東京・上野 びわ湖長浜 KANNON HOUSE

つい先日、8/8(月)の記事、滋賀県長浜市の仏像の展覧会について採り上げたが、その記事の最後に、その長浜市が東京の上野で最近オープンしたばかりの「びわ湖長浜 KANNON HOUSE」について触れたばかり。たまたま上野に出掛けた際にこの場所に行ってみようと思い立ったので、今回はそれをレポートする。

そもそも上野の不忍池にある弁天堂は、琵琶湖に浮かぶ霊場で日本三弁天のひとつとしてつとに名高い竹生島(ちくぶじま)を模して造られたものである。その不忍池のほとりに、本家本元琵琶湖東岸の街である長浜から、順番に観音様がおいでになるというこの企画、素晴らしいではないか。不忍池を琵琶湖に見立てるなら、きっと不忍池のすぐ横から入れるかと思って池のほとりを歩いて行くと、あ、あったあった、KANNON HOUSEの表示!!だがよく見ると、ちょうど建物の裏側であって、やはり池の側に入り口はない模様だ。まあ、保安上はその方がよいですな。
e0345320_23390835.jpg
気を取り直して表の方に回ってみる。これが KANNON HOUSE の入っているビルの入口だ。APAホテルの向かって左隣。雑居ビルの1階なのである。
e0345320_23430290.jpg
e0345320_00050273.jpg
こじんまりした佇まいだが、黒を基調としたデザインがなかなかオシャレである。さて、どのような観音様との出会いが待ってるのか、ちょっとワクワクする。中に入ると、受付の女性が丁寧に応対してくれる。入場は無料である。そして右手奥のスペースに進むと、そこには長浜の紹介ビデオや展示されている仏像や長浜の習俗についてのパネル、あるいは本やチラシによる長浜の案内情報が並んでいる。未だできてから日が浅いので、なんとも清潔感があって心が落ち着く。
e0345320_00072165.jpg
そして、木が格子状になって三方を囲んでいるスペースに、ガラスケースに入った観音様の姿が見える。現在展示されているのは、尊住院(そんじゅいん)というお寺の聖観音像。大変小ぶりだが、なんとも優しいお顔の観音様だ。平安時代の作である。
e0345320_00061325.jpg
e0345320_00081426.jpg
この場所で嬉しいのは、まずひとつはガラスケースの中の観音様を、360度どこからでも身近に拝観できること。それから、フラッシュをたかなければ撮影自由であることだ。私の場合、ガラスケースに張り付くようにして(笑)ぐるりからじっくり拝観したあと、係の人に確認して、観音様のお姿を撮影させて頂いた。なんとも凛とした佇まいではありませんか。きっと何百年も村の人たちに大切にされてきたのだろう。
e0345320_00114215.jpg
e0345320_00115532.jpg
e0345320_00354781.jpg
日本人の多くは普段は全く宗教心がないにもかかわらず、不思議なことに、神社仏閣や、言うところのパワースポットに出掛けると、多くの人が賽銭を奉じている。それはまあ、結構なことかもしれないが、もしかすると、ほかの人もやっているから自分もやらないと気が済まないという日本人独特の習性なのではないか、と懐疑的に思うこともままある。その意味で、このKANNON HOUSEの一つの見識は、賽銭箱を置いていないことだ。ここで順番に展示される仏様は、地元で長い期間に亘って篤い信仰の対象となってきたわけで、滋賀県から遠路はるばる東京まで出開帳におでましになって、ここではちょっと普段と違ったお姿で滞在されることになる。賽銭箱がないがゆえにかえって、物見遊山の雰囲気がなくなり、東京の我々は、彫刻としての観音像を虚心坦懐に鑑賞することができる。だが逆説的なことではあるが、その虚心坦懐な鑑賞の結果、最終的にはやはり、何か人智を超えた尊いものを感じることができるような気がする。これが数百年の星霜を越えてきた仏像の持つ力でなくてなんであろう。その意味で、このKANNON HOUSEは、慌ただしい日常からほんの一瞬でも解放してくれる、貴重な場所であると思う。因みにこの尊住院の聖観音は6/7(火)から展示されており、9/4(日)で展示終了、9/5(月)は定休日で、翌9/6(火)からは次の仏像、常楽寺の聖観音像に交代になる。地元の人たちにしてみれば、篤く信仰している仏様が東京に出張されることは複雑な気持ちかもしれないが、多くの人で溢れる大東京で、様々な癒しを人々に与えて下さると思うと、本当にありがたいことだ。このKANNNON HOUSE、毎週金曜の17時から30分間は室内の灯りを消して観音像だけを浮かび上がらせる特別ライトアップを実施しているとのこと。是非一度、その静寂に満ちた空間を体験してみたい。

この場所を訪れたあと、上野公園の方に上がってみた。不忍池と弁天堂を見下ろすと、お盆休みで多くの人で賑わっている。この平和な風景は、もしかするとありがたい観音様のご利益によるものかもしれませんね。このKANNON HOUSE、あまり多くの人が押しかけて騒がしくなって欲しくはないものの、その一方で願わくばこの長浜市のユニークな試みが、多くの人に認識されることを願ってやまない。
e0345320_01005061.jpg

by yokohama7474 | 2016-08-14 01:01 | 美術・旅行 | Comments(0)
<< 聖なるもの、俗なるもの メッケ... 秋山和慶指揮 東京交響楽団 (... >>