2016年 02月 14日
ようこそ日本へ 1920 - 30年代のツーリズムとデザイン 東京国立近代美術館
展示品は主に日本人のユーラシア大陸旅行と、外国人の日本旅行を盛り上げるポスターの類によってなっている。1910年代、大正初期の国内時刻表の展示に始まり、すぐに目に入るのは、1920年代には早くも満鉄 (南満州鉄道) によるユーラシア大陸の旅行の宣伝が始まっている様子である。日露戦争後のポーツマス条約によってロシアから割譲された長春から大連までの鉄道が、満鉄の基礎になっている。考えてみれば日本人は、あの平和な江戸時代に富士講やお伊勢参りなどで国内旅行を楽しんでいた民族だ。戦勝気分もあって、ちょっと海を越えて旅行でもしてみようと思ったものだろうか。このポスターの下の方には、今で言うとさながら宇都宮 - 東京 - 横浜というように (?)、東京 - 大阪 - 下関 - 釜山 - 京城 - 平壌 、そして哈爾濱 (ハルピン) や旅順までの経路が記載されている。何日かかったのだろう。「朝鮮へ満州へ」って言われても、そんなに長く会社休めないって (笑)。
この展覧会を見ていると、日本人の外国人誘致という点では、既に 100年も前からやっていることが未だに続いているような気もするが、実際のところ、本当に日本人が外国人に自分たちのよさを分かってもらおうとしているか否か、時々疑問に思うこともある。ドナルド・キーンが言うように、日本人は自分たちが特殊だと思いすぎているのかもしれない。まあ理屈はともかく、モダニズム時代の興味深い表現の数々を楽しむだけでも意義の大きい展覧会だ。