2016年 05月 28日
黄金のアフガニスタン 守り抜かれたシルクロードの秘宝 東京国立博物館
まずこの展覧会で珍しいのは、東博の中でも普段あまり使われることのない建物、表慶館での開催ということだ。
この展覧会をご紹介する前に書いておきたい私の常日頃の持論がある。アジアの端に暮らす我々は、往々にしてアジアとヨーロッパの文化は全く異なるものと思いがちだが、意外と共通点が多いのだ。それは当然すぎるほど当然なことで、ユーラシア大陸は一続きであって、アジアとヨーロッパの間では古くから人々の盛んな往来があったわけだから、地域を越えて共有しているものや、地域間の影響関係は当然にある。但し、気候や民族性、周辺国との関係、そして宗教的な面での違いが、地域・国による差異を生み出し、時の流れとともにそれぞれの文明の発展によってその差異が広がってきたわけである。なので、文明の源流を辿ると、そこには多くの新鮮な発見があるものだ。この展覧会はまさにそのような機会なのである。
展覧会は 5部構成で、以下のようになっている。第 5部以外は遺跡の名前である。栄えた時代の順番になっているようだ。
1. テペ・フロール
2. アイ・ハヌム
3. ティリヤ・テペ
4. ベグラム
5. アフガニスタン流出文化財
まず第 1部のテペ・フロールは、1966年に農民たちが多数の金銀器を発見した遺跡。だが、正式な発掘調査ではなかったので出土品の管理もほとんどできなかったらしく、この遺跡の実態はほとんど分からないという。だが、この幾何学文脚付杯 (紀元前 2100 - 2000年頃) などの模様から、メソポタミア文明とインダス文明の交流が知られるという。うーむ、4000年前の人類の文明のダイナミズム。
第 5部では戦乱の時代にアフガニスタンから流出してしまった文化財なのであるが、なんと、わが国に不法に入ってきたものであるようだ。よく知られているように、日本画家の故・平山郁夫は、この事態を嘆き、「流出文化財保護日本委員会」を設立してそのような文化財の収集・保護に努めた。そして 102点の文化財が近くアフガニスタンに返還されることになり、この展覧会ではそのうち 15点が展示されている。このような大理石のゼウスの足が、その痛々しい歴史を語っているが、そのゆるぎない存在感はどうだ。