2016年 04月 23日
ピエタリ・インキネン指揮 日本フィル (ヴァイオリン : 庄司紗矢香) 2016年 4月22日 サントリーホール


ブリテン : ヴァイオリン協奏曲作品15 (ヴァイオリン : 庄司紗矢香)
ホルスト : 組曲「惑星」作品32 (合唱 : 東京音楽大学)
今回の来日でインキネンはヴェルディのレクイエムも採り上げているはずなので、もはやシベリウスの呪縛はない。ってまあ、首席客演指揮者かつ次期首席指揮者がシベリウスばかり採り上げるわけにはそもそもいかないのだが (笑)。
上に掲げたポスターにいろいろ謳い文句が記載されているが、今回のソリスト庄司紗矢香の紹介に、「インキネンと同門!」とある。庄司はいわずとしれたケルンの名教師ザハール・ブロンの教え子 (ほかにもレーピン、ヴェンゲーロフ、樫本大進等の綺羅星のごとき教え子たちがいる) だが、実はピンキネンもそうらしい。もともとヴァイオリンを学んでいて、ブロンのもとにいた 20年ほど前、ほんの少女の頃の庄司の才能に驚いていたということで、今回東京での初共演が叶ったとのこと。


そして後半は、ホルストの「惑星」。これも、有名曲でありながら実演ではあまり接する機会のない曲だ。ここでインキネンは本領発揮。7曲からなる組曲で、実に色彩感豊かな曲であるがゆえに、まずは冒頭の「火星」で聴衆を圧倒する必要があるが、早めのテンポでグイグイ進めるインキネンは、先輩の大指揮者サロネンすら思わせる切れのよい指揮ぶりで、日フィルから輝かしい音を引き出した。そう言えばこの「火星」は、作曲者ホルストが迫りくる第一次世界大戦を予感して書いた予言的な作品とも言われる。今回の 2曲はいずれも、戦争の惨禍と関係しているのだ。冒頭のポスターに、「戦慄の時代が生んだ祈りのコンチェルトと壮大な音宇宙」とあるのは、そういう意味だったのだ。日フィルさん、なかなかしゃれたコピーを考えますなぁ。私が前回インキネンを聴いたとき (昨年 11月 8日の記事) には、最強音を聴けなかったもどかしさを書いたが、その点、今回は期待通りの素晴らしい最強音を聴くことができ、私の親指はぐっと立ったのである。このような音楽を聴かせてくれるなら、彼の存在によって東京のクラシック音楽シーンが一層面白くなるだろう。
終演後にはまたインキネンのトークがあった。いわく、今回の演奏会は日フィルと最初のことと最後のことが同時に起こったと。つまり、イギリス音楽を指揮したのは最初だったし、首席客演指揮者としての演奏は最後であったという意味だ。それからは上記の庄司についての話と、今年 9月に首席指揮者に就任することについての話。彼はこの年で既にシドニーでワーグナーの「指環」全曲を振った実績があるらしく、そのとき共演した歌手たちと、9月27日にサントリーホールで「ジークフリート」「神々の黄昏」を演奏するのが、今回の日フィルの首席指揮者披露公演になるらしい。なるほど、こうなってくるとシベリウス、全然関係ないですね!! 前任のアレクサンドル・ラザレフも面白い指揮者であったが、レパートリーがロシア物に偏重していたように思う。かつて「ロシアのカルロス・クライバー」と呼ばれた爆演系指揮者、ラザレフも、後任インキネンによる日フィルのさらなる発展に期待していることだろう。


