この曲にはヴァイオリンが朗々と歌う部分はほとんどない。演奏開始前、しばし精神集中を行った後に庄司が放ったのは、そっと入ってから急激に切り込むような鋭い音型。そして静止。まるで尺八のような、厳しくささくれだった音が続く。それから、ハチが飛ぶように無窮動風に動いたり、左手のピチカートだけで緊張感を持続したりして、まさにシャーマニズムを思わせる音楽が流れて行った。私は細川の音楽を、確か最初の作品集 CD であった「うつろひ」からあれこれ聴いてきたが、修業の地であるドイツ仕込みの重厚さを、柔軟な感性でうまく中和させて、漂うような作品を書いている彼には、武満徹とは異なる日本の新たな芸術音楽を創り出してほしいと思っている。今回のように、一流の演奏者からインスピレーションを受けて作曲することは、作曲家自身の引き出しを増やすことにもなろう。