デッドプール (ティム・ミラー監督 / 原題 : Deadpool)

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上記はこの映画の米国でのポスターである。よって表記は当然英語だし、封切日も日本のそれとは異なっている。だが、なぜあえてそれを冒頭に掲げたかというと、日本のポスターだとこんな感じになってしまうからだ。
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うーん、なんかこの雰囲気、文化ブログにそぐわないんだよねぇ (笑)。スマホで記事の一覧を見るときなどには写真が並ぶので、あまりふざけていない方がよいと考えたもの。と、そんなこと誰も気にしないという説もありますが・・・。まあともあれこの映画の主人公は、上で明らかな通り、背中に刀を二本差している忍者風コスチュームのヒーローなのである。これは、スパイダーマンやX-Men シリーズ、あるいはアベンジャーズやトランスフォーマーなどで知られるアメリカン・コミックのマーヴェル社のキャラクター。設定は、特殊部隊出身のおしゃべりな傭兵であったウェイド・ウィルソンが不治の病に侵され、その治療と称して受けた医学的処置によって不死身の体になるというもの。通常のヒーロー物と異なる点は、まあなんとも下品かつ人間くさいこと。私はアメコミにおけるこのキャラクターの人気には全く疎いが、1991年の登場以来、かなり人気があるようだ。これが原作における姿。
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このキャラクター、実は2009年から映画化の話はあったとのこと。「ウルヴァリン : X-Men Zero」において、このデッドプールの前身であるウェイド・ウィルソン役を、本作でも主演を務めるライアン・レイノルズが演じていたのが始まりで、X-Men シリーズの派生作品として制作されるはずが一旦棚上げとなったところ、デッドプールのテスト映像がネットに流出し、ファンの大反響があったことから、今般映画化にこぎ着けられたとのこと。なるほど、熱狂的なファンの後押しあって初めて実現した映画であるわけだ。これが件の「ウルヴァリン : X-Men Zero」においてライアン・レイノルズが演じるウェイド・ウィルソン役。なんだ、意外に真面目にやっているではないですか (笑)。
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それから、「デッドプール」という名称だが、この言葉を題名にした映画が以前にもあった。それは「ダーティーハリー 5」の原題。
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実はこの「デッドプール」には様々な映画がコネタとして引用されており、面白いのであるが (言及されているのは、それほどマニアックでない映画が多いせいもあろう)、実は主人公がコスチュームを着て復讐に乗り出す際、名前を決めるときに、この「ダーティーハリー5」の原題に従うことが示される。この言葉の意味は、文字通り死人の掃きだめということであろうか、映画の中では、次に死ぬのは誰かという予想をするゲームのことを意味している。なんとも悪趣味なのであるが、この映画に次々と出てくるネタはお下劣で、文化ブログで扱うには若干気が引けることも事実だが、見ているときにガハハと笑っている自分を否定することなく (笑)、このまま記事を書き進めよう。

予告編でかなりストーリーにイメージが持てるような作りになっていたが、ここで描かれているのは、自分を不死身のヒーローにした代わりに醜い姿に変えてしまった科学者に対して復讐するデッドプールの姿である。このような顔はネタバレでもなんでもなく、予告編でも既に見ることができる。
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それはまぁ派手に敵の一群を撃ち殺しなぎ倒すのであるが、このスピード感あふれる切れ味よい殺陣には、何か特別な技術が使われているのだろうか。テンポ感やメリハリもあって、やけにカッコよい。こんな跳躍 + 銃撃もなかなか決まっている。
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それから、X-Men のメンバーが二人。実に対照的なのだが、一人は CG キャラのコロッサス。怪力で、ロシアなまりの英語がワイルドだ。
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もう一人は。ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド (長い名前だなぁ)。身体の周りに膨大なエネルギーを溜めて放射することができる。若い女性だが、このスキンヘッドがなんとも印象的。
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上でこの映画を下品だ下劣だと貶めている割には、実は今、これを書いている私の気分は悪くない。それは、愛する人に対して示す態度や、デッドプールになる前のウェイド・ウィルソンが悪い奴を脅すエピソードにおいて、どうにも憎めないこのデッドプールのキャラクターがはっきり描かれているからであろう。つまりは優等生的なヒーロー像よりも、ダークサイドに入っているこのキャラクターの方が、なぜだか人は、より感情移入できるのだということだろう。うん、そうだ。この映画のような殺戮のような極端なケースではなくとも、ダークサイドの魅力は日常のいろいろなとことにあるものだ。予告編にも出てくる、デッドプールが復讐の殺戮に挑む前に、憎むべき敵のマンガ的肖像を描いているというこのシーンも興味深い。なんともとぼけていながら、一種の切迫感も感じさせる独特の雰囲気を持っているのである。
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それから、敵を取り逃がしたときのこの表情。マスクをしているのに、その慌てぶりがよく分かる (笑)。
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この作品の監督、ティム・ミラーは、これまで CM やゲームの分野で 20年以上の経験を積み、今回が長編映画の第一作。極端な架空のキャラクターを駆使しながらも、人間くささをあちこちに散りばめた面白い映画を作り上げた。最近この記事で採り上げている映画の監督には、たまたま未だキャリアの浅い人たちが多いが、それぞれに想像力を必要とする周辺分野から映画に移って来ているということだろう。所与のキャラクターや題材をもとに、いかに感情移入できる映像を作れるかという点が勝負であろうと思う。

この映画を見て、デッドプールに憧れる人というのはあまりないと思うが (笑)、一時だけでも自由な気分になれれば、それはそれで貴重な時間だと思う。このキャラは、原作でも読者に向かって話しかけるというが、この映画でも観客に話しかけるし、撮影しているカメラが汚れるようなシーンもある。そしてエンドタイトルの後にも人を食ったメッセージがあるのでお見逃しなく。ご存知ない方に申し上げると、ここでデッドプールが言っている「眼帯をしたサミュエル・L・ジャクソン」とは、アベンジャーシリーズに出てくるニック・フューリーのことだろう。出てこない出てこないと言っているが、それだけに次回作 (きっと作られるだろう) に出てくるのではないか・・・と思う次第。いい勝負になるのでは。
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Commented by 酔いどれ船 at 2016-07-07 18:19 x
いつも楽しく拝見させて頂いております。デッドプール、私も見ました。私はこういう不良なヒーローに憧れます。ダークサイド万歳!
Commented by yokohama7474 at 2016-07-09 03:56
>酔いどれ船さん
毎度ありがとうございます。ダークサイドの意義をご理解頂き、大変ありがたいです。またお立ち寄り下さい。
by yokohama7474 | 2016-07-05 23:40 | 映画 | Comments(2)