2015年 12月 02日
コードネーム U.N.C.L.E (ガイ・リッチー監督 / 原題 : The Man from U.N.C.L.E.)
まず題名から行こうか。私も知らなかったのであるが、この U.N.C.L.E. は、邦題でもご丁寧にアルファベットの間にポツがついている通り、何かの略号だ。何の略号かというと、"United Network Command for Law and Enforcement"、つまり「法とその執行のための連合ネットワーク司令部」ということだが、まあ要するに悪と闘う陰の国際組織ということだろう。これは 1960年代のテレビドラマ、「0011ナポレオン・ソロ」のリメイクである。このドラマ、昔日本でも放送していたのは知っているものの、スパイ物という以上の知識は私にはない。今般改めて調べてみると、米国のエージェント、ナポレオン・ソロとソ連のエージェント、イリヤ・クリヤキンが、ともに悪と闘うという内容らしい。なるほど、こんな雰囲気でしたね。
ガイ・リッチーの名前が一般にどの程度浸透しているものかよく分からない。まあ、マドンナの元旦那ということで知られているとは言えるであろうか。だが、映画ファンにとっては、「ロック、ストック & トゥー・スモーキング・バレルズ」、「スナッチ」、そして、ロバート・ダウニーJr.とジュード・ロウのコンビによるシャーロック・ホームズ・シリーズによって、現代の最も注目すべき監督であるという認識がされているであろう。私も、上記の最初の 2作に完全にノックアウトされた口である。この監督の作品は、何が何でも見なければならないと思わせる、数少ない監督のひとり。今回の映画の映像においてまず注目すべきはその、昔のテクニカラーを思わせる若干毒々しい色彩であろう。一貫して何やらノスタルジックな雰囲気を作り出している。ただ、初期の 2作の強烈さに比べると、カメラワークや細部の演出の凝り方は少し大人しくなったかなと思う。彼の作品でおなじみの、人を食ったような超接写のスローモーションは、この映画ではあまり見られない。あるいは、マッドサイエンティストを倒す場面のとぼけたブラックさも、面白いけれども、かなりマイルドだ。もしかすると、そのあたりにこの映画の「中途半端さ」があるのかもしれない。
印象深かったのは、役者たちがいずれも性格の良さを感じさせる点で、ここにはスパイの非情な掟が取り返しのつかない悲劇を巻き起こすという事態は発生しない。主役のナポレオン・ソロは、このがっちりした爽やかさ (?) はどこかで見たと思ったら、現在進行中のスーパーマンシリーズの第 1作「マン・オブ・スチール」で主役を務めたヘンリー・カヴィル。来年は「バットマン vs スーパーマン」で、バットマンを演じるベン・アフレック (!) と対決する (?) らしい。考えてみれば、スーパーマンはこの映画のように銃を撃たないから、このような彼のショットは貴重かもしれない (笑)。