2015年 09月 12日
藤田美術館の至宝 国宝 曜変天目茶碗と日本の美 サントリー美術館
私はこれまで藤田美術館には、3度か 4度訪れており、そこで過去にこの曜変天目茶碗を確か 2度見ている。つい昨年の秋、創立 60周年記念で展示されたときにも見たばかりだ。それでも、今回東京で見ることができるとなると、当然足を運ばすにはいられない。申し遅れたが、この藤田美術館、年に春と秋の限られた期間しか開館しておらず、その時々で膨大な所蔵品の一部が公開されるというシステムだ。因みに、もうひとつの曜変天目茶碗を所蔵する静嘉堂美術館 (三菱のコレクション) も同様の形態を取っており、私はそこでも曜変天目を見たことがある。唯一、大徳寺龍光院だけが (ここはこの茶碗以外にも国宝建造物が幾つかあるのだが) 拝観拒絶の寺となっており、私の知る限り、門戸を開いたことはないようだ。
さて、この藤田美術館、数々の名品を所蔵しているにもかかわらず、なんとも残念なことがある。それは展示施設だ。このあたりは戦争の被害も大きく、藤田の屋敷の中で焼け残った蔵を展示場にしているという。中に入ってみると、そこは明らかに蔵そのもので、開館から 60年を経て、木製の展示ケースは古びてガラスもくたびれた感じであり、照明も、気の利かない昔の蛍光灯だ。格子のはまった窓は開け放たれ、そこを自然の風が通って、空調はあるのかないのか分からない。外の天気がよければ薄暗いというほどではないにせよ、最新の美術館の凝った展示方法や LED 照明に比べると、正直言ってなんとも残念な展示空間であることは否めない。図録に載っている藤田美術館の内部の様子は以下の通り。
会場では多くの国宝・重要文化財を見たが、今図録で数えてみると、この美術館の所蔵する国宝 9点はすべて展示されている!! 重要文化財は 30点だ。まさに藤田美術館の名品勢揃い。これは東洋美術ファンには必見の展覧会といえよう。ほかの展示品をいくつかご紹介する。鎌倉時代の名仏師、快慶作の地蔵菩薩立像。快慶には同様の美麗な地蔵や阿弥陀が多くあるが、いかにも快慶らしい端正な作りである。重要文化財。この像も、ガラスケースには入っているものの、照明にくっきりと浮かび上がり、前から横から後ろから、じっくりと鑑賞することができて嬉しい。