東京都 青梅・奥多摩 その 2 鳩ノ巣渓谷、高尾山

GW 中のある日、私と家人は奥多摩の鳩ノ巣溪谷に一泊することとした。私にとっては、学生時代に一度仲間と泊まったことがある場所だが、ホテルは見違えるようにきれいになっているし、かなり急な流れの溪谷の水の清々しさは相変わらずだ。驚くべきことに、ここも東京都。都会の垢を落としに来るには最適の場所であると、お薦めしておこう。吊り橋の向うの巨大な岩の上に小さな祠が見える。これは水神様と呼ばれていて、この森に二羽の鳩が巣を作って仲睦まじく暮らしていたのが、鳩ノ巣溪谷の名前の由来だとか。
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その翌日向かうこととしたのは、八王子市にある高尾山だ。ミシュランのガイドで星がついたとのことで、最近では外国人の訪問も多く、非常にメジャーな観光地になっているが、ここは古くからの修験道の聖地。天狗が住むという、標高 599mの神秘の山である。実は奥多摩から高尾山に向かうには、途中で青梅市街を抜けることになる。この日はちょうど青梅大祭で山車の出る日であり、前日はカバーをかぶっていた山車の数々も、人々に引かれて繰り出している。これらは車の中から撮影したものだが、電線を通り抜けるのに一苦労だし、そのおかげでバスも発車できないし、ましてや一般の車の通行においてをや (笑)。だが、人々の祭りにかける意気込気が伝わって来るではないか。せっかくなので、午前中に高尾山を観光して、昼食を取ったあとに青梅に戻って来て、祭りを見たいと考えたのである。いやー、祭りってワクワクしますねぇ。
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さて、高尾山である。幼少の頃に親戚と出かけたことがあるような気もするが、記憶が定かではない。いずれにせよ、大人になってからは初めての訪問なのだ。なんとも楽しみなのである。ここにある寺院の名前は、高尾山薬王院。真言宗のお寺だ。先日の御嶽山もそうであったが、ここもケーブルカーで山頂に登って行く必要あるのであるが、ここのケーブルカーの駅は御嶽山よりも規模が大きい。
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なんでもここのケーブルカーの勾配は 31度18分で、日本一であるとか。それは大変に興味深いと思ったのだが、朝から既に遠足の子供たちや観光客で賑わっている。そのときふと見ると、ケーブルカー以外にリフトもある。もちろんリフトの場合は外気に触れるので、よりワイルドである。夫婦で意気投合し、リフトに乗ることにした。途中で二度ほどぐぐーっと勾配が上がる構造であり、これは楽しい。
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途中でこんな注意書きが。外人用に英語表記もあるが、うーん。"Don't Shaking" って、この英語、間違っていませんか? (笑) まぁ、言いたいことは通じるとは思うものの。
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頂上駅からお寺まで、ブラブラ歩いて 20分ほどであったろうか。お気楽な我が家は普段着での訪問であったが、麓から歩いて来る人たちはももちろん、ケーブルカーやリフトを利用する人たちも、登山の恰好をしている場合が多い。実際にここは立派な山なのである。寺からさらに登れば山頂に辿り着くが、今回は寺までということにして、歩き始めた。
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都心から 50kmくらいだと思うが、このように見晴るかすと、本当に関東平野はだだっ広いなという感じがする。
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参道の左右には様々な人から寄進された童子像が沢山立っていて、人々の往来を見守ってくれている。また、途中には、根がウネウネと湾曲していることからタコ杉と呼ばれる巨木があったり、天狗の腰かけ杉もあって、これだけ多くの観光客の集まる場所でありながら、古くからの霊場の神秘的な雰囲気を未だに充分に保っているのである。
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そういえば、先般 NHK の「ブラタモリ」で高尾山を採り上げた際、この地は針葉樹林と広葉樹林が隣り合っていて、森の明るさが違うと説明していた。あ、本当にここは、左側が針葉樹林、右側が広葉樹林になっている!!
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このような門を過ぎると、右側にはずらっと寄進者の名前が記された木の札が並んでいる。皆さんが寄進されているのは、杉の苗であるようだ。この高尾山の自然は、篤志家の方々によって守られているのだということが分かって興味深い。
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そしてズラリと並んだ寄進者の札の列の最後、最高額の寄進者の皆さんの札がこれだ。
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おおっと、京王電鉄とケーブルカー会社の次に来ているのは、あのサブちゃんではないか。八王子在住であったとは。実はそのことは、寺の境内に辿り着き、四天王門をくぐったすぐ左手で再確認できる。そこには彼の歌声が流れていて、何かと思うと、サブちゃんの手形に手を置くと、その名も「高尾山」という歌が流れ始めるという仕組み。古来より霊場というものは、このような世俗的要素との併存をしてきたもの。天狗も、演歌を唸って、あははと楽しそうに笑っているのではないだろうか。
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と思うと、ちょうどこの場所の向かいには、二体の天狗像が。この寺の敷地内のあちこちで出会うこととなる、大天狗 (鼻の長い方) と小天狗 (くちばしのある方) のコンビだ。この二体は常に阿吽にもなっている。いかにも高尾山の雰囲気満点だ。
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この高尾山は未だに古来の神仏混交の色を強く残していて、実はメインの建物として、本堂と本社の 2つのお堂があるのである。これが本堂。明治期のもので文化財指定はないが、さすが霊場薬王院の本堂。堂々たる佇まいであり、ここでも大天狗、小天狗の巨大な面が左右で絶大な存在感を誇っている。尚、この本堂内には、秘仏・本尊薬師如来の厨子を囲んで、異形の飯縄 (いづな) 大権現像などがずらりと並んでいて壮観なのであるが、祈祷を受けないと中に入れない。私はまた次回の楽しみとして取っておくことにした。
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そしてこちらが、本堂よりさらに上がった場所にある本社。つまりこれは神社の本殿である。江戸時代の建造物で、東京都の指定文化財。このお堂では飯縄権現が本尊、いやご神体として祀られているため、飯縄権現堂とも呼ばれている。華やかな装飾が美しく、細部を見ていると飽きないのである。そう言えば、先般訪れた久能山東照宮や静岡浅間神社もそうだったし、上野の東照宮もそうだが、江戸時代の装飾的な神社建築は、日光以外にも結構いろいろあるのだ。日本人の美意識には、わび・さび (東京国立博物館で開催中の「茶の湯」展で先日満喫したばかり) とは全く対照的な、このような要素もあることを、再認識する。
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さて、このように念願の高尾山薬王院詣でを済ませ、帰りはケーブルカーに乗ってみることとした。なるほど、日本一の急勾配、これもなかなか楽しい見どころである。
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さて、文化ブログとしての高尾山のご紹介はここまでなのであるが、この日ランチを取った場所が忘れられないので、ここでご紹介しておく。圏央道の高尾山インターからほど近いところにある、うかい鳥山という、いろり炭火焼レストラン。
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私がここを知ったのは、絶景を楽しむことができるレストランを紹介した本であったのだが、うかいと言えば、東京にいろいろな系列レストランがある。東京タワーのふもとにあるとうふ屋うかいは外人接待の定番だし、銀座のうかい亭では最高の鉄板焼きを食べることができる。その他にも多くのレストランを展開しているうかいであるが、その発祥の地がここ、うかい鳥山らしい。いやそれにしても、行ってみて驚いた。まず駐車場の横にはこのように巨大な合掌造りの建物があって壮観である。この中でも食事ができるようだ。
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総合受付を通って敷地内に入ると、多くの風情ある建物が点在し、それぞれ食事をしている人たちがいる。また広大な庭園の、凝っていること!! この維持には相当な労力と金銭を要するだろう。苔むした水車も動いているし、季節外れの紅葉も実に美しく、また奥まで進むと、様々な植物を栽培しているのだが、そこにはまた道祖神なども置いてあって、日本人の心に迫ってくるのである。
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今回は GW ということもあり、個室ではなく、大き目の部屋での相席での食事となったが、それでもスペースは充分で、これを「相席」と呼ぶ必要はないだろう (笑)。いやその風情のあること。なんでもこの建物、百五十年前に建てられた五箇山の合掌造りを移築してきたものらしい。席はこんな感じ。
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もちろん頂いた料理も大変結構だった。このブログは文化を対象にしているものであるからして、グルメブログとは一線を画し、食事のご紹介はしないので悪しからず。実際、車だったので私は (家人がどうであったかは触れないこととして 笑) ノンアルコールビールしか飲むことができなかったのだが、それでもなんとものんびりしてしまい、まるで酔っているかのような気分になってしまった。そんなことで、本当なら青梅大祭を見に行きたいと思っていたのだが、青梅駅近辺は車が通行止めになっているということでもあり、この小旅行には充分満足したので、今回は昼食後まっすぐ帰宅することとした。青梅の祭りもできればまたの機会に楽しみたいし、このうかい鳥山にも、また来てみたい。次回は電車で、思う存分アルコールを摂取することを、堅く心に誓ったのである!! ま、人生、そんな誓いもたまにはあってよいではないか。

