2016年 09月 24日
クエイ兄弟 ファントム・ミュージアム 神奈川県立近代美術館葉山
いつもの寄り道はこのあたりにして、さて、クエイ兄弟である。このブログでは既に一度、その名前が出ている。今年の1月23日の勅使川原三郎のダンスについての記事である(ちなみにその記事へのアクセスは非常に少なくて、ちょっと残念な思いをしているのだが・・・)。そのダンスはポーランドの作家ブルーノ・シュルツの作品から想を得ていて、そのシュルツの別の作品をクエイ兄弟が映画化したのが短編「ストリート・オブ・クロコダイル」。私は学生時代にその作品といくつかのクエイ兄弟の短編を劇場で見て、ガツーンと脳天をやられてしまったのである。もう一度その作品のポスターと、いかなる映画であるかのイメージを持って頂けるような場面の写真(ポスターの一部だが)を掲載しておこう。
さて、日本ではこの映画でクエイ兄弟の名前は大ブレイク(?)したのであるが、その後彼らの作品に触れる機会は非常に限られていた。1995年に制作した長編映画「ベンヤメンタ学院」は正直なところ期待外れ。その後2005年にやはり長編映画の「ピアノ・チューナー・オブ・アースクエイク」を制作しているが、私はそれを見ていない。それら以外にクエイ兄弟の名前を聞くことはなく今日に至っているのであるが、その長い間の渇を癒すのがこの展覧会である。会場では、彼らの数々の短編作品を上映しているほか、撮影に使われたパペットの類もあれこれ展示されている。また、兄弟の美意識の原点を辿ることのできるデッサンや鉛筆画、また彼らが手掛けたCMや舞台美術などにも触れることができ、これまで「ストリート・オブ・クロコダイル」で大ブレイク(あ、だからこれには"?"がつくのだが 笑)して以来未知であったクエイ兄弟の全貌に迫ることができる、貴重な機会なのである。
上記の写真でも感じられると思うが、クエイ兄弟の持ち味はかなりブリティッシュな感じである。確かに彼らはロンドンのロイヤル・アカデミーに学び、今でもロンドンに住んでいるものと理解している。だが実は彼らの生まれは米国ペンシルヴァニア州、フィラデルフィア郊外である。今回の展覧会には、「母と双子」という1948年の写真が出品されているが、これが彼らの幼少時の写真なのであろうか。生まれは1947年なので、1歳ということになる。
20代の頃の鉛筆画にも面白いものが沢山ある。これは、「シュトックハウゼンを完璧に口笛で吹く服装倒錯者」(1967年頃)。カールハインツ・シュトックハウゼンは当時バリバリの前衛作曲家。電子音楽(って古い言葉だな)をいち早く取り入れ、頭が痛くなるようないわゆる現代音楽を盛んに作った人だ。だから、そのシュトックハウゼンの音楽を完璧に口笛で吹くなど、ありえない話(笑)。このあたりにこの兄弟のブラックな面が出ている。