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江戸の悪 太田記念美術館

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太田記念美術館は浮世絵専門美術館で、いろいろと面白い企画展が開かれる。確かつい先日までは、「広重と清親」をやっていたはずだが、知らない間に終わってしまい、今は「江戸の悪」という展覧会が開かれている。この展覧会、図録が作成されていないのは残念だが、浮世絵に描かれた盗賊・侠客・悪女・ストーカーといった題材で展示品が集められている。

面白いのは、今も昔も庶民は犯罪及びそれを犯した犯罪者に興味を持つということ。ただ、この展覧会で気づいたのは、江戸の人々が悪にやんやの喝采を送ったり眉をしかめたりしたのは、実際の犯罪そのものではなく、専らそれを脚色した歌舞伎を通してだったということである。世界史上稀に見る平和な時代に文化が爛熟し、人々は、芝居という仮想空間で、仮想の悪を存分に楽しんだのである。それは、現代のニュースで我々が見る、気の滅入るような悪の姿ではなく、浄化された悪の姿であったのだ。

そのような背景を考えると、展示品のほとんどが、文化の爛熟も極まった19世紀半ば以降のものであることが納得できる。一部、初代豊国や北斎による化政期 (19世紀初頭) の作品もあるものの、大半は三代豊国や、国芳からその弟子の芳年、芳幾 (むむ、このコンビは・・・そう、あの英名二十八衆句が多く展示されている!!) に下り、時代は明治までカバーする。以下、いくつか図版を紹介。

石川五右衛門。
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平清盛が熱病に侵され、今わの際に閻魔大王に睨まれるところ。
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安達が原の鬼婆。
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平和な時代は刺激を求めて悪が人気を博するもののようだ。さて、同じく平和な現代 (少なくとも日本では)、私たちの感覚は、健全に保たれているだろうか。

by yokohama7474 | 2015-06-08 00:56 | 美術・旅行