オスモ・ヴァンスカ指揮 読売日本交響楽団 (ヴァイオリン : エリナ・ヴァハラ) 2015年11月29日 東京芸術劇場

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以前、ピエタリ・インキネン指揮の日フィルの記事で触れたが、今年はフィンランドの国民的作曲家、ジャン・シベリウス (1865 - 1957) の生誕 150年である。これを受けて東京で活発にシベリウスの演奏があちこちで行われたかというと、実は今年の前半から半ばまではそのようなことになったというイメージがない。だが秋のシーズンに至り、全 7曲の交響曲のチクルス演奏が 2回開催され (ひとつはまだ進行中)、それに加えてこの読響の演奏会と、一気に百花繚乱状態。指揮はいずれもフィンランド人指揮者で、世代を異にする彼ら指揮者のこの三つ巴は大変に興味深い。まずチクルスのひとつは、ハンヌ・リントゥ (1967年生まれ) と新日本フィル、フィンランド放送響の分担。もうひとつは、オッコ・カム (1946年生まれ) 指揮のラハティ交響楽団。リントゥ指揮の演奏会はひとつも聴いていないのでなんとも論評しかねるが、カムとラハティは明日出掛けるので、追って記事にすることになろう。

さて、もうひとりのフィンランド人指揮者、オスモ・ヴァンスカ (1953年生まれ) は読響を指揮して、シベリウスの 7曲の交響曲のうち、3番と 4番を除く 5曲を演奏する。上のポスターでの曲目には 2番が含まれていないが、その曲は既に 11月20・21日に演奏済だ。もう一度この 3人のフィンランド指揮者を生年順に整理しよう。
 オッコ・カム (1946年生まれ) : 1971 - 1977 にフィンランド放送響の音楽監督。2011年より現在までラハティ響の首席指揮者
 オスモ・ヴァンスカ (1953年生まれ) : 1988 - 2008 にラハティ響の首席指揮者
 ハンヌ・リントゥ (1967年生まれ) : 2013年からフィンランド放送響の音楽監督
なんのことはない、2つのオケのポストは、これらの指揮者の間でぐるぐる回っているのだ (笑)。

と書いてから、慌てて訂正しよう。フィンランドは彼ら以外にも多々名指揮者を出している国 (現存者だけでも、セーゲルスタム、サロネン、サラステ、オラモ、マルッキ等々) で、それぞれの個性があるが、今回再確認したことには、このヴァンスカはその中でも、これから巨匠の域に入って行くことは確実だ。素晴らしい指揮者だとは知っていたが、なお進化を続けている。これからも彼のコンサートには可能な限り出掛けたい。
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こういう言い方をしてみようか。クラシックを聴かない人はよく、指揮者が何をやっているのか分からないとおっしゃる。そのような人には、このヴァンスカの演奏を聴いてみて頂きたい。この身ぶりからこんな音が出るのか、ここではこういう表情を強調したいのか、ここのテンポはこのように指示されるのか。そう言ったことが彼の指揮からは大変明瞭に伝わってくるのだ。また、その長身の立ち姿がなんともよい。音楽を体の中に貯めて、オケに対して解き放つような、そんな印象だ。ちゃんと指揮棒を持ち、ヴァイオリンの左右対抗配置も取らない。流行とは関係ないところで、音楽の本質に肉迫することのできる稀有な指揮者である。この人、上記にも名前が出てくる (私が明日、カムの指揮で聴きに行く) フィンランドの地方都市のオケ、ラハティ交響楽団を一躍世界の檜舞台に押し上げた名トレーナーであり、その後も大植英次の後任として名門ミネソタ管弦楽団を最近まで率いていた。読響でも、ベートーヴェンとかニールセンのシリーズをかつて手がけ、いずれも素晴らしかったのである。このオケには今回、3年ぶりの登場。

上記の通り、曲目はすべてシベリウス。

 カレリア組曲作品11
 ヴァイオリン協奏曲ニ短調作品47 (ヴァイオリン : エリナ・ヴァハラ)
 交響曲第 1番ホ短調作品39

最初の 2曲は、聴いてみると意外に構成上の共通点が多い。いずれも 3つの部分または楽章からなり、開始部は森の雰囲気、中間部は静かで緩やか、最後は行進曲調だ。ヴァンスカの指揮は実に効果的にオケのパートごとの強い音を引き出し、見事の一言だ。ソリストのヴァハラは聞きなれない名前で、もしかしたら室内楽はともかく、ソリストとしては初来日かもしれないが、ヴァンスカの秘蔵っ子のような存在らしい。
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フィンランド人で、母国シベリウスのコンチェルトを弾きますというと、あたかも 1発屋であるかのように思うが、なんのなんの、その歌い回しの細かいニュアンスといい、安定した技術といい、世界クラスの音楽家であることは間違いない。アンコールには「ドウモアリガトウゴザイマス」と挨拶してからバッハのサラバンドを演奏したが、これも気品あふれる名演奏であった。ブラームスあたりも素晴らしく弾くに違いない。

メインの交響曲 1番は、テンポは速めであったが、音響のまとめ方が実に堂に入っており、読響が気持ちよさそうに演奏しているのが伝わってきた。冒頭のクラリネットソロや、結構活躍するティンパニ、いざというところで厚く鳴り響く金管も、目立ち過ぎずにしかも充分な表現力だ。ヴァンスカと読響の相性は非常によいと思う。来週はシベリウス・シリーズの第 2弾で、5番・6番・7番という技術的にも難易度の高い 3曲だ。今から大変楽しみだが、読響はこの指揮者とさらに活動を広げるべきだ。場合によっては、現常任指揮者カンブルランの後釜をお願いするというのはどうでしょうか!! そのためには、できればマーラーとかブルックナーのような大曲をヴァンスカの指揮で聴いてみたいものだ。読響の方、もしご覧になっていれば、よろしくお願いします。シベリウスも賛成してくれよう。
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by yokohama7474 | 2015-11-29 00:20 | 音楽 (Live) | Comments(0)