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ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅 (デヴィッド・イェーツ監督 / 原題 : Fantastic Beasts and Where to Find Them)

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この映画、しばらく前から劇場でかなりの頻度で予告編が流れていて、あのハリー・ポッターシリーズに続く新たな作品、しかも原作者のJ.K.ローリング自身が脚本を担当するということで、話題になっていたものである。ファンタジーものは私としても興味ある分野であり、ハリー・ポッター全8作もすべて劇場で見ているので、やはりこれは見ておこうと考えたもの。英国からニューヨークにやってきた若い魔法使いのカバンから魔法動物たちが逃げ出して街は大騒動、というストーリーは予告編からもはっきりしていて、イメージを持ちやすい。実際に見てみると、過度なひねりがあるわけでもなく、凝り過ぎた作りにもなっていない作品であり、事前のイメージ通りという印象。

何より、主人公ニュート・スキャマンダーを演じるエディ・レッドメインの好演が光る。このような少しとぼけた味わいと、魔法動物たちへの愛がよく表現されていると思う。
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彼のこれまでの主要主演作は、「博士と彼女のセオリー」と、「リリーのすべて」だが、私はどちらも見ていない。だが調べてみると、私の見た映画の中でも、「レ・ミゼラブル」に脇役で出ていたし、ウォシャウスキー兄弟の「ジュピター」では悪役を演じていたとのこと。なるほど、既に幅広い役柄を演じている役者なのである。英国人で、もうすぐ35歳。名門イートン校ではウィリアムズ王子と同級生。ケンブリッジの美術史学科卒業。さすが英国の役者らしい高学歴だ。でも、この「ジュピター」の悪役姿はどうだろう。2015年、あの最低の映画に贈られるゴールデン・ラズベリー賞の最低助演男優賞を獲得するという栄光に輝いた(笑)。
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ほかの役者で印象に残るのは、ニューヨークに本拠を置く架空の組織、アメリカ合衆国魔法議会(MACUSA)の長官を演じるコリン・ファレルだろうか。
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それ以外にも数名、男女それぞれに主要な役を演じる俳優が出ているが、知名度のあるのはジョン・ヴォイト(今更アンジェリーナ・ジョリーの父と紹介するのは失礼だろうか)くらいで、ほかはあまりなじみのない人たち。そして正直、私としてはそれほど印象に残る役者はいなかった。ただ、一人だけ例外がいる。これはハリウッド有数の大物俳優であり、その出演作なら本来大々的に名前が出るはずが、どういうわけかこの映画の宣伝にはカケラも名前が出てこないし、プログラムにも載っていない。そして、登場シーンでも、若干メイク過多だ(笑)。だがそうであっても、そこでいかにも楽しそうに演じているこの役者、誰もが一目見て彼だと分かるだろう。エンドタイトルでは、メインキャストにはやはり彼の名前がなかったが、出演順に出て来る全キャスト表の最後の方を目をを凝らして見ていると、しっかり彼の名前がクレジットされていた。こんな目をした人だ。すぐ分かりますよね。
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思うに、本作は上のポスターでも「新シリーズ」と銘打っていることから、今後シリーズ化されるのであろう。そう言えば、主役ニュートにも何やら明かされないつらい失恋経験があるような描き方になっていた。なので、そのあたりのネタを次回作以降に取ってあるのだろうし、この有名俳優も、次回作から堂々と登場してくるのではなかろうか。

とまぁ、そんな突っ込みどころもあり、数々の魔法動物もCGを駆使してそれぞれに愛嬌がある描き方にはなっていて、ハリー・ポッターシリーズのうち4作を監督したというデヴィッド・イェーツの演出も、いかにもファンタジー物のツボを心得ているように見受けられる。
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その意味で、本作は誰でも楽しめる映画ということはできるだろう。だが、この映画はただ明るいだけではなく、主人公たちの前に立ちはだかる魔術のDark Sideも描かれている。もし私にこの作品への不満があるとすると、そのDark Sideの描き方ということになるであろうか。これはハリー・ポッターシリーズも一貫してそうであったのだが、誰を敵としてどのような闘いが展開されているのか、切実さをもって実感することが難しい。そもそも魔法って何なのだろう。例えば、主人公たちがどこにでも瞬時に移動できる手段を持っているなら、街を歩いたり地下鉄を使う必要はないではないか(笑)。魔法の杖を持ってビビビと光線を出し合って闘うが、その物質は何であって、どのような破壊力を持つのであろうか。世の中にはエセ科学ムーヴィーも溢れていて、超常現象について荒唐無稽な説明がつく映画もある。なにもそれがよいと思うわけでも必ずしもないが、何か少しはもっともらしい説明がないと、鑑賞者が主人公にあまり感情移入できないという結果になってしまう。換言すれば、敵として闘っているDark Sideに、本当に恐ろしいものを感じないということになってしまうわけだ。それは映画の説得力に直結するのである。それとも、そういうことを考えること自体、私という人間が既に魔法の力を信じる純真な心を失ってしまったからなのでしょうか・・・(笑)。

ともあれ、新シリーズということなので、この作品の舞台である1926年のニューヨークから、今後はどこに話は進んで行くのであろうかが気になる。以前も何かの記事に書いたが、私にとって両大戦間の文化は強い関心の的。Roaring Twenties (狂乱の1920年代)に沸いた米国は、やがて1929年の株の大暴落に始まる大恐慌時代に沈んで行く。それは魔法の杖を振りかざしてビビビとやるだけではどうしようもない、厳しい現実であった。果たして原作者J.K. Roaring、じゃなかった、Rowlingは、どこかで現実と魔術をのっぴきならない方法で対峙させるのか、それとも、徹底的に架空の魔術をこれからも描き続けるのか。そして21世紀の観客は、彼女が示す世界観を、どこまで受け入れ、喝采するのであろうか。21世紀のTwenties(20年代)に向けて、これから注意して見て行きたいと思う。
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by yokohama7474 | 2017-01-04 23:37 | 映画