奈良 西大寺

別項で採り上げた吉田裕史指揮ボローニャ歌劇場によるプッチーニの「トゥーランドット」は奈良の平城宮址における野外公演であったが、開場までに少し時間があったので、久しぶりに西大寺を覗いてみることにした。近鉄の大和西大寺駅(わざわざ「大和」とつくのは、岡山に有名な西大寺という寺及び駅があるからだろう)は、近鉄の乗り換え起点となる重要な駅であるが、西大寺というお寺は歩いてすぐだ。
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西大寺というからには、平城宮の西にあって、かつては東の東大寺と対になる巨大寺院であったわけであるが、今日ではごくわずかな建物が残っているに過ぎない。だが、鎌倉時代に興正菩薩叡尊(こうしょうぼさつえいそん)が復興し、真言律宗の総本山として今日までその法脈をつないでいる意義は大きい。また、巨大な茶碗でお茶を飲む大茶盛という行事でも知られる。境内にはその大茶盛のポスターが貼ってある。ちなみにその隣は、つい先日まで奈良国立博物館で開催されていた、僧忍性(にんしょう)の展覧会のポスター。北山十八間戸等の社会事業で知られる忍性は叡尊の弟子で、来年生誕800年。この展覧会はこれを記念したものであったが、和泉元彌主演の映画ももうすぐ封切される。
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この西大寺の境内、40年ほど前から景色は全く変わっていない。かつての栄華を偲ぶ遺構はわずかであるが、静かな境内を散策すると、気持ちが落ち着くのである。これは東塔の礎石。
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この寺は随分以前には、本堂のみが拝観可能であったが、その手前にある四王堂は非公開、また奥にある愛染堂は、秘仏である本尊愛染明王の開扉時のみ公開していたと記憶する(また、宝物館である衆宝館は春と秋の一定期間のみ公開)。だが今回訪れてみると、その四王堂にも愛染堂にも入ることができて有り難い。これが四王堂。
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実はまだ小学生の頃、当時非公開であったこの四王堂がたまたま専門家の調査だか何かで開いていることがあって、ドキドキしながらそこに紛れ込んだことがある。特に注意されなかったが、その内部に安置された巨大な仏像を見上げて圧倒された記憶がある。当時はこちらもチビであったし、暗い中で普段見られないものを見ているという高揚感もあり、そのゾクゾクする感覚は忘れられない。その後もこの場所に来たことは一度や二度はあったと思うが、その巨大な仏像が高さ6mの長谷寺式十一面観音であることはすっかり忘れていた。なんとも存在感があり、もう少し知名度が上がってもよい仏様である。平安時代作の重要文化財である。
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そしてこの堂の主役は四天王、いや、そこで踏みつけられている邪鬼なのである。この寺の拝観パンフレットは、私の覚えている限り、40年前からこの邪鬼だ(笑)。
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これが本堂。本尊は清凉寺式釈迦如来で、重要文化財。また、丈六の弥勒菩薩像(県指定文化財)と、文殊菩薩渡海像(重要文化財)がいずれも素晴らしい。しばし瞑想したくなるような厳粛な空間である。
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そして、境内奥に位置する愛染堂。本尊の愛染明王は公開していないが、中に入ることができ、しかも堂内の客殿では特別な展示がされているのである。
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西大寺中興の祖にして真言律宗の開祖、興正菩薩叡尊が生前に作らせた自らの肖像は、鎌倉肖像彫刻の傑作として知られるが、この春重要文化財から国宝に格上げになった。堂内の客殿に安置された像は誠に凛としており、そのお姿はリアルでありながら、なんとも澄み切った精神を感じさせる優れたもの。
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この寺にはほかにもいくつか素晴らしい文化財が残されており、さすがに歴史のある古寺である。また今度は衆宝館や愛染明王が公開されているタイミングで訪れたい。

by yokohama7474 | 2016-10-02 10:44 | 美術・旅行 | Comments(0)
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