重なった無言の墓石たちのそれぞれがゴーレムのように見えてくる。この写真は、無声映画「巨人ゴーレム」から。
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そう。プラハは土人形の街であり、錬金術の街であり、ヴンダーカマーの街であり、不条理の街なのだ。チェコは、芸術的なアニメ映画の伝統を持ち、特に巨匠ヤン・シュワンクマイエル (私は以前から大ファンだ) を生んだ国。また、世界で初めてロボットという言葉を使った作家カレル・チャペックを生んだ国でもあるのだ。命ないものが動く神秘がこの街にはふさわしい。

そのようなプラハの雰囲気において欠かせない有名作家がいる。ほかでもない、フランツ・カフカだ。街中で彼の生家を見かけた。
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この家は、街の中心地である旧市街広場の近くにある。旧市街広場は 13世紀に作られたものらしく、チェコ人が誇りとする宗教改革の先駆者、ヤン・フス (1369 頃 - 1415) の大きな銅像が立っている。
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この広場は大変賑わっており、面白い見世物もある。これ、どういう仕掛けだか分かりますか。360度回って確かめたが、上の人物は明らかに宙に浮いています。おぉ、さすが神秘の街プラハ。ジロジロ見てみると、下の人物の右手は作り物で、棒が地面にまで達して固定されている様子であることが分かった。上の人物は、支柱の上に据え付けられた座面の上に座っているのであろう。ただそれにしても、よくできている。無遠慮にカメラを向ける私に、下の人物が鋭い視線を投げかけて威嚇したので、ちゃんとチップをあげました。ただこれ、このまま静止しているときはいいけど、仕事を終えて帰るときはどうするのだろう。よっこらしょと着物をまくるとカラクリ丸出しではないか。ま、長い布をまとっているのは、その際にカラクリを隠すためなのかも。
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これは街中にデーンと存在する旧火薬庫。1475年建造。下の部分を普通に自動車が通っています。
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それからこれは、ルドルフィヌム (芸術家の家)。この中にドヴォルザーク・ホールがある。立派な建物だ。プラハにはもうひとつ、スメタナ・ホールを擁するやはり美しい建物、市民会館があるが、あの有名な音楽祭「プラハの春」に一度行ってみたい。バイロイトのようなド M なイヴェントとは違って、大変にたおやかで健全な音楽祭であろうと思う。
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プラハ散策の最後は、坂道をせっせと登ってプラハ城へ。門の前からは見晴らしのよい風景が広がっている。
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城内に入るとすぐ目の前に屹立するのが、聖ヴィート大聖堂。14世紀から建てられ始めたが、完成は実に 20世紀とのこと。壮麗な建物で、チェコ出身でパリでポスター作家として一世を風靡したミュシャ (チェコ語ではムハ) も一部装飾に関与しているらしい。ヨーロッパの教会はどこもそうだが、異教徒でも敬虔な思いにさせるこの空間はすごい。
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さて、歩き回って少し疲れたので、再びカレル橋近辺に戻り、ヴルタヴァ川に浮かぶ船がレストランになっている場所へ。少し汗ばんだからだに、チェコ名物ピルスナービールのうまいこと!! 船の先端部分、カレル橋を臨む屋外の席で、疲れ切った日常で蕩尽したエネルギーの充電に励むのは、なんとも素晴らしい体験だ。ぷはー。
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かくして、ヨーロッパ文明におけるこのような意味深い充電が、我々ビジネスマンの明日の活力となり、ひいては日本経済に貢献することとなるのである。けだし、出張に出ては街の空気を味わえ。しつこいって。笑

by yokohama7474 | 2015-10-16 00:09 | 旅行 | Comments(0)
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