2016年 04月 03日
マネー・ショート 華麗なる大逆転 (アダム・マッケイ監督 / 原題 : The Big Short)


見終わったあとの感想だが、いやー、痛快どころの話ではない。なんとも深刻な映画なのだ。これは言ってみれば、最近の米国の戦争を生々しく描いた「ゼロ・ダーク・サーティ」や「アメリカン・スナイパー」と同様の分類に属する映画と言ってしまってもよいだろう。登場人物の一部も組織も、多くの実名が使われていて、画面に頻繁に登場するあれこれの主要金融機関のロゴもすべて本物だ。当然当事者の許可あってのことであろうが、その描き方に少しでも行き過ぎがあればすぐに訴えられてしまう世界だ。最新の注意が払われているのであろう。その意味でこの映画は疑似ドキュメンタリーになっていて、明らかにアフレコではなく撮影場所で音声を拾っている箇所や、手持ちカメラが激しく揺れる画面などがあちこちにあり、あえて言えば、プロフェッショナルな映画技術をあまり感じさせないような仕上がりである。登場人物が鑑賞者にそのまま語りかける場面も多い。映画をストーリーではなく映像と音声 / 音響のアマルガムとして鑑賞する私にとっては、この作り方はかなり苦痛。いやそれ以上に、このストーリーの意味する現代社会の深刻な様相に、なんとも憂鬱な気分になったのである。痛快ストーリーだろうと思って劇場に行ったので、なおさらである。
こういうことを書いてしまうと身も蓋もないが、個々人が金を欲しいという素朴な欲求は健全なものであれ、その積み重なりである資本主義の行きつくところ、もはや肥大化して全体像の見えない醜い欲望の塊がうごめいている。世界の中で米国だけが、あるいはさらにニューヨークだけが突出していると言えようが、そのような資本主義の発達が人間にとって幸せなことであるのかどうなのか、この疑似ドキュメンタリーは容赦なく問いかける。それが私の感じた憂鬱の原因なのだ。我ながらあまりに素直な感想だと思うが (笑)、本当だから仕方ない。
このブログは世界経済とか資本主義についての意見を開示する場ではないので (自分の経験から、少しそういうことを語りたい誘惑もあるものの 笑)、話題を変えると、ここで登場する 4人の主要キャラクターの描き方はそれぞれにユニークで、よくできている。特に、ロック好きのファンドマネージャーを演じるクリスチャン・ベール。

それから、もとバンカーだが現在では個人でブローカーを営むという役柄のブラッド・ピット。

もうひとり、躁鬱気味で、兄を自殺で失うという悲劇の記憶にとらわれ、周りの顰蹙を買う多動な人物でありながら、その一方で意外なほどの正義感の強さを持つファンド・マネージャーを演じるスティーヴ・カレルが面白かった。このような人物は存在すると思う。彼の行っていることは、周りの人たちにとって迷惑なことなのか、あるいは大いに意味のあることなのか。単純な割り切りでは済まない矛盾を抱えた現代の人間像だ。



