東京喰種 トーキョーグール (萩原健太郎監督)

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またしてもマンガを原作とする邦画である。昨今流行りのマンガを一切知らない私としては、原作がマンガであるか否かを問わず、映画として面白かったか否かだけしか感想を述べることができない。だからこのブログをご覧になる方で、この映画の原作に一家言ある方の場合、私がここでボソボソ呟くことについて、「コイツ、全然分かってねーなー」と思われるかもしれない。その前提で以下、感想を徒然に記そうと思う。

まず、この映画を先週見てから、試しに Wikipedia で「東京喰種」という項目を見てみると、その説明の、実に詳細に亘っていること。長さも誠に驚嘆するほどのもので、例えばバッハやモーツァルトやベートーヴェンのどんな名曲に関しても、こんなに長い Wiki の記事はないであろう。端的な話、日本国民を無作為に選別して、ベートーヴェンの交響曲第 5番を少しでも聴いたことある人と、「東京喰種」のマンガを少しでも読んだ人の人数を比べると、圧倒的に後者が多いのであろうと思う。まあそんなものであろう。「東京喰種」とは、そんなに大人気のマンガであるようだ。
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そう、この映画においては、もっぱら人間を食糧とする奇怪な怪物どもが喰種 (グール) と呼ばれ、ソイツらが人間に混じって生活しているところ、国家権力はそれを駆除するために血道をあげる。さて、追い込まれた喰種どもは・・・。という話。果たして正義はどちらにあるのか、人肉を喰らうという宿命を持つ喰種には生きる権利がないのか、という観点で進んで行く話の流れは、結構面白いと言ってよいと思う。だが、結構最近、やはりマンガを原作とした映画として、「寄生獣」の前後編があったではないか。人間世界に異形のものが紛れ込んで住んでいるという設定、本来はそこに属さない人間が、あるきっかけで板挟み状態となって苦しむこと、そして人間にはない触手のようなものをブンブン振り回すところもそっくりだ。もちろんここでは、「寄生獣」のような主人公の身近で味方になる存在は登場せず、主人公の肉親への愛も描かれず、それだけ仮借ないストーリーだとも言えるだろう。そう、「寄生獣」にあってここにないのは、ユーモアのセンスではなかろうか。登場人物たちは皆悩み、敵を憎み、ただその憎しみに身を委ねて敵対的になるか、または諦念に囚われてコソコソ生きる。そう言えばここでは、見ていてくすっと笑ってしまうようなユーモラスなシーンは、ほぼ皆無であったと言ってよいだろう。だがその一方で、身も世もない絶望感に囚われるかといえば、さにあらず。ここでは世界の終わりのような雰囲気は醸されておらず、焦点はあくまでも、特殊な生物である喰種たち個々人の悩みに絞られているせいだろう。上に原作マンガのキャラクターのイメージを掲載した主役のカネキは、この映画のイメージではこんな感じ。
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なるほど、この赤い左目とキバむき出しの仮面は、なかなか怖い。だがこの主人公、もともとは大変にナイーヴな青年であり、このような赤い片目を持つようになってからも、恐ろしい運命に全力で抗う。彼個人の思いには常に葛藤があり、時と場合によってはその正義心は熱く燃え上がるのである。演じるのは窪田正孝。私はあまりなじみがないが、最近テレビや映画で活躍しているようだ。この映画においては、正直なところ、すべてのシーンで素晴らしいとも思わないが、徐々に自分の正体と折り合いをつけようとするところや、クライマックスでの体当たりの熱演は見ごたえ充分。
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トーカという、単純なようでいてなかなか複雑なキャラクターを演じた清水富美加は、スキッとしていて、なかなかよい。
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それから、こんな人も。そう、元 Wink の相田翔子。Heart on Wave な感じがよく出ていた (?)。
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だが私が感心したのはなんと言ってもこの人。蒼井優である。登場シーンはほぼ前半に限られているが、これは見る価値ありである。本人もインタビューで「これまであまりやったことのないアクションを経験できて、とても楽しかったです。頑張れたのではないかと思います」と語っているが、いやいやその通り。頑張っていると私も思う。才能あふれる彼女にして、これは新境地であろう。何をどう頑張っているのかお見せできないのが残念だが (笑)。
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ここで喰種たちを追い詰める特殊警察のような組織、CGC (Commission of Counter Ghoul) の描き方は、ちょっとどうだろうか。そもそも喰種のような危険極まりない存在の捜査をこんな少人数で行い、しかも駆除の方法も一騎打ちという点、リアリティのない設定である。そして、彼らが喰種と一騎打ちで戦うときには、なぜか、拳銃等の通常の武器ではなく、喰種の持つ武器を転用したような触手用のものや、その加工品 (?) を使うのである。なになに、それを「クインケ」と呼ぶのですか? で、それは「金属質の素材『クインケ鋼』が用いられており、電気信号を送り込むと、喰種の赫包から赫子が出てくるように戦闘用の形態へと変わる」らしいのだけど、意味が分からん。そもそも「赫子」の読み方が分かりません。なになに、「かぐね」? だから知らないって (笑)。大泉洋が、残虐な CGC の捜査官を楽しそうに演じている。
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改めて思うのは、マンガを読んでいない人間にとっては入り口で疑問に思うことも幾つかあり、それは致し方ないのかもしれないが、単独の映画という観点からは、少し残念なような気もする。ストーリーから感じ取ることのできるメッセージは理解できるが、上記の通り、ユーモア感覚に乏しい一方で、絶望的な終末感もそれほど漂っていないので、見ていて心がわしづかみにされるような感動に巡り合うことはできなかった。演技の質においても、何人かの俳優には課題が残ったように思う。それから、映像自体の鮮明度にも時折不満が残ったことも事実。と書いていながら、ではそれほどつまらない映画かと問われれば、いやいや、それなりに面白いと答えるだろう。監督の萩原健太郎は、ロスの大学で映画を専攻し、これまで TV CM などを手掛けてきた人で、これが長編デビュー作。有名マンガが原作でやりにくかったこともあるのかもしれないと、勝手に考えてしまうが、また美的センスを発揮した作品を期待したい。

私がこの映画を見たのは先週であったが、劇場ではこんなものを配布していた。
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これは一体なんだろうと思って帰宅してから開けてみると、コースターだった。右下に "Sui Ishida" とあるので、原作者石田スイの手になるオリジナルデザインなのであろうか。うーん。こんな赤い目で見られると、喰種が好むというコーヒーも、だんだん人肉の味に思えてくるのではないかと思い、しまい込むことにした。「東京喰種」ファンの皆様、ごめんなさい。
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by yokohama7474 | 2017-08-22 22:23 | 映画 | Comments(0)
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