ドクター・ストレンジ (スコット・デリクソン監督 / 原題 : Dr. Strange)

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とある人から、「今日は何の映画を見るんですか?」と訊かれて、「『ドクター・ストレンジ』ですよ」と答えると、「ええっ?! あの白黒映画、どこかの劇場でやっているんですか???」との反応。一体何かと思ったら、原題 "Dr. Strangelove"、日本公開名「博士の異常な愛情」のことであったようだ。ちなみに原題も邦題も実際にはもっと長いのだが、普通はこの題名で通っている。それは言うまでもなく鬼才スタンリー・キューブリック監督、ピーター・セラーズ主演の古い作品。いえいえ違います。この「ドクター・ストレンジ」は、「ドクター・ストレンジラヴ」とは全く違った映画で、「アベンジャーズ」シリーズで知られるアメリカンコミックのマーヴェル社のキャラクターが主人公。今回初めて、英国の名優ベネディクト・カンバーバッチ主演で映画化されたもの。少なくとも私は今回の映画で初めてそのキャラクターの存在を知ったが、調べてみると、マーヴェル社のアメコミのキャラクターとして初めて登場したのは、なんと 1963年と古いのである。
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ところが奇妙なことに、キューブリックの "Dr. Strangelove"、つまり「博士の異常な愛情」も、やはり同じ 1963年の制作なのである。ここには何か不思議な魔術的連関があるのであろうか。そう、これはアメコミにしては珍しい、魔術をテーマにした物語なのである。冷戦真っ只中の 60年代にこのような東洋的魔術や傲慢さへの戒めといった内容が受けていたとすると、当時米国が直面していた切迫した危機と、その裏腹の虚無感が、その背景にあるのかもしれない。もっともキューブリックの映画の方は、明確に冷戦の産物でありながら、こちらは魔術とは関係なさそうであるが (笑)。ともあれ、このストレンジな題名は一体どういう意味かというと、スティーヴン・ストレンジという名前の医者が主人公だということである。分かりやすすぎる (笑)。大抵の人は、「ストレンジ」などという文字通りストレンジな苗字を持つ人なんているわけないよと思うかもしれないが、いやいや、人生長く生きてくるといろんなことがある。私が仕事で関係のある人で、Strange という苗字を持つ人がちゃんと実在するのだ。それも、全くストレンジな人ではなく、業界の一流会社のニューヨーク本社にお勤めのエリートだ。今度会ったら、魔術を使うか否か確認してみよう。

などと、本編と関係ないことをウダウダ書いている理由はただひとつ。私には、この映画は面白いとは思えないからだ。せっかくカンバーバッチほどの名優を主演とし、このブログの過去の記事でも絶賛した、私が深く敬愛するデレク・ジャーマンのミューズであった女優ティルダ・スウィントンまで起用しながら、全くもったいない話である。しかも彼女、これは本当に頭を剃っているのではなかろうか。
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アメコミを原作とする映画がすべて「所詮マンガだろ」という評価にとどまるものではないことは自明で、このブログでも、「シビル・ウォー / キャプテン・アメリカ」などは高く評価したものである。だがこの「ドクター・ストレンジ」に対しては残念ながら、「所詮マンガだろ」という憎まれ口を叩きたくなってしまうのだ。何やらクルクル手を回すだけで空間に黄色い炎のようなものが現れ、別の場所に移動できたり敵を攻撃したり自分を防御したりできる。のみならず後半では時間を操るようにまでなってしまう。これができるなら、亡くなってしまったり怪我をした登場人物 (自分を含め) に対しては、全部時間を戻せば事なきを得るではないか。昔クリストファー・リーヴが演じた「スーパーマン」の 1作目で、恋人の死に慟哭したスーパーマンが地球の周りを渾身で高速飛行し、自転を逆回りさせて時間を戻すシーンがあったが、あのような切実で素朴なシーンが懐かしい。
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ネタバレは避けるものの、魔術によって時間を逆行させることで、壊れた建物が原状回復して行くシーンは、最近「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」でも出て来た。それゆえ、この映画のラストのラストに出てくる「魔法使いが多すぎる」というセリフは、もしや、ハリー・ポッター・シリーズにケンカを売っているのではないかと思いたくもなるのである。一方、予告編でも明らかであったこの映画のウリになる見事なシーンは、建物がグニャグニャと動き、重力が自在に変化するところ。
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このパターンでは、非常に手の込んだシーンもいくつかあり、手間暇かかった映像であることは認めるが、これらのイメージも既に、「インセプション」とか「スタートレック Beyond」で使われているものの延長であり、現在の CG 技術をもってすれば、それほど驚くべきものとも思われない。まあ、予告編でもう見てしまっていますしね。

再び役者に関しては、主人公の恋人 (なのであろうか) 役のレイチェル・マクアダムスは最近大活躍であるが、ここではコスプレをしない (あ、医者の白衣をコスプレと認定しないならだが) 一般人の役を自然に演じている。
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一方、コスプレを楽しんでいる気配であるのは、敵であるカエシリウス役のミッツ・ミケルセン。デンマーク人で、実は「ローグ・ワン / スターウォーズ・ストーリー」では、主人公の父親、デススターの設計者ゲイレン・アーソ役を演じていた俳優だ。全然気づかなかった。なるほどこうして比べてみると、今回は目の周りのお肌が随分と荒れておられるが、確かに同一人物とも見える (笑)。
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監督のスコット・デリクソンは 1977年生まれの若手で、サスペンスやホラー系を中心に映画を作ってきた人。私が見たいと思って結局見ることができなかった「NY 心霊捜査官」なども監督している。今回はこの大作に大抜擢ということだろう。
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この映画、エンドタイトル終了後にもシーンがあり、今後マーヴェル社のほかのアメコミ・キャラクターとの共演があることはほぼ明らかだし、続編の制作が明示されて終わる。アベンジャー関係も何やらややこしいことになっており、スパイダーマン (マーヴェル社にとっては新顔だ) がアイアンマンに弟子入り (?) する次回作の予告編も、既に劇場で流れている。あまり複雑にキャラクターを錯綜させるのもどうかと思いますがね・・・。ともあれこの映画、突っ込みどころには事欠かないストレンジな映画ではありました。

by yokohama7474 | 2017-02-15 01:05 | 映画 | Comments(0)