2016年 01月 31日
スター・ウォーズ / フォースの覚醒 (J.J. エイブラムス監督 / 原題 : Star Wars The Force Awakens)
私の期待の第一は、監督が J.J. エイブラムスであるという点であった。現在進行中の「スタートレック」シリーズもよいが、スピルバーグ製作による「スーパー 8」がファンタジーあふれる素晴らしい作品であったからだ。スター・ウォーズ・シリーズの新作ともなると、世間の期待も大きなプレッシャーになり、知名度による動員もあらかじめ相当見込めるとはいえ、いわば成功して当たり前。もし面白くなかったら大変なことになる。今回の脚本は、監督自身と、それから、「シルバラード」等の映画が封切られたときには名監督と評価されたローレンス・カスダンも名を連ねている。
多分この映画に不満を覚える人は、以前のシリーズを見ていれば、「なんだ、前のと同じじゃん」と思う人であろうし、以前のシリーズを知らないなら、「クライマックスのサスペンスが最近の映画にしてはイマイチ」という人なのではないだろうか。だが、私としては、だからこそこの映画は評価に値すると考えたい。例えば、3-CPO と R2-D2 がほとんど出てこない代わりに、BB-8 というロボット (劇中ではドロイドと呼ばれる) が出て来て、観客を楽しませてくれる。下のボールの部分が転がり、上部の顔のような部分は水平に保たれているという構造。CG ではなく実際にそのような動きをするものを作ったらしい。これが人の会話に様々反応し、なんとも可愛らしいのだ。
題材に関しても、過去を思い出させる要素が様々ある。黒いマスクをかぶって声のこもった悪役。繰り返される親子の確執。引き離された家族。目覚めていくフォース。そして大詰めは、巨大な敵の要塞を攻撃するシーンで、これはデススター破壊と同じではないか。だが、これって何かちょっとほっとしませんか。例えば最近のスーパーマンシリーズを考えてみよう。力の強い者同士が殴り合うシーンをリアルに表現しようとすると、地面は砕けビルは壊れ、うるさいことこの上ない。X-Men やアベンジャーズも、なんだかよく分からない強敵が現れ、どうやって地球を危機に陥れるかを考えることに作り手が汲々としている様子が伺える。その点スター・ウォーズ・シリーズなら、原点に戻るという選択肢があるのだ。これは、エピソード 4 でハン・ソロとチューバッカが乗っていたミレニアム・ファルコン。本作ではレイが、「長年放置されているおんぼろ船」として脱出に利用する。カッコいいじゃないですか。なんとも効率的な廃品利用であり、技術の伝承だ (笑)。
またこの映画の美点は、以前の 3人、レイア・オーガナ役のキャリー・フィッシャー、ルーク・スカイウォーカー役のマーク・ハミル、ハン・ソロ役のハリソン・フォードが揃って出演していることだ。その間に過ぎ去った時間をそれぞれリアルに顔に刻印して。ハリソン・フォードは近年自家用飛行機の墜落事故に遭っており、ヒヤリとしたが、皆健在でよかった。もっともこの 3人のうちで立派にハリウッドのトップ俳優としてキャリアを築いたのは彼だけなのであるが、そのキャリアに恥じない、とても 73歳には見えない素晴らしいハン・ソロぶりであった。マーク・ハミルの場合は、以前「キングスマン」の記事でも紹介した通り、なんとも老けた感じになってしまって、この映画にはもう出られないのかと思っていた。しかしながら、本当に最後の最後、孤島に隠遁するルーク・スカイウォーカーとしてほんの少しだけ登場するのだ。こんな感じ。なるほどこれはこれで、悪くはない。よく見ると面影があるし。