2016年 02月 24日
オデッセイ (リドリー・スコット監督 / 原題 : The Martian)

というわけで、映画自体について語ろう。まずはタイトルだが、オデッセイとは Odyssey、つまり、ホメロスの叙事詩から転じて、長い旅程を意味するあの言葉であろう (有名なところでは、「2001年宇宙の旅」は "2001 A Space Odyssey" である)。しかし、原題は、"The Martian"、つまり「火星人」である。しかも a ではなく the がついているということは、「あの」火星人、つまり、劇中で火星に取り残されたマット・デイモン演じるマーク・ワトニーその人のことを差しているのであろう。



それから面白いのは、この究極のサバイバル劇においても、ワトニーとその仲間たちとの交信では、下品なまでのユーモアが常に存在していることだ。もちろん人にもよるが、確かに欧米人のユーモアの感覚は日本人とは異なっていて、危機的な状況を笑い飛ばす勇気には、見習うべきところがあると思う。なので私はビジネスの場では、なるべく下品なユーモアで外人に対抗すべく心掛けているのだ (笑)。これがワトニーと同僚のクルーたちだが、左から二番目、船長のルイスを演じるジェシカ・チャステイン。先般も「クリムゾン・ピーク」での彼女の演技に触れたが、その映画よりも、やはり「ゼロ・ダーク・サーティ」とかこの映画のような精悍な役がよく合っている。

この映画の監督、リドリー・スコットは既に 78歳。イギリス人で、サーの称号までもらっている。私としては、初期の「エイリアン」「ブレードランナー」が忘れられないので、やはり今でもかなり頻繁に公開される新作は、毎回どうしても見たいと思うのだが、本当に内容の良し悪しは、作品によって大きく違っている。近作の「悪の法則」も「エクソダス : 神と王」も、がっかりな内容であった。それらに比べればこの作品はまだ楽しめた方だが、上記の初期の 2作や、あるいは「ブラックレイン」「ハンニバル」のような独特の耽美性からは程遠く、いい年して、相変わらず作風の定まらない監督だ (笑)。しかしまあ、フィルモグラフィに一作でも素晴らしい作品があれば、常にその監督への興味は存在するもの。リドリー・スコットのオデッセイ、まだまだ続いて行くことであろう。


