スパイダーマン : ホームカミング (ジョン・ワッツ監督 / 原題 : Spider-Man : Homecoming)

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昨年の 5月28日に記事を書いた「シビル・ウォー / キャプテン・アメリカ」において、マーヴェル社のヒーロー・キャラクターの集団であるアベンジャーズが内輪もめする中、「新人」として登場してキャプテン・アメリカの盾を奪ってしまうスパイダーマンに触れた。これには背景があって、もともとスパイダーマンもコミックにおいてはマーヴェル社のキャラクターであったようだが、映画の権利はソニー・ピクチャーズが持っていた。それが、この両社の協力によって、スパイダーマンがマーヴェルとキャラクターたちと共演することが可能になったわけである。そんなわけで、この作品は飽くまでもスパイダーマンが主役であるが、「シビル・ウォー / キャプテン・アメリカ」のストーリーと一部関連があるし、例のキャプテン・アメリカの盾を奪う回想シーンも出てくる。ちなみにそのシーン、アイアンマンを演じるロバート・ダウニー Jr. が、このように両手でおにぎり型🍙を作って、「アンダールース」と聞こえる言葉を叫ぶとスパイダーマンが出て来るのだが、その場面の字幕は「新人!!」となっている。
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この言葉が分からなかったので調べてみたところ、"Underoos" とは子供用の下着メーカーであるようだ。このようなヒーロー物に特化しているのだろうか。ということはつまり、アイアンマンの表すおにぎり型は、パンツの上下逆さま状態を示しているのか? (笑)
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いずれにせよここから分かることは、既にアベンジャーズの中心的存在として活躍している実績のあるアイアンマンから見れば、スパイダーマンなどまだまだガキなのだということである。そしてこの映画のテーマはそこにある。

