シビル・ウォー / キャプテン・アメリカ (アンソニー & ジョー・ルッソ監督 / 原題 : Captain America : Civil War)

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1か月少し前、4月19日に記事を書いた「バットマン vs スーパーマン」では、率直な感想として「失敗作」と冷酷に切り捨ててしまった私であるが、またまた似たような映画である。今度は、いわゆるヒーローの集合体である「アベンジャーズ」の主要メンバーであるアイアンマンとキャプテン・アメリカが戦い、それに伴って他のアベンジャーズメンバーたちがそれぞれの側に分かれて戦い、加えてスパイダーマンの参戦までが噂されている・・・という触れ込みで、予告編でも確かにそんな内容のようであった (ちなみに "Civil War" とは当然ながら「内戦」という意味)。ヒーロー物も既にネタ切れとなり、ヒーロー同士を戦わせるといういわば禁じ手に頼るしかないところまで来てしまっているということか・・・。だが、先の「バットマン vs スーパーマン」同様、その禁断の戦いに大変興味を惹かれた私は、まんまと作り手の策略にはまり、やはりこの映画をどうしても見たいと思ったのである。そもそもマーヴェル・コミックのアベンジャー・シリーズは、一連のキャラクターの映画化自体が比較的最近のことでもあり、私はそれほど沢山のシリーズを見ているわけではない。また、登場人物がやたら多い (笑) この映画に、若干の戸惑いを覚えることは事実。だが、結果としてこの映画の内容は、「バットマン vs スーパーマン」よりも数段よく考えられていて、実に面白い!! 「ヒーロー対決もの」という新たな (?) ジャンルを設定するとするならば、この 2作の軍配は明らかにこちらに上がるであろう。これがこの映画の主要キャラクターたち 10人。
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そもそもなぜにヒーローたちが戦い合うかというと、実はこの映画と「バットマン vs スーパーマン」とには設定に共通点があって、それは、悪と戦う過程でどうしても建物破壊等で罪のない人々を犠牲にしてしまうことが世間の非難を浴び、それがヒーローたちを悩ませるということだ。でもそれって、何十年もこの世界では、やむないこととして暗黙裏に認められていたことではなかったか。私なども幼少の頃、怪獣ものを夢中になって見ていたが、あれだけ派手に建物を壊せば犠牲者も出るだろうし、誰がどうやって補償するのだろうかと、子供心に不思議に思ったものであった (笑)。まあともあれ、21世紀のヒーローたちは、そんな単純な社会に住んでいるわけではなく、自分たちの正義の戦いに巻き込まれて犠牲となる罪なき人々への慚愧の念に堪えないのである。時代とともに進歩するヒーローたちの内面。そんなわけで、アイアンマンのトニー・スタークとキャプテン・アメリカのスティーブ・ロジャーズが、何やら深刻な議論をするに至る。自分たちの行いは間違っていて、既に戦いをやめるべきときに来ているのか、それともこれからも戦い続けるべきなのか。
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そもそもこの議論がある時点で、「バットマン vs スーパーマン」との差異が生まれる。あちらは、一方が勝手に一方を憎むところに端を発しており、戦いの説得力がなかったのである。この映画においては、議論を尽くしても埋まらない溝は、最終的にはこのようなシーンによる双方の能力の限界に臨む解決が図られることになる。バリバリと命を削る音が聞こえるようだ。
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実際にこのシーンは映画の最終段階で出てくるもので、いわば歌舞伎の見栄のように両者のポーズも決まっており、様式美の観点からもこの映画の質の高さを評価することができる (って、本当か?)。カッコいいので、別の角度でもう 1枚。この "Devided we fall" は、そのままでは文章になっていないので調べてみると、"United we stand, devided we fall." という米国の標語の後半部分であるらしい。つまり、「団結すれば立つ。分裂すれば倒れる」という国是である。寄り合い所帯で国ができたアメリカらしい言葉だ。
https://en.wikipedia.org/wiki/United_we_stand,_divided_we_fall
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実際この映画の中では、キャプテン・アメリカとアイアンマンそれぞれの考えに同意するアベンジャーメンバーの超人 (や人工知能) たちが対立し、実際に戦う場面が出てくるが、そのようなシーンにもあまり終末感はなく、ユーモアが感じられるシーンもあり、その点でも、救いようのない暗さを抱えた「バットマン vs スーパーマン」と異なるのである。そして、上に書いた通り「参戦が噂されて」いたスパイダーマンは、まぁこれは隠す意味もあまりないと思うのでバラしてしまうと、そうなのだ。参戦するのである。これはキャプテン・アメリカの盾を奪ったところ。
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実はもうひとり、乞われて参戦するキャラクターがいる。それはアントマン。私はこのキャラクターが主人公の映画を、劇場ではなく飛行機でしか見ることができなかったが、なかなか面白かった。まさかここにも出てくるとは。これはアイアンマンのスーツの上に立つアントマン。
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さて、この 2人の活躍ぶりを比べると、アントマンに軍配が上がるだろう。なにせ彼は、本来のキャラクターの持ち味とは異なる、この上なく突飛な作戦で敵を翻弄するのだから。このシーンはネタバレしたくないのでこれ以上の言及は避けるが、私はこのシーンには腹を抱えて笑ってしまったのである。その点スパイダーマンは、既に単体で映画もあれこれあるわけで、ヒーロー像が確立している分、あまり奇想天外なことはさせられないと思うが、ここではあえて既成のものとは異なるイメージ (例えばびっくりなメイおばさん・・・ネット情報では次回作につながっているとか) を作り出すことで、なんというか、「まだ若く経験の少ないヒーロー」として、今後の成長が課題という描き方がされていた。これはこれでひとつの見識であろうと思う。あ、それから、本作を劇場でご覧になる方は、エンドタイトルの最後まで席にいるように。スパイダーマン関連情報があります。

