美術の専門教育は受けていないそうだが、20代前半から精神療法として絵を描き始めた。と、しらっと書いてしまったが、このようなオシャレで華やかな雰囲気の中に、精神を病む要素が一体どこにあったのだろうか。実は私ももともとそのあたりの知識はなく、ニキといえばナナという画一的なイメージを持っていたのであるが、先日 NHK の日曜美術館でこの展覧会の特集を見て、彼女が実父に性的迫害を受けたという事実を知った。そして実際にこの展覧会に足を運び、彼女の芸術の根源的な部分に、明らかに性的なオブセッション (強迫観念) があることを実感し、これまでの無知を恥じたのである。従って彼女の創作活動は、消えることのない憎しみと、悲惨な状況からの脱却という要素によって、女性という存在の社会との関わりをポジ、ネガ双方の点で呵責なく描き出し、そして浄化を求めてもだえ苦しむ自分の姿をさらけ出すということであったと知った。創作活動を始めてからの彼女の写真もいろいろあって、もちろん美人ではあるものの、そう思ってみれば、どこかに必ず影があるようにも見える。社会に向けて何か発信すべき言葉を見つけようとしているのだろうか。