ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮 読売日本交響楽団 2016年9月24日 東京芸術劇場

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今月始まった新シーズン、これまでと来月を見据えて、在京のオケの中で私が最も高く評価する活動を繰り広げているのは、読売日本交響楽団(通称「読響」)である。9月初旬に始まった二期会の「トリスタンとイゾルデ」と、そこで指揮をしたスペインの巨匠ヘスス・ロペス=コボスとの初顔合わせのコンサート(ピアノはこれもスペインの人間国宝的存在、ホアキン・アチュカロだ)、そして今日から3日間、このオケの名誉指揮者として日本でもおなじみのゲンナジー・ロジェストヴェンスキーとの演奏会。また来月に入ると、音楽監督シルヴァン・カンブルランの一連の演奏会に、日本でただ一度だけ開かれるフランスの巨匠ミシェル・プラッソンとの演奏会。それから、五嶋みどりが2曲のソロを弾く演奏会が予定されている。ただ私は、ロペス=コボスとの演奏会には行けなかったし、五嶋みどりが出演する日も含めて、カンブルランの演奏会には多分一度も足を運ぶことができない。そんなことから、今日の演奏会はなんとしても行きたかったのである。1931年生まれ、今年実に85歳になるロシアの巨匠、ロジェストヴェンスキーの演奏会である。上のポスターの一部を拡大してみよう。
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百戦錬磨の大巨匠とは言いえて妙。ボリショイ劇場やモスクワ放送交響楽団、またソヴィエト政府が彼のために組織した文化省交響楽団といった母国での偉大なる活動に加え、BBC交響楽団、ウィーン交響楽団、ストックホルム・フィルといったメジャーなオケを率いた、文字通りの大巨匠。私の場合は、クラシック音楽に親しむ前から彼の録音を聴いていたという経緯がある。小学生の時に、普段はクラシックなど聴かない両親が大枚はたいて購入したであろう、クラシック音楽大全のようなセットもの(アナログレコードを、それを乗せるとスピーカーをふさいでしまうような 笑 小さなプレーヤーで聴いた)の中に、この指揮者の演奏が含まれていたのである。今にして思えば貴重なことだと思うが、そこには彼の父親、ニコライ・アノーソフの指揮による録音(私が初めて親しんだ交響曲であるドヴォルザークの「新世界」など)も含まれていた。アノーソフはロシアでは名高い名匠であったので、このロジェストヴェンスキーはその父との混同を避け、母方の姓を名乗ったとのこと。大家には大家の、他人には分からない悩みがあるものだ。その天才的な棒さばきから、指揮台の魔術師とも呼ばれた、若き日のロジェストヴェンスキー、略してロジェヴェン。
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このロジェヴェン、読響とのつきあいは長く、1979年以来実に35年以上。現在は名誉指揮者の職にある。ハイドンとショスタコーヴィチを組み合わせた一連のシリーズなど、大変素晴らしい成果をこの楽団に残して来た。日本のクラシック音楽の活況に大いなる貢献のあった人である。老齢のため、次の来日はいつかいつかとハラハラして待っていた私としては、今回の演奏会は本当に嬉しいものであった。その思いは、85歳になって未だ衰えぬこの指揮台の魔術師の、まさに魔術的な演奏に接したことで、充分に満たされたのである。

事前の発表では、チャイコフスキーの3大バレエとしか記述がなかったが、曲目詳細は以下の通り。
 チャイコフスキー : バレエ音楽「白鳥の湖」から序奏/ワルツ/4羽の白鳥の踊り/ハンガリーの踊り/スペインの踊り/フィナーレ
 チャイコフスキー : バレエ音楽「眠りの森の美女」からワルツ/パノラマ/アダージョ
 チャイコフスキー : バレエ音楽「くるみ割り人形」第2幕

19世紀の音楽文化には数々の成果はあれど、チャイコフスキーのバレエ音楽は、その中のひとつとして、充分に人類のかけがえのない遺産に数えられる。そのことは分かっていたつもりであるが、ロジェヴェンが登場して、いつもながらに指揮台のない平土間のステージ上で長い指揮棒を操り始めたときから、もう心がやられてしまっている。こんな素晴らしい音楽を作り出した人類は、本当にすごい。それぞれの人間に与えられた生は限られたものであっても、このような音楽が鳴り響く地球とは、なんと素晴らしい星であることか!!・・・と、あえて大げさに書いてみたが(笑)、今日の読響は、コンサートマスター小森谷巧以下、本当にすごい音響が鳴っていた。これぞロシア音楽の醍醐味。バレエ音楽の醍醐味。前半の曲目の盛り上がりでは、ブルックナーを想起するほどの分厚く勢いのある音が鳴っていて、いつも日本のオケの金管に残念な思いを抱いている私にとっても、全く間然とするところのない華麗な音響であった。もちろん後半の「くるみ割り人形」第2幕には、このバレエの組曲でおなじみの曲があれこれ含まれていて、もう楽しいことこの上ない。85歳にしてこの生命力溢れる音楽を奏でるロジェヴェンは、やはり現代における最高の指揮者のひとりである。もう何も言うことはない。あるとすればただひとつ、また元気に来日して下さいということだけだ。
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私は今晩から出張に出るので、これから一週間程度はブログの更新ができない。だが私の耳の底には、百戦錬磨の大巨匠が繰り広げた音響が未だに残っているので、それを頼りに、お仕事頑張りますよ。

by yokohama7474 | 2016-09-24 20:37 | 音楽 (Live) | Comments(0)