案・近・短の旅、あとまだいくつかネタはあるので、折をみてアップして行きます。またよろしくお願いします。

by yokohama7474 | 2017-05-29 00:20 | 美術・旅行 | Comments(2)
Commented by ルイ・コスタ at 2017-05-31 13:10 x
ここ半年ほど楽しく拝読してます。初めてコメントします。気取りもてらいもない的確かつ勉強になる名文コラムですね。私はクラシックファン歴30年の47歳男です。クラシックのコラムを特に興味深く読ませてもらっています。実はロック等も大変好きなのですが、2016年10月、宮崎市にてブロムシュテット、バンベルク響を聴いて以来、それまで敬遠していたブルックナーにはまり、その他も含めオーケストラへの興味を以前にも増して持つようになりました。地方(大分市)在住のため生の演奏に触れる機械が少なく残念ですが。(それでも宮崎と福岡で半年に2回もブルックナーの7番を聴けましたが)これからも東京他の演奏会の名レポートを楽しみにしてます。
Commented by yokohama7474 at 2017-05-31 22:31
> ルイ・コスタさん
コメント、どうもありがとうございます!! 名文か否かはともかくとして、確かに、いつも気取りもてらいもなく徒然に書いておりますので、そのように言って頂くと、嬉しいような照れくさいような・・・(笑)。地方に在住されているクラシック・ファンの方に、東京の活況ぶりをお伝えするのもこのブログのひとつの役目であると思っておりますので、また是非お立ち寄り下さい。
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