ストックホルム ヴァーサ博物館

スウェーデンの首都ストックホルム。ノーベル賞で知られる街。素晴らしい2つのオーケストラ、ストックホルム・フィルとスウェーデン放送交響楽団の本拠地。世界最高の合唱指揮者、エリク・エリクソンの出身地。もう少しご存知の方は、郊外にあって未だスウェーデン国王が起居している世界遺産、ドロットニングホルム宮殿とそこにある18世紀のオペラハウスの意義を唱えてもよい。そして、昨年9月7日の記事で採り上げた不思議な映画、「さよなら人類」もこのスウェーデンで制作されたものである。ちょっと街中に出ると、こんな気持ちよい光景を見ることができる。
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実は今回、久しぶりにこの街を訪れ、仕事の合間に1時間ほど余裕ができたので、宿泊しているホテルから徒歩圏内にあって、世界でも類を見ない素晴らしい場所に出かけることとした。湾内に立ち並ぶヨットの横を歩くと、北欧とは思えないほど鮮やかな陽光が人々の生を輝かしく彩っているのが実感でき、なんとも嬉しくなるのだ。そんな素晴らしい気候の中、私が同僚たちに絶対見せたいと思った場所が、ヴァーサ博物館だ。博物館といえば、いろいろな価値あるものがガラスケースに入っているのを間近で見て、人間の営みに思いを馳せる場所である。ところがこの博物館はちょっと違う。なにせ、展示物は基本的にひとつ。もちろんそれに関連する資料はあるものの、すべてはその展示物のために作られた場所なのだ。その展示物とはこれだ。
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むむむ、よく分からないだろうか。実はこれ、17世紀に建造された木製の戦艦なのである!! その名はヴァーサ号。全長62m、最大幅12m、マスト最上部まで実に50m。その巨大な船が室内いっぱいにデーンと横たわるミュージアム。もちろんこれは完全なかたちで現存する最古の船である。その存在感は異様な迫力。1682年、ドイツでの30年戦争に参戦するためにストックホルムの埠頭から処女航海に出たが、折からの突風に煽られ、未だ港内にいる間にあっけなく沈没してしまった。沈没の原因は未だ不明とされているが、1961年にこの巨大な船の引き揚げがなされ、船の周りに大きな覆いを作ったのがこのヴァーサ博物館だ。300年近く海中に沈んでいたため、腐ることなくそのままの形をとどめることとなった。軍艦とはいえ、様々に豪華な装飾が施されていて、その素晴らしさには文字通り目を奪われる。これは船尾の彫刻。
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色はさすがに落ちてしまっているのでちょっと分かりにくいが、上部の方に施されていた彫刻の復元が展示されている。おー、戦艦にここまで彫刻を施すという情熱は一体どこから来たものか知らないが、とにかくこれは尋常ではない。
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そして、この船全体の当時の姿を復元した模型も展示されている。船腹には多くの大砲が顔を覗かせている。
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この巨大な船を海から引き揚げるのがいかに大変であったか、想像をすることはできる。この博物館にはまた、引き揚げの時の様子が模型で再現されている。なんでも、空気中に上がって来たときに崩壊することを防ぐため、始終船に水をかけ続けての作業であったという。
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これらはいかに写真を掲載しても、実物の迫力には到底及ばない。ストックホルムに行く予定のある方には、是非ご覧になることをお勧めする。また、クラシック音楽ファンの方であれば、ベルリン・フィルが毎年5月1日にヨーロッパの都市で開催するヨーロッパ・コンサートのひとつとして、1998年にこの場所で、当時の音楽監督クラウディオ・アバドの指揮で行った演奏会をご存知であろう。このときには主として海に関係する曲が演奏されたが、上に名前を挙げた名合唱指揮者、エリク・エリクソンの率いるスウェーデン室内合唱団とエリク・エリクソン合唱団も共演していた。
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私は今回二度目の訪問であったが、改めてその迫力に大興奮。この船の小さい模型を購入して、我が家のガラクタ置き場、いや、我が家では「世界遺産コーナー」と命名している (笑)、実際に自分が訪問した世界各地の遺跡や建造物の安物のガジェットを所せましと飾っている場所に加えることとした。と、ところが!! いざパッケージから出して、展示場所を空けるために一旦折り畳み式のベッド (畳んだ状態でちょっと不安定だった) の上に置き、さて飾ろうとすると、その姿が見えないではないか!! 先刻までここにあったのにと思いながら周りをあちこち調べ、ベッドを移動して隙間を覗き込んでみると、なんとなんと、折り畳まれたベッドの隙間に落ち込み、下の方の金属の上にちょこっと乗っかっているではないか!!これが発見時の写真。ヤラセではなく、正真正銘の本物である。スプリングの下、縁の部分の金属の上に奇跡的に乗っかっている!! さすがヴァーサ号の模型。隙間に落ちても、必ず引き揚げられる場所に留まる、不思議な力を持っているのであろう (笑)。いやはや。
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そうして我が家に仲間入りしたミニ・ヴァーサ号は、沈没した1682年という年号の表示とともに、「世界遺産コーナー」のヨーロッパの場所に収まることとなった。真ん中に見える青い屋根の建物が、同じストックホルムで以前購入した市庁舎のガジェットである。この市庁舎、ノーベル賞の授与式の会場として有名である。
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素晴らしきストックホルム。次回は是非オーケストラを聴いてみたいし、地元の人によると、オペラもなかなかの水準らしい。成熟したヨーロッパの神髄がここにある。そしてまたヴァーサ号のように、一旦危機に瀕しても、逞しく這い上がる生命力を持ち続けるために、大変ご利益のある場所であることを確信しました!!

by yokohama7474 | 2016-07-16 00:48 | 美術・旅行 | Comments(0)
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