美の祝典 I やまと絵の四季 出光美術館

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既にこのブログでも何度か記事にしている通り、東京日比谷にある出光美術館は、特に日本美術の宝庫として非常に貴重な存在なのである。東京にはほかにも根津美術館や五島美術館や、はたまた静嘉堂文庫や、現在修復中の大倉集古館など、素晴らしい日本美術を蔵する私立の美術館がいろいろあるが、そのコレクションに一本筋が通った出光美術館の存在は、東京の文化生活に欠かせないものだ。その出光美術館が今年開館 50周年を迎えるという。もともと出光興産の創始者である出光佐三 (1885 - 1981、なんという長命!!) のコレクションなのである。
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今回、美術館の開館 50周年を記念して、約 3ヶ月の間に 3度に分けて大規模な展覧会が開かれている。その名も「美の祝典」。この美術館の所蔵する名品が勢ぞろいする展覧会であるらしい。その中でも目玉はこれだ。
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おぉ、この紅蓮の炎はなんだ。そう、国宝、伴大納言絵詞 (ばんだいなごんえことば) のうち最初の巻に出てくる、都の応天門の火災である。この絵巻物は 3巻から成っていて、この展覧会が約 1ヶ月毎に内容が変わるごとに 1巻ずつ展示されるという。そもそも絵巻物とは、右から左に展開する長い巻物に様々な物語が書かれたもので、日本独自の美術表現であるのだ。そう、日本独自という点に注目しよう。もともと大陸・半島からの文化を受け入れた我が国は、平安時代以降、独自の文化を発展させたのであるが、この絵巻物という形式はまさにその典型。今に至る日本人のアニメ好きの原点はここにあるとしか思えない。私は日本に残る数々の名品絵巻物に大変興味があり、中央公論社の「日本の絵巻」シリーズ全 20巻を所持しているが、もちろんその中にはこの伴大納言絵詞も含まれている。このシリーズは時々取り出してツラツラと眺めているのであるが、様々な名作絵巻をカラーで掲載しているものの、何か満たされないものが残る。そう、この本は縦長で、本物の絵巻物とはやはり違うのである。
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そんなわけで今回 10年ぶりに公開される「伴大納言絵詞」を見たくて会場に赴いたのであるが、実は私は同じ展覧会に二度足を運んでいる。というのも、この絵巻を見たい一心で、最初に美術館を訪ねたときに、現地で気づいたことには、財布を自宅に忘れたのである!! 会社の PC を持ち歩き、重いなぁと思いながら、何のことはない、軽い財布 (何せ中身が少ないので 笑) を忘れてくるとは誠に情けない。そんなわけで、その時はむかついてむかついて、絵を見るどころの騒ぎではない。家人と離れて美術館の窓から皇居を見て、なんとか自分への怒りを鎮めようとしたのである。これは出光美術館から皇居の桜田門を臨む景色。いらだっていた時には気づかなかったが、なかなか威厳に満ちた光景ではないか。なんだか絵葉書のような風景。
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そして出直してようやく鑑賞できたのは、伴大納言絵詞全 3巻のうち、今回展示されていた第 1巻。なぜかこの巻だけ絵詞がついていないらしいが、「宇治拾遺物語」の中に同じストーリーが含まれているため、内容が分かるようだ。伴大納言とは、伴善男 (とものよしお) のことを指し、彼が犯人とされる応天門放火事件を題材としている。絵巻物は、馬に乗る武士たちやさんざめく庶民たちの向かう先にある、炎上する応天門から始まる。この押すな押すなの大混雑の描写の活き活きとしていること。これを見ると、日本人は元来、戯画好きであることが実感される。近世以降に発達したわび・さびの世界とは全く異なる生命力がここにはある。
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今回の展覧会では、これ以外にも四季を描いた日本古来の絵画があれこれ展示されていて、大変興味深いものであった。たとえばこれは、重要文化財の「扇面法華経冊子断簡」。日本美術ファンには既におなじみであろう、大阪、四天王寺に所蔵されている国宝の扇面法華経冊子の一部なのだ。
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それから、仏画もあれこれ展示されている。例えばこの鎌倉時代の「阿弥陀来迎図」。通常なら合掌しているはずの勢至菩薩 (阿弥陀如来の左下) は、「さぁっ、どうぞー」と言わんばかりに腕を差し伸べている。阿弥陀如来の姿も躍動感に満ちていて、いつの時代にも、型から外れた芸術家がいたことに思い当たる。
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「伴大納言絵詞」は、この展覧会の残り 2回でそれぞれ 1巻ずつ公開されるらしいので、なんとかすべて見たいと思っている。なんでも、国宝の 4大絵巻とは、この「伴大納言絵詞」のほかに、「源氏物語絵巻」「鳥獣戯画」「信貴山 (しぎさん) 縁起」を指す。うーん、「源氏物語絵巻」は、徳川美術館と五島美術館のそれぞれで見たことがある。「鳥獣戯画」は、一昨年修復後の展覧会を京都で見た。そうすると、あと残るは「信貴山縁起」だけだということになる。あー、見たいなぁ、あの摩訶不思議な絵巻物を。私の思いは募る一方なのである。




by yokohama7474 | 2016-04-30 23:47 | 美術・旅行 | Comments(0)