このように豪華な役者陣を配しているこの映画、出来栄えはというと、残念ながらもうひとつと言うしかない。前半のテンポは悪くないし、例えば作家志望のイーディスを皮肉る中年の婦人との間で、ジェーン・オースティンとメアリー・シェリーが引き合いに出されるやりとりがあるシーンなど、なかなかにウィットが効いていて、時代の雰囲気もよく出ていた。ところが舞台がシャープ家の古い屋敷に移ってからは、話の展開は鈍くなり、ラストに向かって明かされる謎の内容も、別になんということもない。そもそも、登場する幽霊たちのメッセージがよく分からないし、それらの人たちが残した惨劇の証拠を犯人側がそのまま置いているという設定も、いかにも説得力がない。あの「パンズ・ラビリンス」が持っていた切なさが、ここには決定的に欠けているのはどうしたことか。のみならず、あろうことかひとりの幽霊は床の上を這ってキリキリと音を出し、あの「呪怨」の伽椰子の真似までなさるのだ (笑)。もちろん、幽霊さんたちの登場シーンに怖さがないわけではない。でも、怖さの裏にはかなさとか切なさがあってはじめて、映画としての奥行が出ると思うのに、ここではまるでお化け屋敷の幽霊たちになってしまっている。ミア・ワシコウスカが冒頭に呟き、ラストでも繰り返す、"Ghosts are real." (幽霊は実在する) という言葉が宙に浮いてしまった感じである。こうやって一生懸命スタッフが作ったみたいなんですけどね。そういえばこの幽霊の顔、作っている二人の顔を足して二で割ったようですな (笑)。
考えてみればこの監督、「パンズ・ラビリンス」のあとにハリウッドの大作を監督している。それは、「パシフィック・リム」。日本の怪獣ものに影響された Kaiju 映画であったが、期待して見た私の評価は No Tnank You な映画で、記憶から既にほとんど消去してしまった。うーむ、これはまずい傾向だ。この監督、自らの美点をうまく発揮できない方向に向かっているのでなければよいが。その意味で、一貫してずっと自分の持ち味を活かしているティム・バートンなどをもう少し見習ってはどうか。あるいは、もう少し低予算で趣味性の高いものに回帰してはいかがか。映画のプログラムには、「完璧なキャストがもたらしてくれるのは、大胆になるためのチャンスだ。勇気を持ち、実験的になるためのチャンス、さらに馬鹿げたことを試みるためのチャンス。映画はときに馬鹿げたことをやってみていいときがある」という監督の言葉が載っているが、その言葉の通りであれば、次は是非もっと馬鹿をやって欲しい。まあこの表情は子供の純真さをまだ持っているとでも評価しておきましょうか (笑)。