2016年 12月 31日
エヴォリューション (ルシール・アザリロヴィック監督 / 原題 : Evolution)
これは81分と比較的短い映画であるが、上映回によっては同じ監督の18分の短編「ネクター」(2014年制作)が併映されることもあり、お得と言えばお得。この「ネクター」はフランス映画であるが全くセリフがない。「女王蜂とメイド蜂たちの密やかな儀式を艶めかしく幻想的なタッチで描いた作品」との説明をサイトで見ていたが、まさにその通りで、あまり家族揃ってニコニコ見るようなタイプの映画ではない(笑)。印象に残るシーンもいくつかあって、芸術性は高いが、ただ若干個々の画面のイメージに依存しすぎで、流れが悪いような気がしないでもない。以下はこの「ネクター」から。
ここで監督監督と何度も繰り返しているが、どのような人であるのか。ルシール・アザリロヴィック。1961年生まれの55歳の女性。フランス人だがモロッコで育ったという。こんな普通な感じの人で、とてもこのような怪しい映画を撮る女性とは思えない!!
最後に音楽について少し。ここでは、フランスで1920年代に発明された電子楽器、オンド・マルトノが頻繁に使用されている。空間を漂うような不思議な音を出すので、夢幻的な雰囲気を表すにはうってつけの楽器だ。この楽器を使用したクラシック音楽というと、なんといってもメシアンの「トゥーランガリラ交響曲」が有名で、オネゲルの「火刑台上のジャンヌ・ダルク」でも効果的に使われている。
このように、大変趣味性の高い映画であり、見終ったあとのカタルシスもないので、この手の映画が感覚的に好きだという人にしかお薦めできないが、既に上映1ヶ月を経ても細々ながら観客動員が続いているようなので、もしかするとこの手の映画を好む人は案外多いのかもしれない。こんな映画を見る選択肢を与えられている我々はラッキーだと考えることにしよう。