2016年 02月 07日
フェルメールとレンブラント 17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち展 六本木・森アーツセンターギャラリー
ということで、本命の 2点をご紹介する。まず、ニューヨークのメトロポリタン美術館の所有する、フェルメール (1632 - 1675) の「水差しを持つ女」(1662年頃) だ。
そしてこれがもう一点の目玉、これもニューヨークのメトロポリタン美術館の所蔵になる、レンブラント (1606 - 1669) の「ベローナ」(1633年) だ。
この 2点が、今回の展覧会のタイトルになっている 2大巨匠の作品であり、ほかは我々にあまりなじみのない画家の作品が多い。だが、メトロポリタン美術館以外にもアムステルダム国立美術館やロンドンのナショナル・ギャラリーから出展されており、また個人蔵のものも含めて 60点が展示されているので、まさに世界をリードした 17世紀のオランダの文化がよく分かる内容になっている。もちろん、上記の 2人の才能がいかに抜きんでたものであったかを知ることにもなるわけであるが、それでも、抜きんでた才能を生んだ時代や土壌のようなものが分かれば、フェルメールやレンブラントについての理解も同時に進もうというもの。以下、いくつか印象に残った作品をご紹介しよう。
これら以外にも、かなり精密な風景画があれこれ並んでいて、なかなか興味深いが、このアールト・ファン・デル・ネール (1603/04 - 1677) の「月明かりに照らされる村」(1645 - 50年頃) なる作品は、不気味なまでの精密さで、夜の空間における人の営みと、沈黙する建物を描いていて忘れがたい。この画家、困窮の中、家賃を 15ヶ月も滞納して亡くなったらしいが、時代を超えたユニークな天才であったようにも思える。
このように、私がこの展覧会から感じ取ったことは、オランダ絵画の諸相がこの時代の絵画に刻印されているということであり、いかなる天才もその流れから全く独自に才能を開花させたわけではないということだ。そして、特に教会の内部を描いた作品と、上記のデ・ホーホの作品のシュールな感覚に、なぜか既視感を覚えたのである。帰宅してよくよく思考を巡らせてみると、確か以前、オランダ絵画の歴史を回顧する展覧会で、「魔術的リアリズム」という名前で分類される一派があるということを知ったはず。書棚をひっくり返して取り出したのは、1986年に西武美術館で見た「オランダ絵画の 100年」という、ゴッホ以降のオランダ絵画の展覧会の図録だ。そこで紹介されていたカレル・ウィリンク (1900 - 1984) という画家の、「悪い知らせ」と題する 1932年の作品。