ジョン・ウィック : チャプター 2 (チャド・スタエルスキ監督 / 原題 : John Wick : Chapter 2)

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キアヌ・リーヴスという役者をどのように評価しようか。1994年の「スピード」で大ブレイクしたとき、彼は 30歳。決して若すぎはしないが、それでも未だ若手俳優であったわけである。その後の代表作はなんと言っても「マトリックス」シリーズ。その 3部作の最後の作品は、2003年の制作だ。それから既に 14年。彼のキャリアがその後さらなる高みに達したか否かを考えると、かならずしもそうではないというのが大方の意見ではないか。例えば年下のレオナルド・ディ・カプリオやマット・デイモンと比べても、彼のハリウッドにおけるキャリアはそれほど注目すべき作品を含んでいないように思う。そして最近は、例えばこのブログで採り上げた怪作「ネオン・デイモン」のように、なんだかだらしない役柄も演じていて、もはや昔年のキアヌ・リーヴスの精悍さは望めないのかと思ったものである。彼の風貌はハリウッド俳優としてはかなり個性的であるが、それもそのはず、レバノンに生を受けた彼は、ハワイ系中国人の父と英国人の母の血をひいているのである。キアヌという聞き慣れないファーストネームは、ハワイの言葉で「山からの涼風」または「絶えず神の意識に集中するもの」という意味らしい。この 2つのフレーズが 1つの言葉で表現されることから、ハワイの人たちが自然に対する畏怖の念を持っていることが分かるというものである。

そんな複雑な血を持つキアヌの新作がこれである。ジョン・ウィックとは、キアヌ演じるところの凄腕の殺し屋。この映画はその殺し屋を主人公にしたシリーズ物の第 2作。1作目は 2014年の公開であるが、私はそれを見ていない。この作品はその 1作目に続くストーリーなのであるが、これ単独で楽しめるようになっている。なんでも前作では、亡くなった妻が残して行った子犬を殺されることに怒った主人公ジョンが、殺し屋からの引退を撤回して復讐に走る物語らしい。その子犬の犬種はビーグル。ここで私の心はグッと来るのであるが、その理由は、我が家でも一昨年 10月まで 18年近く飼っていた犬がビーグルであったからだ。ビーグルはとんでもないいたずら者であるがゆえに、かかった手間の分、愛情が増すのである。これが前作の中のシーン。ビーグル好きとしては、もうたまらん!! こんな子犬を殺されれば、それはもうジョン・ウィックならずとも復讐の鬼と化すであろう。
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今回のシリーズ 2作目でも、ジョン・ウィックは犬を飼っている。だが犬種はかなり違っていて、今回はアメリカン・ピット・ブルテリア。ネタバレを避けるのがこのブログのポリシーであるが、犬好きの方のために明言すると、安心して下さい、今回は犬は死にません。これはほぼラストのシーン。
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どうやらここでジョンと愛犬は走っているようであるが、それもそのはず。ジョンが置かれることになる立場は、こういうものであるから、もう逃げるしかないのである。
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誤解なきよう、このようなシーンは実際の映画には出てこない。これはあくまでもイメージであり、世界中の殺し屋から命を狙われていることを表現している。いやそれにしてもこの映画においてキアヌ・リーヴスは、それはもう殺すわ殺すわ、映画の大半が彼による殺しのシーンであり、もしかすると、ハリウッド映画における単独での殺人件数において、ギネスものではないか。その殺しっぷりは、まさにちぎっては投げちぎっては投げ (笑)。プログラムによると、一対一の戦いにおいてかかせないカンフーに加え、格闘と銃撃をミックスさせた「ガン・フー」、自動車を武器にする「カー・フー」、そしてナイフを使った「ナイフー」が観客を圧倒する。そんなことができる役者は誰だ。ゲス・フー。
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まあ正直、このような映画を傑作として称揚するのは気がひける。いかに自分の身を守るためとはいえ、ここまで殺しまくることはないのではないか、と思うのが通常人の感覚であろう。だから我々はこの映画を反面教師として、いかなる場合にも気安く他人の命を奪ってはいけないのだということを、胆に銘じよう。私が少なからず気になるのは、ジョン・ウィックは自身殺し屋であるゆえに、迫り来る殺し屋たちを退治し続けるのであるが、ではその行きつく先に何か心が安らぐ世界があるかというと、残念ながらそれは全くないということなのである。ひと昔前なら、個人として闘うヒーローの姿には、最後にはカタルシスがあるのが通例であったが、この映画には徹頭徹尾カタルシスがない。もちろん、犬の存在によって多少の人間らしさは表現されているとはいえ、この映画で展開されるあまりにも多くの殺人の前では、それも虚しい。なので私はこの映画を多くの人に広くお薦めすることはしない。だが、例えば、ひとりの人間が聴きに瀕したときに、いかに知恵と技術と体力を使ってその危機に対処するかという観点では、見る人の人生にとって有意義な映画であるということはできよう。説得力ないか (笑)。
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主役のキアヌ・リーヴス以外にも何人も優れた俳優が出ている。例えばローレンス・フィッシュバーン。考えてみれば、彼とキアヌは「マトリックス」での共演仲間なのである。
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それから、口がきけない女性の殺し屋、アレスを演じるルビー・ローズ。このようにボーイッシュなカッコよさを持つ、もともとはモデルなのであるが、そう言えばこのブログでも採り上げた「バイオハザード・ザ・ファイナル」にも出ていた。カミングアウトしたレズビアンで、この映画では服装に隠れているが、全身タトゥーだらけだという。いやいや、やはりこの映画は万人にはお薦めしませんよ (笑)。
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この映画の監督チャド・スタエルスキは、大変珍しいことに、スタントマン出身であるらしく、前作「ジョン・ウィック」で監督デビューを飾っている。実は「マトリックス」でキアヌ・リーヴスのスタントマンを務めて注目されたらしい。この映画の演出がとびきり素晴らしいと言う気はないが、少なくともノン・ストップ・アクションのツボを心得た演出とは言えるだろう。これは、この映画のプロモーションでキアヌとともに来日した監督。
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それから、この映画で興味を惹くのはそのロケ地で、ローマではカラカラ浴場を使っている。主要な舞台のもうひとつはニューヨークであるが、セントラルパークも面白いのだが、ちょっと見慣れない風景が出て来る。ロケ地は明らかにニューヨークの地下鉄なのだが、あの古くて汚くて臭い地下鉄に、こんなモダンで清潔な駅があるのだ。
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私は知らなかったのだが、これは実はワールド・トレード・センター駅。なるほど、同時多発テロのあと、グラウンド・ゼロ (爆心地) とも呼ばれた場所で、以前は地下鉄もその手前で長らくストップしていたが、今や新しいビルも建ち、このような駅ができているわけだ。殺し屋ジョン・ウィックは、いかなる場所でも、その高い殺しの能力を発揮するのである。

総合的に見て、必見の映画とは思えないものの、主人公の個性が明確に表れているという点では評価できるだろう。カンフー、ガンフー、カーフー、ナイフー。その威力は、いつか来ると言われている南海トラフー並であろうか。

by yokohama7474 | 2017-08-03 23:56 | 映画 | Comments(0)
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