それにしてもこの映画、本当にキャラクターが次々と沸いてきて (?) 困る。アフリカの国の若き王子が、父王を殺され、王位を継ぎながらもこんなコスチュームで暴れまわって父の敵討ちを目指すのだ。名前はブラックパンサー。なかなか精悍であるが、スーツさえ着れば超人的能力が発揮されるという設定はいかがなものか。いやしくも一国の王。スーツを着て活動中に万一のことがあったら国民はどうなる (笑)。
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まあそんなこんなで、突っ込みどころ満載の映画なのであるが、あといくつか話題にしたいことがある。まずひとつは、作品中で洗脳によって悪役にされてしまうウィンター・ソルジャーに詰問するテロ対策センターの職員 (役名 エヴェレット・ロス) が、先に映画「アイヒマン・ショー」の記事で触れた、「ホビット」のバルボ・ビギンズじゃないや、ビルボ・バギンズ役、そして BBC のシャーロック・ホームズ物のワトソン役で知られるマーティン・フリーマン。映画のプログラムには彼の紹介は載っていないが、ちゃんとエンドタイトルで確認したから間違いない。
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それから、次は日本で知っている人は多分そういないし、もしかしたら私だけかも、と思ってしまうネタがひとつ。いや、まぁここで自慢するに値するかは別問題である (笑)。「だから?」と言われればエヘヘと笑うしかないくらいどうでもよいことだ。だが、お伝えしよう。ここでスパイダーマンの正体、ピーター・パーカーを演じているのはトム・ホランドというイギリスの若手俳優。
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この映画での彼の演技は、正直今一つだと思ったのであるが、来年公開のスパイダーマンの新作、「スパイダーマン / ホームカミング」でも主役を務めると聞いて、そのファミリーネームになじみがあるなと思いながら何の気なしに Wikipedia で経歴を調べると、2008年にロンドンでミュージカル「ビリー・エリオット」の主役を務めている。そのとき分かったのだ。まさに 2008年、ロンドンのある大手弁護士事務所のそれなりにえらいホランドさんという弁護士と結構密にやりとりしていて、その彼から、「うちの甥っ子が今度ある舞台で主役に立つことになってね」と聞いたのだ。おぉー!!! 甥っ子さん、こんなに出世したのですね。今や天下のスパイダーマンだ!!! おじさん、鼻高々だろう。

この映画の監督はアンソニーとジョーのルッソ兄弟。アベンジャー・シリーズでは「キャプテン・アメリカ / ウィンター・ソルジャー」を監督していて、2018年、19年に予定されているアベンジャー・シリーズの新作 2作も連続して監督を務めることになっている。これは期待できると思う。そもそも今回のこの映画、アベンジャーズの構成員として重きをなしているはずのソーとハルクが出ていない。さて、どんどん増殖するこのシリーズにおけるこの 2人の今後のかかわりやいかに。
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by yokohama7474 | 2016-05-28 22:10 | 映画 | Comments(0)