2016年 04月 11日
東京・春・音楽祭 ワーグナー作曲 楽劇「ジークフリート」演奏会形式 (マレク・ヤノフスキ指揮 NHK 交響楽団) 2016年 4月10日 東京文化会館



歌手陣も、過去のプログラムと照らし合わせてみると、アルベリヒのトマス・コエニチュニー、ヴォータン (さすらい人) のエギルス・シリンス、ファフナーのシム・インスン (彼は「ワルキューレ」ではフンディングだった) 等、シリーズに一貫して出ている人たちが多い。特別に有名な歌手は今回は出ていないものの、経歴を見ると、それぞれに世界的に活躍している。特に題名役のアンドレアス・シャーガーは、バレンボイムの指揮のもとスカラ座で「神々の黄昏」のジークフリートを歌った実績があり、チョン・ミョンフンが東フィルで「トリスタンとイゾルデ」を採り上げたとき (私はどうしてもチケットが入手できずに断念したが)、トリスタンを歌ったらしい。昨年末のバッティストーニ指揮東京フィルの第九もよかったが、今回も素晴らしい出来で (最後にはさすがにほんのわずかの息切れを感じたものの、人間だから仕方ない 笑)、これからますます活躍の場を広げることであろう。

さて、指揮者ヤノフスキであるが、今年と来年、ワーグナーの聖地、バイロイトでこの「指環」を指揮することになっている。確認していないが、多分バイロイト・デビューであろう。昨年 8月に私が現地で見た、フランク・カストルフ演出、キリル・ペトレンコ (ベルリン・フィル次期音楽監督) 指揮の演奏は、このブログでも現地で記事を書いたが、まあそれはそれは、衝撃の演出であって、申し訳ないが私はもう二度と見たくない (笑)。ペトレンコの降板は、音楽監督を務めるミュンヘン・オペラのスケジュールとの兼ね合いという説明であるようだが、本音のところは演出に辟易したということがあっても全く不思議ではない。ただ、そんな演出ではあったがオケの鳴りには凄まじいものがあって、さすがバイロイトと唸ったものだ。今年からヤノフスキが指揮者となっても、やはり同じように説得力溢れる音楽と、呆れるような過激な演出という組み合わせになるのであろう。このヤノフスキにとって、「指環」は特別な曲であるはずだ。というのも、彼のレコーディング・デビューがこの作品であったからだ。未だ東独時代のシュターツカペレ・ドレスデンを指揮してデビューした無名の若手指揮者であったが、やはり「指環」の録音で名を上げたショルティの再来という宣伝もあったと記憶する。だが、その録音が世界を席巻したというイメージはなく、ヤノフスキはどちらかというと地味な指揮者として現在に至っている。だが、今にして耳にする彼の指揮ぶりには、もはやドイツの巨匠の雰囲気が漂っているのである (ポーランド人だが若い頃からドイツで生活している)。従って、これからが本当に楽しみな指揮者と言えるだろう。今回会場で売られていた CD で、現在の手兵であるベルリン放送響とも、この「指環」全曲を含む数々のワーグナーを録音していることを知った。実際、バイロイトのライヴ盤以外で 2種類の「指環」の全曲盤を録音した指揮者は、バレンボイムを例外とすると、ほかにいないのではないか。素晴らしいことである。
ちょっと思い立って、レコード芸術誌が毎年付録として作成している、その年に国内で発売された録音・録画をすべてまとめた「レコード・イヤー・ブック」を引っ張り出してみた。私の手元には 1980年以降のものが揃っているが、最近では年々薄くなっているのは致し方ない (笑)。ヤノフスキの「指環」の第 1弾「ラインの黄金」は 1982年に発売されている。「指揮のヤノフスキは現在最も注目を集めているポーランドの新進」と書いてある。



