2016年 12月 20日
クラーナハ展 500年後の誘惑 国立西洋美術館
クラナッハの時代性を理解するためにその他の画家の生年を調べると、デューラーは1471年、ミケランジェロは1475年生まれなので彼らと同世代。ちなみにホルバイン(この場合は有名な息子の方)は1497年生まれで、クラナッハの一世代下。ラファエロは1483年生まれで、その中間ということになる。クラナッハが画家として活動を始めたのは、ベルリンの60km南東に位置するヴィッテンベルクという街。以下は宗教革命期の地図であるが、ヴィッテンベルクは青く塗った部分、つまりザクセン選帝侯の領土に存在する(ちなみに、緑の部分は神聖ローマ帝国=ハプスブルク家の領土)。
次は時代がかなり遡って、1510/13年頃の「ルクレツィア」。初期の作品である。こうして比べると、上の方に掲載した聖母子像に近く、円熟期のエロティシズムとはかなり違うものであることがよく分かる。だが、恍惚感なしにルクレツィアが剣を押し当てた肌からは、実際に血が滴っていて、豊潤なロマン性を持つイタリア的感性からは既に「一線を超えた」違いのある表現になっていると思う。