ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2017 パスカル・ロフェ指揮 フランス国立ロワール管 2017年 5月 5日 東京国際フォーラム ホールA

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東京有楽町にある東京国際フォーラムを舞台に 3日間に亘って繰り広げられるクラシック音楽の祭典、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンの 2日目。数々のコンサートの中から私は、3つの海外オーケストラの公演を選んで聴きに行くこととした。いずれも会場は A ホール。音楽祭に使われる 6つのホールのうち最大で、実に 5,008の客席を持つ。それぞれにかなりの入りであり、特に最初にご紹介するこのロワール管弦楽団の演奏会 (14:15 開演、コンサート No. 213) は、見たところほぼ満員の大盛況だ。会場は満 3歳以上なら入場可であり、確かに、かなり小さいお子さんを連れた人の姿もそこここで見られた。だが、客席は非常に整然としており、皆静かに音楽に耳を傾けていた。これはなかなか日本以外の国にはない聴衆マナーであろうと思われる。

さて、このコンサートで演奏したのは、フランス国立ロワール管弦楽団。指揮は、2014年からこのオケの音楽監督を務めるフランス人のパスカル・ロフェ。フランスは従来、日本以上に経済も文化も中央集権主義、つまりはなんでもかんでも首都に集中しているという評価になっており、国内ではそれがいけないという論調があるとは、もう随分以前に耳にした話。音楽に関しては、パリの名門オケもそれぞれに浮沈があり、すべてが盤石というわけではない状況である一方、地方都市ではなんと言ってもリヨンは素晴らしいオペラハウスとオーケストラを持ち、トゥールーズも過去 20年ほどで成長著しい。それ以外にも、ストラスブールだとかリルとかボルドー (アキテーヌ) いった都市のオケも、最新状況は知らないが、かつてはそれなりの頻度で活動を耳にした。そんな中、ロワールのオケとは? 私の理解では、ロワールという都市はなく、それは地方の名前であって、古城めぐりで有名だ。いつかは行ってみたいシャンボール城。
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実はこのオケ、ペイ・ド・ラ・ロワール (Pays de la Loire) という地域名を関しており、その本拠地は、ナントとアンジェ。ナントがこの地方最大の都市であり、そ、そして、な、ナント、この街こそが、ルネ・マルタンという発起人が 1995年にこのラ・フォル・ジュルネ音楽祭を起こした街なのである。そう、なんのことはない、この国立ロワール管弦楽団は、この音楽祭のお膝元のオケであったのだ。そういえば以前、オランダの名匠で、東京交響楽団の前音楽監督であるユベール・スダーンが以前このロワール管の音楽監督で、そのコンビのフランス音楽の CD を 2枚ほど聴いたことがあって、なかなかよかった記憶が甦ってきた。

そして現在の音楽監督のロフェは、1960年生まれのフランス人。1988年のブザンソン指揮者コンクール (佐渡裕優勝の前年) 2位で、その後はピエール・ブーレーズが組織した現代音楽専門楽団、アンサンブル・アンテルコンタンポランで長らく指揮をした経歴を持つ。だがそのようなイメージとは裏腹に、気難しそうには見えないし、今回も以下の写真のような恰好で (つまり、男性楽員は全員ネクタイを締めて演奏したのに、指揮者だけはノータイで) 指揮した。その指揮ぶりは晦渋さのない非常にストレートなもの。
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今年のラ・フォル・ジュルネのテーマはダンスであるので、何かしら踊りに関係のある曲が選ばれているが、このコンサートはまた、なんとも親しみやすくてポピュラーな曲を揃えてきたものだ。
 デュカス : 交響詩「魔法使いの弟子」
 サン = サーンス : 死の舞踏作品40
 ラヴェル : ボレロ

それぞれの曲のイメージを並べてみよう。
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ボレロだけは CD のジャケット (私の好きなクラウディオ・アバド指揮ロンドン響の演奏) になってしまったが、なるほどそれぞれにダンスと関係していますねぇ (笑)。実際これはなかなかよくできたプログラムで、すべてフランス音楽で固めており、かつそのヴァラエティもなかなかだ。私はどの曲も長く親しんでいるし、どれも大好きだ。フランス音楽らしい、冴えた音を粋にまとめた洗練された演奏で聴きたい。そして今回のロフェとロワール管の演奏、その期待に見事に応えてくれ、いずれも大変楽しめる演奏になったのである。例えば「魔法使いの弟子」でほうきが呪文によって動き出すあたりのとぼけた味わいと、そのあとのシャレにならない大騒動の対比。「死の舞踏」での骸骨たちの骨の軋みを表す木琴のクリアな響きと、緩やかながら楽し気な低音部の動き。ボレロでの各楽器の (例えばコントラファゴットの) 余裕のある歌い方。それぞれに異なる踊りを粋に演出してくれた。この大きなホールだから、多分多少 PA は使っているのだろうが、私は 1階の比較的前の方で聴けたので、音響的にも不足はないし、左右に大きな画面が出るので、奏者の表情もつぶさに見ることができて、これも実に楽しい。あ、そういえば、女性コンサートマスターは東洋人であったが、調べたところパク・チユン (Park Ji Yoon) という韓国人のようだ。大変素晴らしいつややかなソロであった。ちなみに、同姓同名の女優もいるようだが、別人です。
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聴くたびに鳥肌立つボレロの最終和音を聴いて、私は早々にホールを退出してしまったのだが、その後館内放送で、そのボレロのラスト 1分くらいが突然また始まったのが聞こえたので、恐らくは、聴衆の鳴りやまぬ拍手に応えてアンコールを演奏したものだろう。惜しいことをした。だが、あの熱狂の終結部は未だに耳に残っているのである。あー、いつの日かロワールで古城めぐりをしながら、地元ナントでこのオケを聴く日がくることを夢に見るのである。

by yokohama7474 | 2017-05-05 23:28 | 音楽 (Live) | Comments(0)
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