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のぞきめ (三木康一郎監督)

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飲み会もなく、業務過多でもない平日。終業後何か映画でも見ようかなと調べてみると、見たい見たいと思っている「バットマン vs スーパーマン」がちょうどよい時刻に IMAX 3D で上映されている。うーんしかし、上映時間が 3時間近い。ちょっと長いなぁと思ってほかを探してみて、目に留まったのがこの映画だ。元 AKB48 の板野友美主演のホラー。なるほど、「のぞきめ」ということは、何か珍しい魚の種類ではなく、覗いている目のことだな (って、当たり前だ)。なかなか怖そうだし、ひらがなの題名もなかなかよろしいではないか。邦画のホラーと言えば、先般公開された「劇場霊」を見逃した。ホラー好きとしては大変残念なことをした。この映画、まだ封切からわずか 4日目であるが、いつまで上映しているか分からない。というわけで、これを見ることとした。たおやかなイタリア・ルネサンス絵画や江戸時代の肉筆浮世絵や、はたまたフランスオペラについて語ると同時に、日本のホラー映画についても同様に語らずにはいられないのが、私の性なのである (笑)。

実は上のポスターの上部には、デカデカと宣伝文句が書いてあったのだが、あまりに禍々しいので勝手にそこを外してトリミングしてしまいました。関係者の方には申し訳ないが、でも、あらゆる人たちが見るブログにおいては、ちょっと適当でないと思ったのである。・・・などと書くと、何が書いてあったのか余計気になってしまいますね (笑)。この映画、身近に存在しているあらゆる隙間から不気味な目玉に覗かれると、その人間は呪い殺されてしまうという設定で、まあそんなようなことがコピーとして書いてあったのだ。おっと、こわ。
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私は別に AKB ファンでもないし、「ともちん」という愛称以外に板野友美について知っていることは何もないが、普通っぽい顔が多いメンバーの中では目立つ派手な顔だちだなぁと前から思っていたので、ホラー映画で恐怖に歪むにはなかな適性ある顔 (|д゚) なのではないかとの期待があった。彼女は今回が初主演映画。そういえば、前田敦子の初主演映画も「クロユリ団地」というホラーだった (もちろん劇場で見た)。さて、期待通りというべきか、この映画にはこんな感じのシーンが何度か。
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ただ。ただである。やはり演技力ということになると、うーん。まだまだ成長の余地ありということで、ここはさっと流してしまおう (笑)。さりげなさがいい味を出しているシーンがあったことは認めましょう。この映画の、特に後半ではその点がいい効果を出していたと思う。では、この映画がそんなに怖いかというと、さあどうだろう。結構早い段階で化け物の正体が分かるので、その点では得体の知れない恐怖は少ない。もちろん、出るぞ出るぞという雰囲気の箇所は、音響効果も定石通りという感じで、それなりに楽しめる、いや怖がれると言ってもよいだろう。だが、まあその点は、ホラー映画を作るに当たってもさほど難しいことではないだろう。私としては、もう少し登場人物に感情移入できる描き方がされていれば、さらに何か強いインパクトがあったのではないだろうかと思うのだ。映像として私が納得できなかったのは、主人公が恋人のアパートを訪れる幾つかのシーンで、なぜかライティングがほとんど施されていなかったこと。昼のシーンは自然光で撮っているようだったし、深夜のシーンも天井の灯りを消したままで展開した。何か意図があるのかもしれないが、全体として平板な情景になってしまった。ホラーは人間の感情の敏感なところに触れる分野。映像を通じて人間の情がしっかり描かれないと、恐怖そのものが活き活きと伝わってこない。

内容について全く予備知識なしにこの映画を見たわけであるが、上映前にプログラムを見て、原作が三津田 信三 (みつだ しんぞう) であることを知った。以前私は彼の「山魔の如き嗤うもの」という小説を読んだことがあって、なかなか怖かった記憶がある。そしてこの映画を見てみると、なるほどイメージには通じるところがある。映画の題材は日本の田舎に残る古い伝説であり、そのもととなった悲劇なのである(設定自体はもちろんフィクションだが)。こんな舞台挨拶の写真なら大してネタバレにはならないだろう。この目玉ギョロリの少女のキャラクターは、まあそうですな、うまく描けば情念の恐ろしさを喚起したかもしれないが・・・。ユルキャラになってしまってはどうにも締まらない。
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もっとも、気の利いた展開もあるにはあって、特に、主人公の恋人がどのように人生の活路を開くかという点に、ちょっとニヤリとする。それからラストシーンも、ちゃんと途中のセリフの中に伏線がある。決して膝をポンと打つほど鮮やかなラストとは思わないが、なるほどそう来たかという感じ。

ほかの出演者はほとんど知らない人たちばかりだが、ちょっとだけ出ているつぶやきシローが、化け物より怖い (笑)。それから、こんな役者も。
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吉田鋼太郎。テレビでの活躍はあまり知らないが、昨年 9月に記事を書いた蜷川幸雄演出の「マクベス」での演技が素晴らしかった。ただここでは正直、素晴らしい演技というには若干躊躇するものがある。冷やかしでホラーに出ていると断じる気はないが、キャラクター自体がちょっと中途半端な気がする。彼の最後の登場シーンはどういう意味なのか。主人公の運命を知っているということなのだろうか。そのあたりの腑に落ちない感じが、吉田の演技にも影響しているような気がするが、いかがだろうか。

それからもうひとつ気になった点。この映画では登場人物が電話をするとき、必ず右手にスマホを持っている (板野の数度のシーンに加え、東ちづるも) これは何か意味があるのだろうか。いや、実は従前から、電車の中で流れているテレビ CM で、なぜか役者が右手で電話をしているのを見て、不思議な気がしていた。もしかすると、スマホの場合は、右利きの人でも右手で通話をするのが世の中の常識で、私がそれを知らないだけなのか?! 終映後、私のほかに 6人しかいない観客の退場を何気なく見ながら、ふとそのことを思い、今見たばかりの映画よりも、ゾッとしましたよ (笑)。

by yokohama7474 | 2016-04-06 00:38 | 映画