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鎌倉からはじまった。Part 3 1951 - 1965 「鎌倉近代美術館」誕生 神奈川県立近代美術館

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鎌倉、鶴岡八幡宮の境内にある神奈川県立近代美術館。主として日本の近現代美術のコレクションとそのユニークな特別展で知られ、「カマキン」の愛称で親しまれて来た。そのカマキンが閉館することになったと聞いたのは昨年のことであったろうか。かつてここで見たあれこれの展覧会を懐かしく思い出すが、なんでも、神奈川県から貸与されている土地の期限が来るということらしい。この美術館は既に何年も前に葉山に新しい建物を開館していて、そちらで面白い展覧会もあれこれ開かれているので、美術館の活動はそちらで継続するものの、このカマキンの方は建物の老朽化が主要因で閉館されることになったものであろうか。大変淋しいことである。この美術館、設計はコルビジェの弟子である坂倉順三 (1901 - 1969)。
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この美術館の開館は、実に 1951年。まだ戦後 6年しか経っていないこの時期に、日本最初の近代美術館としてオープンしたわけである。その歴史的意義は計り知れない。上の看板にご注目。英語のみならず、フランス語とドイツ語で館名が記載されていて、当時における先進性を表している。そのカマキンの閉館を記念する展覧会のシリーズが昨年から開かれていて、今はその Part 3。私が行った日も、この美術館との別れを惜しむ人たちで混雑していた。今後永久になくなってしまう光景を写真に収めたのでご覧に入れよう。2016年 1月 9日。今月末で閉館するので、残り 23日というわけだ。
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また、前庭の屋外彫刻や、隣接する池の佇まいも、この美術館ならではだ。たまたま写っている子供たちすら、屋外彫刻の一部かとすら思えてくる (笑)。なおこの池は、鶴岡八幡宮の境内にある源氏池と平家池のうち、平家池なのだそうだ。
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中庭にはイサム・ノグチ (北大路魯山人の影響を受けて、当時の妻である山口淑子とともにこのあたりに工房を開いたらしい) の彫刻があり、また、今回特別公開として、以前学芸員室であった中 3階も公開されている。その狭い部屋は今では何もないガランとした空間で、説明のヴィデオが流れているが、印象的なのは、この部屋から、今は喫茶室「ピナコテカ」(絵画館という意味だろう) となっているスペースにある田中岑の「女の一生」という壁画 (1957年作) を見下ろすことができるということだ。この壁画や数々の彫刻は今後どうなるのだろう。
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この美術館の光景として誰もが忘れられないのは、平家池の反射である。先日の日曜美術館での特集でも、鶴田真由がこのゆらぎの写真を撮っていたが、まあ、ここに来れば誰でもそのような感興が沸こうというもの。
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それから、この美術館には、水の上の通路を渡って行く離れのような新館がある。池に面した壁が全面ガラス張りで非常に日当たりがよく、池からの反射もあるので、大変気持ちがよい場所だが、眩しすぎて、展覧会のときはよくブラインドが下がっていた。ところが、以下のような表示があって、既に入れないようになっていた。これなども、この美術館が閉館せざるを得ない理由のひとつであろうか。何度もこの地に遊んだ人間としては、本当に淋しい限りである。
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今回の展覧会の展示物はこの美術館の所蔵品ばかりであり、松本竣介や古賀春江や福沢一郎の作品で、私が昨年既にこのブログでご紹介したものも多く含んでいる。そんな中から一点だけご紹介しておこう。川端康成から寄贈された、古賀春江の「窓外の化粧」。私はこの絵が大好きなのである。
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また会場には、この美術館の設計にかかわる資料や、開館間もない頃の展覧会に関する資料も展示されており、興味は尽きない。そして出口近くには、このような一般のファンからのメッセージが貼られていて、またまた淋しさを募らせるのである (涙)。
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この美術館から徒歩 5分ちょっとのところに別館もある。こちらは本館ほど古くなく、まだまだ現役として使えそうである。ただ、ちょっと小さい建物なので、展示できる作品数に限りがあるのが難点ではある。今は最終展のうち、主として工芸を展示している。今後はどうなってしまうのだろうか。
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65年間の使命を終えて閉館するカマキン。本当に、日本の近現代美術に大きな貢献を果たした美術館である。私たちはその最後をしっかりと瞼に焼き付けて、日本の近現代美術の面白さを後世に伝えて行こうではないか。さようならカマキン。


by yokohama7474 | 2016-01-11 00:57 | 美術・旅行