スパイダーマン単体の映画としてはこれが 6本目になるが、私はこれまでの 5本はすべて劇場で見てきた。最初の 3本はサム・ライミ監督、トビー・マグワイヤ主演。次の 2本は「アメージング・スパイダーマン」のタイトルを持ち、アンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンという、その後大出世するコンビを主役に据えていた。ひとつひとつの作品には長短あるかもしれないが、クイーンズとマンハッタンを舞台として強大な敵と戦うスパイダーマンの活躍、特にビルの合間での胸のすく跳躍と、その反動としての、正体を隠して戦う宿命や、愛する人たちを守り切れない絶望感に、これぞスパイダーマンというヒーローの特徴が明確であったと思う。さてその意味では、今回は新たなスパイダーマン像が描かれるのではないかという期待感がある。そして見終わった感想は、まさにその期待感の充足。これまでのファンにも受け入れられるように工夫しているとも思われ、なるほど作り手側の苦労が偲ばれるようにも思われる。真っ二つに裂けたフェリーを懸命に支えるスパイダーマン。
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極度のネタバレにならないように留意しながら、本作の特徴を思いつくまま列挙しよう。
・過去 5本における憧れの人、メリー・ジェーン・ワトソン (MJ) やグウェン・ステイシーは、今回出ていない。その代わりにスパイダーマン = ピーター・パーカーが憧れるのは、ちょっと肌の色の黒い美人の同級生である。その他、アジア系やヒスパニックが周囲の友人たちであるという設定に、米国のリアリティがある。
・これまでは、孤独なヒーローとしてその正体をひた隠しにして来たスパイダーマンが、ここでは最初から親友に正体がばれてしまっている。だがそのことにより、たったひとりで宙を飛んで敵に立ち向かうというワンパターンを越えたスケールの大きい仕掛けが可能になっている。
・ここに登場する敵役は、世界制覇をもくろむ悪党ではなく、ただビジネスとその結果としての金銭にしか興味のない男である。だが彼にはアイアンマンを憎む理由があり、その点で、アイマンマンの弟子筋という設定のスパイダーマンとの対決という必然性が存在する。
・その一方で、この敵役、鳥の怪物のような姿をしたヴァルチャーは、その人物像の設定に、最初のシリーズにおけるグリーン・ゴブリンを思わせる要素もある。むむ、ということはこの次の作品では、ヴァルチャーの子供がスパイダーマンに牙を剥くのであろうか?! もしそうなら、それこそ新機軸である!!
・ピーターのおばさんであるメイは、以前のお婆さんという設定ではなく、ここでは「シビル・ウォー / キャプテン・アメリカ」と同じく、アクティヴでセクシーな人として描かれている (女優も同じで、マリサ・トメイ)。
・スパイダーマンのピッタリしたスーツは、そんなものかと思って気にもかけていなかったが、ここではアイアンマン = トニー・スタークが設計したことになっていて、どのようにピッタリするのかの説明があり、また、スーツに仕込まれた AI が斬新だ。その一方、蜘蛛の糸を出すことと身軽であることがその身体能力のほとんどであるスパイダーマンは、スーツには過度に依拠していることはなく、いざとなれば生身にダボダボの服装でも戦えることが表されている。
・ニューヨークのような高層ビルが立ち並ぶ中ではなく、森の切れ目で広大な空き地になっている場所では、さすがのスパイダーマンもどこにも糸を飛ばせず、もはやなす術ないとばかりに地上を走る点が笑える。だが、走っている車になんとか飛び乗りさえすれば、不屈の追跡劇の再開は可能なのである。
・そして、最近そのような映画が多いのだが、これは絶対に飛行機の中で見ないこと。肝心のシーンがカットされて、ストーリーを追えなくなりますよ。
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そう、「シビル・ウォー」に続いてここでも主役を演じるのは、英国出身の若手、トム・ホランド。以前も書いたが、私がビジネスでお世話になったことのある英国人弁護士、ホランドさんの甥っ子なのである!! 彼にはこの役柄に適性があると思うし、「シビル・ウォー」のときには精悍さを見せるシーンがほとんどなかったのに対して今回は様々な顔を披露し、なかなかの成果を挙げている。彼は、人間味のあるキャラクターを演じて行ける役者であろうと思うので、この役に安住することなく挑戦して行って欲しいものだ。ホランドおじさんも期待していることだろうし (笑)。それにしてもこのワシントン・モニュメントのシーン、思わぬ展開で大変面白かった!!
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それから忘れてはならないのは、敵役を実に楽しそうに演じている、マイケル・キートンだ。
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マクドナルドをフランチャイズ化した伝説の実業家を生々しく演じた「ファウンダーズ」での見事な演技も記憶に新しいが、かつてのバットマン俳優は、「バードマン」の怪演を経て、ここでは本当に、妄想ではなく自身が化け物のような、鳥型の巨大な金属製スーツを着た悪者を演じているのである。こういう悪役が出てこないと映画は締まらないし、マイケル・キートンはこれからますます期待の俳優になってきた。それから、最後の方のシーンでは、「アイアンマン」絡みの女優が出て来るが、プログラムにもそのことは記載されていないので、あえて名前を出すのは控えよう。だが、そのほんの僅かな登場シーンにも関わらず、エンドタイトルでは確か 4人目に名前が出て来るという、ハリウッドの大女優である。最近あまり仕事をしていないように思うので、そろそろまた活発に働いてほしいと思う。

このようなビッグネームのシリーズ物で、巨額の予算を投じる作品であるから、監督は、恐らくは冥利に尽きる一方で、大変な緊張感を持って制作に臨んだことであろう。そんなプレッシャーの中、上記のような、なかなか気の利いた作品に仕立て上げたのは、1981年生まれのジョン・ワッツ。これが長編 3作目ということだから、今後も期待できる才能であるだろう。
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エンドタイトルの最後に、「スパイダーマンは帰ってくる」というメッセージが出るので、また新たなシリーズとして継続するのであろう。長く愛されてきたヒーローのキャラクターを使って、新機軸や世相を取り入れながら多くの人たちに支持されるような作品に仕上げることはなかなか簡単ではないだろうが、是非今後のシリーズに期待したい。マーヴェルのシリーズではまたほかにも、マイティ・ソーやブラックパンサーをそれぞれ主役にした映画の予告編を見ることができる。あまりキャラクターが多すぎると、複雑になりすぎるきらいがあるものの、現代人の生活における空想の必要性はますます増している。それゆえ、是非是非、今後もいろいろなヒーロー・キャラクターを楽しんでみたいと思っているのである。

by yokohama7474 | 2017-09-13 00:53 | 映画 | Comments(0)
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