2017年 05月 04日
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2017 井上道義指揮 新日本フィル (マリンバ : 安倍圭子) 2017年 5月 4日 東京国際フォーラム ホールC
そんな中、初日の 5/4 (木・祝)、私が出かけたコンサートは二つ。スケジュールを眺めていると、ピアニストやヴァイオリニストを中心に、本当に一日中聴いてみたい音楽家の名前が並んでいて悩んでしまうが、とりあえず今日はオーケストラコンサート二つに絞ることとした。そのいずれもが井上道義指揮の新日本フィルによるもの。この記事でご紹介するのは、13:45 から行われたコンサート 143 というもので、曲目は以下の通り。
伊福部昭 : 日本組曲から 盆踊、演伶 (ながし)、佞武多 (ねぶた)
伊福部昭 : オーケストラとマリンバのためのラウダ・コンチェルタータ (マリンバ : 安倍圭子)
なるほど、日本の土俗的なリズムを使った曲を多く書いた伊福部昭 (1914 - 2006) の音楽は、まさに踊りの音楽の恰好の例である。フランスをはじめ世界各国で開かれているラ・フォル・ジュルネであるが、日本での開催では日本ならではの曲を聴く意義が大きい。また、このブログであまり関連記事を書けていないが、私は伊福部音楽のかなりのファンで、CD もわんさか持っているのである。
そして演奏された音楽は実に力に満ちて説得のある、かつクリアな音質のもので、最高の伊福部音楽の演奏であったのではないだろうか。井上の指揮はまさに、自らが踊っているようなもの (笑)。この人はもともとバレエダンサーであったので、昔から身振りが派手ではあったが、最近の彼は、その身振りに合うだけの素晴らしい音が鳴っている点、毎回感服するのである。実は今調べてみて分かったことには、この「日本組曲」の管弦楽編曲版は 1991年に作られていて、それを初演したのが、今回と同じ井上道義と新日本フィルであったのだ!! なるほど、井上はそのような言い方はしなかったものの、このコンビとしてはやはり思い入れの深い曲であったのだ。聴衆には若い人もいたので、我々の世代とは異なる耳で、伊福部音楽を聴いて行って欲しいと思うが、そのためにはこのような演奏に数多く触れて欲しいものだと思う。
さて、2曲目に演奏されたのは、マリンバ奏者として長らく世界でもトップを走り続ける安倍圭子が登場し、彼女の委嘱によって書かれた伊福部の「ラウダ・コンチェルタータ」(1976年) である。ここでも舞台転換の間に井上が出て来て説明することには、安倍より前にマリンバがオケの前で独奏を弾くようなことはなかったが、彼女の功績で沢山のマリンバのための曲が書かれた。弟子の数は既に、5000人や 1万人でない、大変な数だろう。既に 80歳だが、男の 80 よりも女の 80 の方が元気なのだと発言して会場を笑わせた。それから、一度袖に引っ込んでからまた出て来て、ひとつ言い忘れたが、安倍さんは今回アイヌの恰好で出てくるが、これは、北海道出身の伊福部の音楽がアイヌの文化の影響を濃く受けているからだと説明した。もちろん私は安倍の実績を知っているし、以前にもやはりこの曲を井上の指揮をバックに演奏したのを聴いたことがあるが、80歳と聞いてびっくりだ。
これもダンスの一形態。何よりも、聴き終えて満足そうに会場を出る人たちの顔に、通常のコンサートではあまり巡り合うことのない高揚感があった。ラ・フォル・ジュルネ、今年も大盛況なのである。