2015年 11月 22日
MOMAT コレクション 特集 : 藤田嗣治、全所蔵作品展示。 東京国立近代美術館
この展覧会、いかにも藤田らしい乳白色の裸婦や、組んずほぐれつする猫の絵もあるが、まず目を引くのが、藤田がパリで頭角を現す前夜、1918年の作品、「パリ風景」だ。
さて、戦争画である。藤田は戦争に従軍してまで戦争のリアリティを感得した稀有な画家だ。一連の戦争画を描いたことによって、戦後は国内で白い目で見られることが多くなり、どうやらその息苦しさを逃れるためにフランスに渡り、帰化したものであろうか。ではその 14点の戦争画を、一部であったりピンボケであったりするものの、私が図録から撮った写真で制作順にご覧頂こう。これは「南昌飛行場の焼打」 (1938 - 39) という作品の部分。
第二次大戦が終結してから既に 70年だというのに、東アジア地域では未だにその歴史が陰を落としている。今こそ我々は、せめて芸術の分野で第一級の才能がいかなる活動を行ったか、じっくりと見るべきであろう。過去を消すことはできない。だが一方で、消すことのできない過去があるからこそ、未来に思いを馳せることができる。藤田嗣治がいかなる思いを抱いて日本と向き合ったか、ここで詳細を述べることはしないが、何より彼の作品が様々なことを雄弁に物語っている。一人でも多くの方に、この藤田のメッセージを感得して頂きたい。