マネーモンスター (ジョディ・フォスター監督 / 原題 : Money Monster)

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この映画の予告編は随分といろんなところで見たものであるが、米国の人気財テク (死語かと思ったが、上のポスターでも使われているので、まだ世間一般において通じるのだろう 笑) テレビ番組の生放送中に青年が拳銃を持ってスタジオに乱入、キャスターを人質にとり、そのキャスターの口車に乗ったがゆえに被ってしまった経済的損失の代償を求める。その危機に対して、オペレータールームの女性ディレクターが冷静に対処する。そんなストーリーがよく分かる予告編であった。だが、この危機が一体いかなる結末を迎えるのかは定かではなく、リアリティあるサスペンスとしての期待を高めるような予告編の作りであった。そして名女優ジョディ・フォスターが監督、主演がジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツと来れば、映画ファンとしては見に行かざるを得ないだろう。これは今年のカンヌ映画祭でのシーン。但しこの作品の出品は非コンペティション部門であったようだ。
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この映画、いろいろなところに工夫が凝らされていて、それなりに面白いし、また考えさせられる内容ではあると思う。だが率直なところ、いくつかの点でどうも納得できないところが気になって、残念ながら私にとっては、事前の期待感が充分に満たされたとは正直言い難い。以下、それらの点を考えてみたい。

まず全体的に、なんとなく映像の鮮明さを欠いていたこと。ストーリーのかなりの部分はテレビスタジオの中で展開するものの、疑惑の対象となるIbis Clear Capitalなる会社のCEOやその女性部下であるCCOの登場シーンには、オフィスビルや空港といったいろいろな場所が出てくるという対照は理解できた。だがそれなら一層、その対照を際立たせるため、スタジオ内の緊張をさらに高めるような強烈で息苦しいショットがあってもよかったのではないか。まず視覚から来る刺激という点で、私はどうもリズムに乗れなかった。これがIbis Clear Capitalのお二人。CEOウォルト・ギャンビーを演じるのはドミニク・ウェスト。COOダイアン・レスターを演じるのはカトリーナ・バルフ。あ、どうせこのような上司と部下の関係は何か意味深なのではないかと、すぐにそういう下世話な勘ぐりをする人、いると思います(笑)。ネタバレは避けるが、まあこの辺の設定の巧拙で映画の面白みはかなり違ってこよう。
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さらに言うなら、この男女と対照をなす二人、ジョージ・クルーニー演じるリー・ゲイツと、ジュリア・ロバーツ演じるパティ・フェンであるが、この二人の関係をどう見ようか。キャスターであるゲイツは、耳にイヤホンを仕込んでおり、そこからオペレータールームにいるフェンの指示を聞くことができる。そのおかげで、この非常事態においてもパニックにならずに犯人と対峙することができる。それぞれがプロであるからこそ可能なことだ。そんな二人が、果たして恋愛関係に陥るようなことがあるか否かについて下世話な勘ぐりをする人、いると思います(笑)。作品でもなんら明示はされないし、再びネタバレは避けるが、いずれにせよ、この二人の関係の描き方において、ポンと膝を打つリアリティは、正直あまり感じなかった。
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実際のところ私の最大の不満は、恐らくジョージ・クルーニーにある。軽薄な「財テク」番組のキャスターとしては、もっともっと軽薄に演じて欲しい。実はこの作品に限らず、最近の彼の出演作の中には、どうも「オーシャンズ11」の頃の、人を食ったような突き抜けた迫力がないような気がして、少し物足りないと思うのだが、いかがなものだろうか。そうそう、当時はこんな感じだった。おっとそういえばジュリア・ロバーツは、ここでも共演していましたね。この「マネーモンスター」でも、彼女の演技には好感が持てましたよ。
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私の不満の最後の点は、ストーリー展開である。犯人が意外とピュアで弱い面があるというのはよいし、人質に取られたリー・ゲイツが彼に感情移入する点には、ある程度予測できるところ。だが、ラストに至る場面で、街中を移動するなど、あまりにもリアリティが低く、緊張感が下がってしまう。「財テク」がらみの企てとして描かれるカラクリも、なんだかあまりビックリするような内容でもない。そうだ。我々は既に、リーマンショック時の実話に基づく「マネーショート」という恐ろしい映画を体験してしまった。あの作品で描かれていた仮借ない現代金融の闇の実像の恐怖のリアリティとは、この映画はついに無縁である。いやむしろ、フィクションとして楽しめるという意見もあるかもしれない。だが、ここで犯人カイル・バドウェル役を演じたジャック・オコンネルのインタビューを少し見てみよう。ジョディ・フォスターから脚本を受け取り、スカイプでオーディションに参加したが、それがフォスターとの初対面であった由。

QUOTE
物語については、リアルで説得力があるところに惹かれた。汚い世界の犠牲になったカイルに共感できたんだ。
UNQUOTE

もちろんこれは素直な感想で大変結構だし、「リアルじゃないなぁと思いました」とはインタビューで言わないと思うが(笑)、演技の中に何かもっと狂気を感じるものがあれば、嘘からリアリティが生まれてきたかもしれない・・・と思ってしまうのはないものねだりか。
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このような現場でのジョディ・フォスターの写真を見ると、指導はきっと厳しいのであろうが、メガネにパーカーと、ラフないでたちでの熱血指導に、俳優たちもちょっと遠慮しているのかもしれないなと、余計なことを考えたりする。これまでの彼女の作品についてあまりイメージないものの、もちろんハリウッドの重鎮であることには誰も異論の余地のない存在であり、その彼女がメガホンを取ることの意義は大きいと思う。それだけに、もう少し丁寧かつイマジネーションあふれる内容の映画を見たかったというのが正直な感想なのであります。

と言いながら、この映画を見たときに劇場にサイン入りポスターが貼ってあったので写真に収めてしまった。ハートマークなんて書いている場合かい、と突っ込むのはやめにして、次回作に期待しましょう。
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by yokohama7474 | 2016-07-19 23:09 | 映画 | Comments(0)