秘密 THE TOP SECRET (大友啓史監督)

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最近の日本映画においては、漫画の映画化が大変に目立つ。日本のヴィジュアルを主導しているのは漫画なのだろうか。もちろん私は、日本人が中世以来、漫画的なものを大変好んできたことを知っている。日本人の根源的な部分に、漫画的要素があるのだろうか。そしてこの映画も漫画を原作としているのである。ここであらかじめ断っておくと、私は昨今の漫画にはとんと疎く、一体どんなものが流行っているのか全く知識がない。ただこの映画については、映画館に貼ってあったポスターを見て、これは面白そうだなと思ったので、見に行くこととした。その大きな理由は、この映画の監督が「るろうに剣心」シリーズの監督、つまり2010年の大河ドラマ「龍馬伝」でチーフ演出家であった大友啓史であること、そして、音楽がその「龍馬伝」「るろうに剣心」双方で忘れ難い印象を残した佐藤直紀(なおき)であることだ。歴史の奔流が大変に劇的な渦を巻くあの雰囲気はなかなかに独特なもので、血沸き肉躍るものなのである。

この映画の上映時間は約2時間半。超大作である。役者の顔ぶれを見ても、なかなかのラインナップである。ただ、女優としては唯一栗山千明だけがなじみの顔で、ほかは皆男性の俳優なのであるが。実際この映画における男優のカテゴリーはかなり明確に2つに分かれる。すなわち、
 第1のグループ : 生田斗真、岡田将生、松坂桃李
 第2のグループ : 椎名桔平、リリー・フランキー、大友南朋
まあ要するに、若いイケメンと、それなりの年齢の幅広い芸風の役者ということである。まあここで明確にする必要もなく(?)、人間の心理の奥深さ、恐ろしさを描くために、このような2群の俳優が必要であったのであろう。ところがここに第3のカテゴリーの俳優がいる。
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ヒントは、私と同い年で(誕生日はたったの5日違い)、広島の修道高校出身。そう、この人、吉川晃司である。
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帝国重工の部長ならぬ彼のここでの役回りは、凶悪犯なのであるが、その正体は結局謎のまま。なんとも薄気味悪いのである。薄気味悪いと言えば、この映画自体がなんとも悪趣味で、死後すぐの人間の脳から視覚情報を取り出して、それを追体験することで殺人事件の真犯人を見つけようというもの。いやぁ、こんなことされたらたまらんですなぁ(笑)。
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その発想はそれなりには面白いと思うが、残念ながら映画としてはあまり成功していないと思う。その理由を遠慮なく列挙してみよう。
・悪役の女優に凄みが決定的に欠けている。この点は映画の生死を決する。
・イケメン俳優陣とベテラン俳優陣のギャップが大きすぎる。若いイケメンはなぜにかくも純粋で、くたびれたベテランはなぜにかくも醜いのか。椎名桔平はセリフなし。リリー・フランキーは偏執狂的に饒舌。大森南朋は情けなさすぎ。これって紋切型では?
・凶悪事件の当事者が脳外科医とされているのはリアリティなさすぎ。ストーリーを成り立たせるための設定であることが見え見え。
・観客に対するミスダイレクションが不充分。これでは誰も、「そうだったのか!!」という驚愕を覚えることはないだろう。
・そもそもの設定に無理あり。つまり、凶悪犯の記憶を辿るときに5時間をかける設定だが、そもそも何日か何ヶ月の記憶を辿るには、同じだけの時間が必要で、5時間など屁でもないはず。それとも、脳の記憶情報を辿る際に、早送りが可能とでもいうのだろうか。
・冷凍保存した死体の記憶が辿れるの??? しかもこの死体、涙まで流して(笑)。
・主人公の過去が充分描かれておらず、この映画だけでは明らかに完結していない。続編狙い?
・生田斗真と栗山千明の関係はなんなんだ!!!ちょっとなれなれしすぎないか。
・期待した佐藤直紀の音楽は、いつものうねり上がっていく迫力がない。唯一は、ラストのカタルシスを与えられる場面の音楽だけがそれらしい。

今日、リアリティのあるイマジネーションでストーリーを創造することは難しくなっているのであろう。現実に起こっている事柄の方がよっぽど怖い。そしてそれを見る無垢な動物の目は、人間と異なるがゆえに癒しの要素があるのである。だから、もし続編が出来ても、動物が主人公でないと見に行かないかもしれない。動物の知る Top Secret は、人間の実際のありようであるのかもしれないので。

by yokohama7474 | 2016-09-11 00:34 | 映画 | Comments(0)
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