スケア・キャンペーン (コリン・ケアンズ & キャメロン・ケアンズ監督 / 原題 : Scare Campaign)

e0345320_00454804.jpg
この映画は、東京のヒューマントラストシネマ渋谷と、大阪のシネ・ルーブル梅田で開催中の「未体験ゾーンの映画たち 2017」という特集上映に含まれるというかたちで公開されているものである。いや、正しくは「公開されていた」というべきか。なかなか面白そうだぞと思って調べたときには既に東京での上映は終了しており、大阪でしか見ることができない。そこで、別項で書いたあべのハルカス美術館に行くついでに見ることにした。常々このブログでは、日本で見ることのできる映画のヴァラエティの広さを正しく認識すべきとのメッセージを発しているが、この特集にかかっている数々の映画 (今年は実に 62本!!) などはまさにその好例である。以下、劇場のサイトからの説明。

QUOTE
『未体験ゾーンの映画たち』は、日本未公開作品ばかりが集結する劇場発信型映画祭です。
様々な理由から劇場公開が見送られてしまう傑作・怪作映画を、映画ファンの皆様にスクリーンでご鑑賞いただくべく、ヒューマントラストシネマ渋谷をメイン会場に2012年より開催しています。第6回目となる2017年も、各国のあらゆるジャンルから選び抜かれた未体験ゾーンの映画たちを、新年の幕開けとともに一挙上映いたします!
ぜひ、自分だけの隠れた名作を映画館で見つけ出す喜びを、この映画祭で体験してください。
UNQUOTE

私のように映画は基本的に劇場で鑑賞すると決めていて、しかもゲテモノ映画に偏見のない人間 (?) としては、願ってもない特集上映だ。但し、これでも勤め人の身であるし、「普通の」映画を見たりコンサートや美術館に出掛けることでかなりの時間を取られているため、そうそう何本も見に行くことはできないが、だがせめてこの一本でも見れば、どのような内容の特集上映であるかについてのイメージを持つことができ、自分なりの文化の諸相の発見に資するであろう・・・と思ったのである (笑)。

さてこの作品、オーストラリア映画である。脚本・監督のケアンズ (おっと、そのままオーストラリアの都市名ですね) 兄弟は、これが長編 2作目。前作の「モーガン・ブラザーズ」はホラー・コメディで、同作でシッチェス映画祭ミッドナイトエクストリーム・グランプリなる賞を受賞した新鋭であるとのこと。ここでも低予算の手作り感満載ながら、「次はどうやって観客を怖がらせ、驚かせてやろうか」とにんまりしながらあれこれ試行錯誤する彼らの姿が目に浮かぶようだ。ストーリーは以下のようなもの。テレビの人気番組「スケア・キャンペーン」は、いわばホラー仕立てのドッキリ・カメラ。実在の恐ろしい施設に一般人を入れ、そこにニセの怪奇現象を起こしてその一般人を怖がらせる。だが、今やネットにはあらゆる映像が溢れ返る時代。カルト集団が殺人シーンを YouTube にアップして話題を呼んでいる中、テレビとしても刺激を高めないといけないと、放送局内で檄が入る。そこでスタッフは知恵を絞るが、その撮影現場に本物の殺人鬼が・・・という話。「どこまでが真実 (リアル) で、どこからがヤラセ (フェイク) なのか!?」というキャッチフレーズの通り、ストーリーは二転三転で、なかなかに気が利いている。正直なところ、ここに出ている役者はひとりとして知った顔がないが、以前も書いたがこの種のホラーでは、それはむしろ重要な要素になると思う。作り物と分かっていても、やはりこういう恰好をされると、それはそれは怖いもの。
e0345320_01083700.jpg
だがホントはこうであったりするわけで、ちょっと安心する (笑)。
e0345320_01120399.jpg
だから、こんなシーンが出て来ても、悲鳴を上げたり目をつぶる必要はありません!!
e0345320_01125688.jpg
・・・と、果たして言ってよいものか否か。後半の展開の意外さにはかなり乗せられるものがある。もしこの映画をご覧になる場合には、どのシーンが本当か嘘かをあまり考えず、映画のテンポに自然に身を委ねるのがよいと思う。そうすると、段々展開が読めてくるし、最後のオチも予測できようというものだ。だがそうすると今度は、不満が頭をもたげてくる。最後に黒幕は分かっても、実行犯の素性は最後まで分からないまま。ここまでドンデン返しをするなら、そのあたりも回答を用意するのが作り手のマナーではないのかと、少し思ってしまうのである。あるいは、この映画が好調なら続編を作ろうという意図のもと、あえてそういう作りにしているのかもしれない。そうであっても、私としてはこのラストは少し残念だと思ってしまった。

一方、この映画が一般の劇場で公開されないとすると、やはりその描写に一部刺激が強すぎる部分があるからだろう。それは、上記のようなスプラッターシーンではなく、殺人シーンをネットに上げるというカルト集団の描き方だ。この点にも私はあまりよい気持ちがしなかった。狂気を孕んだ現代世界は、このような事態を絵空事と言えない状況になっているので、少なくとも、見ていて楽しい気分にはならない。だから私はこの映画を第一級のホラーと呼ぶには躊躇を覚えてしまうのだ。ホラーにはどこかユーモアがあることが望ましく、ここではその点があまり上質とは言えないと思う。こらこら、こっちに来るなって!!
e0345320_01245458.jpg
だが、見た人の評判は結構よいらしく、ヒューマントラストシネマ渋谷では追加上映が決まったようである。2/12、14、16 の各 21:10 から。「なんだ、『川沿いのラプソディ』ではあまり誉めていなかったけど、面白いじゃん!!」と思われる方もおられよう。それこそまさに、このブログの標榜する文化の多様性を証明する事態である。ではしっかり目を開けて、Enjoy!!
e0345320_01382549.jpg

by yokohama7474 | 2017-02-07 01:28 | 映画 | Comments(0)