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スター・トレック BEYOND (ジャスティン・リン監督 / 原題 : Star Trek BEYOND)

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最近のハリウッド映画では、古典的なキャラクターやアメリカン・コミックのヒーローたちを主人公としたシリーズ物が多く作られている。そのうちの幾つかの例はこのブログでも採り上げているが、ざっくりとした印象では、成功作と失敗作がある程度分かれる傾向があるようにも思う。巨額の資金をつぎ込み、超弩級のCGを駆使した映画ばかりで、エンドタイトルには長々とスタッフの名前が載る。いつの頃か知らないが、組合との協定で、関わった人たち全員の名前を載せる必要あることから、この現象は致し方ない。エンドタイトルが少ないのは、ウディ・アレンの映画くらいではないか(笑)。だがそのような大人数が関わって膨大な分業体制の中で完成する昨今の映画においては、本来は総責任者であるべき監督や、あるいはプロデューサーの手腕を本当に発揮できる要素がどのくらいあるのだろうか、と考えることが多い。

この映画は、言うまでもなく昔のSFテレビドラマ「スタートレック」をもとにしている。これが昔懐かしい、白黒番組の中の、とんがり耳のミスター・スポックとカーク船長。
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対して、現在のキャストはこんな感じだ。スポック役は髪型と耳のかたち、それから隠れたポイントとして眉を作れば結構似てくるが(笑)、カーク役の雰囲気もなかなかよいではないか。この役者については後で語ろう。
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このシリーズは2009年から始まっており、これが3本目。私はもともと白黒ドラマの「スタートレック」には大した思い入れもないが、最近のシリーズものは、この3作目の「BEYOND」まですべて見ている。そして、どれも大変楽しんでいる。私の見るところ、それはやはりこの男の力に依っているところが多いだろう。
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J・J・エイブラムス。最近の業績としては、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」の監督がもちろん最大のものであろうが、実はCGを駆使した超大作だけではなく、このブログでも採り上げた「10クローバーフィールド・レーン」の製作や、私が愛してやまない「SUPER 8 / スーパーエイト」の脚本・監督も手掛けているのである。それらの流れから、決して巨額資本ありきの発想で映画を作っているのではなく、いわゆる空想物に対する本気度を持つクリエーターであることが分かるし、だからこそ、この人が関与したものなら期待できるのではないかと思わせる、現代のカリスマなのである。私がこの新しい「スター・トレック」シリーズに注目するのも、最初の2作はエイブラムス自身の監督、本作では製作を手掛けているからなのである。

そして実際、このシリーズはどれも面白いし、今回も期待を裏切られることはなかったと申し上げよう。ストーリーは至って簡単。カーク船長率いる宇宙船エンタープライズ号は、救命ポッドに乘った異星人のSOSを受け、惑星アルミタッドに向かう。そこでエンタープライズ号は攻撃を受け、乗務員たちは地上に上陸。その星には、100年以上前に消息を絶った地球製の宇宙船が隠されていた。敵の親玉、クラールの企みを、カーク船長以下の活躍によっていかに打ち砕くのか。・・・といった具合。ここには、最近はやりの「実は」「実は」という隠し玉は、ある程度予想される以上は何もない。だが、それでも楽しめるのは、キャラクターの描き方がよい、役者がよい、ヴィジュアルのセンスがよい、ということが寄与していると思う。なんだ、どれも映画の基本じゃないか(笑)。

先にヴィジュアルについて語ろうか。CGというものはただの技術である。その技術をいかに使ってどのようなイメージを創り出すかということが大事。その点、この映画のヴィジュアルは、なんとも新鮮なものも沢山あり、見ていて本当に飽きるということがなかった。例えばこの、魚群のような敵の来襲。作り物と分かっていても、あぁ、もうダメだ、と思ってしまうこの感覚(笑)。
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その一方で、異星人のメイクなどは古典的な要素があって、CG疲れがしがちなこの手の映画においては、何やらほっとする要素になっていると思う。これが悪役クラール。
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これは、新キャラクターであるジェイラ。どうです、癒されるでしょう(笑)。演じる女優はソフィア・ブテラ。
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この女優さん、名前に何やら聞き覚えがあると思ったら、あっ!!!私にとって昨年のベスト映画「キングスマン」(昨年9月23日の記事ご参照)において、サミュエル・L・ジャクソンの秘書兼用心棒役を演じていたあの女優(もともとダンサーであり、モデル)ではないか!!!あー、素顔を見せないとは、なんとももったいない(笑)。
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そして、なんと言ってもこの映画の成功の立役者は、主役のカーク船長を演じるクリス・パインであろう。
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このシリーズの第1作、2009年の「スター・トレック」では、優れたキャプテンであった父のプレッシャーから逃れようとする、はぐれ者で屈折した自信満々の若きカークを、活き活きと演じていた。2013年の「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を経て、また「エージェント : ライアン」のような意欲作でも主役を張って、この映画である。実際のところ、役者の成長が役柄の成長と一致しているように思われて、実に素晴らしい。これも、J・J・エイブラムスが仕組んだ業なのであろう。因みに監督のジャスティン・リンは、台湾生まれの43歳。「ワイルド・スピード」シリーズ(私は、主役のヴィン・ディーゼルが生理的にあまり好きでないので、見ていないのだが)を手掛けてきた監督だが、もともとはインディーズ系の人らしい。エイブラムスのお眼鏡にかなった人だということだろう。

これまでのスター・トレック物を見ていない人にとっても、かなり楽しめる内容であると思うが、できれば前2作を予習してから劇場に足を運べば、より一層楽しめるものと思います。

by yokohama7474 | 2016-11-02 01:07 | 映画