ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2017 ドミトリー・リス指揮 ウラル・フィル 2017年 5月 5日 東京国際フォーラム ホールA

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この日 2つめのラ・フォル・ジュルネのコンサート、登場したのはこの音楽祭の常連、ドミトリー・リス指揮のウラル・フィル (16:15 開演、コンサート No.214)。ロシア人の指揮者とオケのコンビであるが、前の記事でロワール管弦楽団がどこに所在するかを確認したと同様、ここではまず、このウラル・フィルがどこに本拠地を置いているのかの確認から始めたい。ウラルというからには、あのウラル山脈であろう。そう、このオケの本拠地は、ウラル山脈の東側、エカテリンブルクという都市。さて、どの辺にあるのだろうか。普段使うことはまずない大判の世界地図 (アトラス) を引っ張り出してきて、広大なロシアの西の数分の一のあたりを撮影してみた。ちょっと分かりにくいが、赤い矢印の先が首都モスクワ、青い矢印が件のエカテリンブルクである。距離にして 1,500km弱。東京からだと那覇のちょっと手前くらいのイメージか。
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実は上の地図に、エカテリンブルクからウラル山脈を挟んだ反対側に、小さく黄色い矢印も入っているが、それは何かというと、ウファという街の位置を示している。なぜそこを示したかというと、私が一度出張で行ったことがあるからだ (笑)。確か、「地球の歩き方」にも載っていない街だったので、そんなところに滞在している日本人は私だけだろうと思ったら、ホテルでやはり出張中の日本人を見かけてびっくりしたのだが、まあそれはこの際どうでもよい。モスクワから飛行機で 2時間半くらいかと思うが、実は時差が 2時間あるのである。もちろんロシアでは、飛び地のカリーンングラードを含めると、実に国内で最大 10時間の時差があるという、およそ日本では想像もできない制度になっているわけだが、私のビジネス相手のウファの人は、その時差がなんとも不便であると嘆いていたものである。エカテリンブルクも同じタイムゾーンである。

ともあれこのオケの本拠地エカテリンブルクは、ピョートル 1世の妻エカテリーナ 1世 (あの有名な 2世とは別人) に因んで名づけられた街で、僻地にある小さな街かと思いきや、なんと人口約 130万、ロシア第 5の大都会なのである。
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この街のオーケストラ、ウラル・フィルがラ・フォル・ジュルネでこれほど活躍している理由は知らないが、実はこのオケ、2002年に始まったラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンよりも早く初来日を果たしているのである。私はその 1996年の初来日時に聴きに行ったのだが、その理由は、プログラムが大変意欲的であったからだ。まず、これが当時のチラシ。「ロシアから、幻のオーケストラ、初来日!」とあって、また、「今や、モスクワ、サンクトペテルブルクのメジャーを越えた!」とまで喧伝されている。
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私が聴きに行った 10月24日のコンサート、また、聴きには行けなかったがやはり大変興味を惹かれた 10月25日のコンサートの曲目は以下の通り。その意欲的なこと、分かる人には分かるだろう。
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現在の音楽監督ドミトリー・リスは、実はこの初来日の前年、1995年からその地位にある。世界で派手な活躍をするようなタイプとは少し異なり、カリスマ性はあまりないと思うが、その代わり、非常に安定した指揮ぶりで、このオケの成長に大きな貢献があったことは間違いないだろう。
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そんなリスとウラル・フィルの演奏会は、今回のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンでは実に 7回催され、その中には、これぞダンス音楽の定番、チャイコフスキーやショスタコーヴィチ、ハチャトゥリアンのバレエ音楽もあれば、ベートーヴェンの 7番、コンチェルトの伴奏など多彩な曲目が含まれるが、私の選んだコンサートの曲目は以下の通り。
 グリンカ : 幻想的ワルツ ロ短調 (管弦楽版)
 ラフマニノフ : 交響的舞曲作品 45

なるほどロシア物の舞曲だが、少しばかり変化球だ。特に、グリンカの曲は珍曲である。ロシア音楽の父と称えられるミハイル・グリンカ (1804 - 1857) は、一般には、一気呵成に駆け抜ける名曲「ルスランとリュドミラ」序曲によってのみ (と言って悪ければ、ほかに数曲は挙げることはできるが) 知られるが、この幻想的ワルツは、もともとピアノ曲で、1839年に作曲、管弦楽への編曲は晩年の 1856年に行っている。聴いてみると確かに緩やかなワルツで、この舞曲特有のどこか夢見るような雰囲気がなかなかよい。リスとウラル・フィルは肩の力の抜けた、しかし非常に洗練された音色でこの佳曲を演奏した。グリンカはこんないかつい人だったようだが、その内面はロマンチストであったのであろう。
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メインのラフマニノフは、この作曲家最後の作品。私は以前もこのブログに少し書いたかと思うが、正直なところ、どうもこの作曲家とのつきあい方に未だに確信が持てずにいる。69歳まで生きたので、さほど短い命ではなかったものの、作品番号 45が最後の作品ということは、寡作家だったというべきか。もちろん、ピアニストとしての活動が忙しかったり、精神的に参ってしまうことも何度かあったようなので、この作品数が多いか少ないかは一概に言うことはできないが、交響曲第 2番やピアノ協奏曲第 2番や、パガニーニの主題による変奏曲の第 18変奏のような、誰が聴いても天下の名曲というものもあるが、それら以外の彼の曲に、感動のあまり心が引き裂かれるという経験はあまりない。その点、この交響的舞曲は、私にとってはマゼールとベルリン・フィルの録音で学生時代に馴染んでから既に長い間、かなり親しい曲ではある。だが最近、この曲を聴いても以前ほどワクワクしないのはなぜであろうか。ひとつには、意外と演奏が難しいのかもしれない。今回のリスとウラル・フィルの誠実な演奏はもちろん評価すべき内容だとは思ったが、私個人として、この曲に聴かれる不定形の不安や、ある種の諦念というものに、心から共感する感覚が今は少ないのかもしれない。さらに強烈な力を持った音楽を聴きたいと思ってしまうことは否めず、そうであればこの作曲家の場合は、やはりピアノ曲を坦懐に聴く方がよいのかな、と思う次第。ともあれ、演奏者の皆さんはお疲れさまでした。
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既に 20年以上のコンビとなるこの指揮者とオケが、今後ますます活躍してくれることを期待したい。今回のプログラムを眺めながら、このコンビの 7回の演奏会のうち、本当はベートーヴェン 7番を聴きに行くべきだったかなぁと思っている (ちょうど私が、既に記事でご紹介した「ホンクリ・フェス 2017」に行っていた時間帯のコンサートだったので、どのみち果たせなかったのだが)。まあ、来年以降も聴く機会があると思うので楽しみにしているが、45分完結のこの音楽祭ではなく、通常の来日公演で、例えばマーラーなどやってくれれば、喜んで聴きに行きますよ!!

by yokohama7474 | 2017-05-06 01:03 | 音楽 (Live) | Comments(0)
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